しばらくぶりに再会した母は、あの時と全く同じ姿勢で、恨めしそうに天を仰いでいた。
アキノリ
シンジ
シンジ
シンジ
アキノリ
シンジ
シンジ
アキノリ
アキノリ
シンジ
シンジ
シンジ
シンジ
アキノリ
シンジ
シンジはふと、庭に生えている大木に視線をやる。
なんの木なのかさえ分からない大木。
それこそ、物心つく前から、当たり前のように裏庭に生えていたから、普段の景色として写っていた。
ちょうど、太い枝が井戸の真上に伸びていた。
シンジ
シンジ
アキノリ
シンジ
脚立はアキノリに任せ、ロープを探しに家の中へと戻るシンジ。
勝手口のすぐそばには、物置として使っている狭い部屋があった。
シンジの記憶が正しければ、物置に頑丈なロープが置いてあったはずだ。
シンジ
扉には簡単な留め具が取り付けられており、その留め具同士を繋ぐかたちで南京錠がかけられていた。
一度家探しをした際に気づいてはいたのであるが、そのままにしてほかの部屋の探索に向かってしまったのだった。
シンジ
金槌は、井戸を固定する際、釘を打ち付けるのに使ったものだ。
こちらは、以前台所に棚を設置する際、言いつけられたシンジが作業をしたまま、シンクの収納に放置したものだった。
自分でもだらしないところがあるとは思うが、この時ばかりは、そのだらしなさが身を救った。
シンジ
金槌を手に扉の前に向かうと、右手を大きく振りかぶって留め具へと金槌を振り下ろす。
鈍い音はするものの、しかし南京錠は壊れず。
シンジ
何度も金槌を振り下ろすと、何度目かで明らかに手応えに違いがあった。
小気味の良い音と一緒に南京錠が外れ、留め具と一緒に床の上に散った。
いつしか時間は10時を過ぎている。
死体の引き上げにどれだけ時間がかかる分からないし、死体をどこか別のところに隠す必要もある。
シンジ
自分に言い聞かせるようにつぶやくと、シンジは物置からロープを引っ張り出し、それを手にして外へ戻る。もちろん、ロープを切るための大型カッターも忘れずに。
シンジ
外に出ると、アキノリにロープの片側を投げる。
シンジ
アキノリ
アキノリ
アキノリが指差したのは、まさしく井戸の真上に枝を伸ばしている大木だった。
シンジ
アキノリ
シンジ
アキノリ
ロープを取りに行っている間に、アキノリは脚立を見つけ出してくれたらしい。
アキノリが脚立を立てかけると、シンジはロープの片側を持って脚立にのぼる。
そして、井戸の真上に伸びる枝にかかる形で、ロープの先端を放り投げた。
シンジ
シンジ
地面に落ちたロープの先端を手に取ると、井戸の中に放り投げて、大体の長さを把握。
ロープを手繰り寄せると、持って来ておいた大型カッターでロープを切ろうとする。
しかし、思った以上にロープが頑丈で、切るのに難儀してしまった。
シンジ
ようやくロープを切ると、それを自身の腰回りに巻きつけ、解けないように何度も片結びにした。
シンジ
シンジ
シンジ
シンジ
普通に引き上げるのは、アキノリだけの力では無理だ。
なぜなら、行きは1人で降りても、帰りは2人……死体も一緒だからだ。
アキノリ
シンジ
シンジ
これから井戸に降りて、死体を引き上げるのに、果たしてどれだけの時間がかかるのか。
それはやってみなければ分からない。
そもそも、シンジのやり方がうまくいく保証もなかった。
シンジ
アキノリにロープを持つように指示を出す。
シンジの計測がおおむね正しければ、井戸を降り切ったところで、枝にかけたロープがピンと張るはず。
しかし、降りるにはアキノリの補助が必要だ。
ロープの比較的近いところを持ってもらい、ゆっくりと井戸の中に降りなければ。
シンジ
アキノリ
シンジは井戸のふちに足をかけると、井戸の壁を蹴るようにして、中に降りるのだった。
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