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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

1年前の4月8日

午前8時32分33秒

おはよう

たったそれだけで

私は

『恋』に落ちた。

姶良

おはよー

優華

あ、おはよう姶良

姶良

またスマホいじってたの?

優華

うん

姶良

目悪くするよー

優華

姶良だっていじってるじゃん

姶良

まぁね笑

優華

(それに私、写真見てるだけだし)

優華

(やっぱかっこいいなぁ、湊くん)

姶良

あ、これ可愛い!

優華

何見てるの?

姶良

え?ああ、コスプレイヤーの人の画像だよー

優華

コスプレイヤー?

姶良

知らないの?

優華

うん

姶良

コスプレイヤーっていうのはアニメキャラとか、自分が好きな人の衣装を着て、その人になりきる人のことだよ

優華

へぇ〜

姶良

それだけ?

姶良

結構楽しいんだから!

姶良

ほら、私もこの前やってみたの

優華

わ!可愛い!!

姶良

でしょ?

姶良

あとこれ

優華

……男の人にもなれるの?

姶良

なれるよ

姶良

難しいけどね笑

優華

これって、誰になりきっても良いんだよね?

姶良

もちろん!

姶良

寧ろ、自分が本物!ってくらいまで近づけなくちゃ

姶良

本気でコスプレしないと、その人に失礼でしょ?

優華

そっか……そうだね

姶良

仕草とか、口調とかもそれっぽくすると良いよ!

姶良

てか優華、好きな人とかいるの?

優華

……まぁね

姶良

え!?教えてよ!

優華

秘密〜笑

姶良

ケチ笑

優華

よし、できた!

『湊くん観察ノート』

優華

明日からこれに

優華

服装

優華

口調

優華

仕草

優華

全部全部記録しなくちゃ!

その翌日から

私はノートにありとあらゆることを書いた。

『〇月✕日 今日は部活のユニフォームを着ていた。時折部活中に見せるハニカミが可愛い。この数日間で分かったが、彼は嘘をつく時、手を口に持っていくようだ。』

『〇月✕日 今日は私服だった。黒の△△ブランドの服を着ていた。やっぱり何でも似合う。かっこいい。かっこいい。かっこいい。早く、大好きなあの人のコスプレをする為に書かなくちゃ。歩く時の歩幅も測ろう。』

とまぁ、こんな調子で沢山書いた。

ノートは湊くんのことで埋まった。

全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部

湊くんでいっぱいになった。

過去のことも調べた。

湊くんが知らないようなことも全部調べた。

もう、これ以上何も無い。

優華

……よし

優華

これで資料は全部揃った

優華

早くコスプレをして

優華

『貴方』になりきらなくちゃ

優華

……て、あれ

優華

何で?

優華

こんなの、湊くんじゃない

優華

ただの、湊くんを真似した気持ち悪い私の姿

優華

違う

優華

違う違う違う

優華

もっと頑張らなくちゃ

優華

ここはこうして

優華

違う!

優華

もっと、もっともっともっと……

あれから1ヶ月

学校にもろくに行かずに毎日コスプレをした。

早く貴方に近づきたかった。

でも、やればやるほど貴方から遠ざかっていく。

不思議に思った私は、根本的な所から考え直すことにした。

……答えはすぐに出た。

『素材』が違うからだ、と。

誰だよ、裏庭に呼び出したやつ

優華

こんにちは

あ、お前か……て、は?

俺?

何で、俺が……

優華

そっくりでしょう?

優華

これ、貴方の『コスプレ』

優華

似てる?似てる?

優華

ほら、ここまで来る時の歩幅とか、今の仕草とか、全部貴方でしょう?

……ふざけてんのか?

優華

ふざけてないよ?

優華

貴方になりたくて、精一杯頑張ったんだから

優華

湊くんって、お母さんいなかったんだね

……は?

優華

調べたよ

何で知ってんだよ!

誰にも言ってねぇはずだ!

優華

家に監視カメラ設置する時に見ちゃった

優華

湊くんのお母さんの仏壇

優華

交通事故だってね

優華

カメラ仕掛けたから、会話ダダ漏れ

気持ち悪いな!

優華

そんなこと言わないで

優華

私、頑張ったの

優華

あ、『俺、頑張ったんだよ』

……てめぇ

優華

でもね、足りないの

は?

優華

これじゃただのコスプレ

優華

私はただのコスプレイヤーになりたい訳じゃない

優華

ちゃんと、貴方になりきりたいの

優華

大好きな貴方になりたいの

何だよ、それ

優華

そのままだよ

優華

貴方になりたい

優華

大好きな貴方になりたい

優華

でもね、それができないの

優華

だって、『素材』が違うから

優華

……ねぇ

優華

貴方のその皮膚、ちょうだい?

は?

優華

髪の毛も、目も口も鼻も耳も臓器も全部ちょうだい?

い、嫌、だ……

優華

貴方になりたいの

優華

貴方に失礼のないように、ちゃんと『コスプレ』したいの

う、うわぁぁぁ

ガッ!!

痛った……

優華

もう逃げられないよ?

た、助け……

優華

大丈夫

優華

貰うだけだよ

やめろ、やめろ……

やめ……

優華

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

優華

愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる

優華

やっと貴方になれる!

優華

大好きな貴方に、やっとなれる!

優華

手に入った

優華

皮膚も髪の毛も臓器も全部全部全部!

優華

これからは私がコスプレイヤーになりきって

優華

『湊』

優華

として生きていくからね

優華

『じゃあな、「元」湊』

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