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俺の名前は青山琉己。 久しぶりに会った姉貴と世間話で 盛り上がっている極道だ。

青山琉己

それにしても…抗争、大変だったと聞いています。実際、どんな感じでしたか?

小峠華灘

ん〜…普通の抗争だよ。…普通の。

青山琉己

へぇ…

言われなくても分かるこの感じ。 普通の抗争では無かったのだと 直感が言う。 ただ、それは触れてほしくない事のようだ。 敢えて聞かないことにした。 ふいに、姉貴が溜息をついた。

小峠華灘

それにしても…あの子、まだ天羽組に居たんだね

青山琉己

あの子…?

小峠華灘

華太。てっきり、もう組を抜けたと思ってた。

そう言う姉貴の表情は 陰っていた。 姉貴が困ったように笑いを浮かべる。

小峠華灘

ここで話をしようって提案したのは、あまり人に聞かれたくない話をしたかったからなんだよね。…ほら、此処って誰も来ないじゃん?

空龍街で天羽組が貸し切っているビルの屋上。 そこは、誰も踏み入れる事がほぼ無く、 相談事などにはうってつけだった。

青山琉己

何か悩み事が…?

小峠華灘

悩み事っていうか………
単に話を聞いてほしかったんだよね

青山琉己

俺で良ければ、いくらでも…

すると姉貴は一息ついてから 話し始めた。

小峠華灘

私が抗争で中部にいる時、華太から
電話があってね。私、特に何も考えず電話に出たんだ。

青山琉己

何の話だったんですか?

小峠華灘

…それがさ、ちょっと後味悪くて。
というかそれが話したいことなんだけどね。

青山琉己

……そうなんですか。

小峠華灘

うん。……電話出た時に、華太泣いてて。
理由がね、工藤の兄貴が華太を庇ったことで亡くなったこと。病院から電話してきてたみたい。自分のせいで兄貴が亡くなったって…凄く悲しんでた。

青山琉己

華太が、工藤の兄貴の死を悲しんでいたのは、話を聞いています。
責任感も相まって、余計苦しかったと…

小峠華灘

そうだよね。…あの子、責任感強いから。
……それで、私ね。思わず言ったの。
『天羽組を抜けなさい』って。

青山琉己

え…?

小峠華灘

驚くよね…でも、あの子が悲しんでいるのを見るのは凄くいたたまれなかった。
根は心優しい子だから…人を傷付ける事で精神も参ってたんじゃないかな。

青山琉己

それで、ちゃんかぶは何と…?

小峠華灘

…思いもしない言葉が返ってきたよ。
………俺は、普通じゃないから天羽組以外に居場所が無いって。

青山琉己

普通じゃない…?

狂人揃いの天羽組の中で比較的常識のある ちゃんかぶの口からそんな言葉が出るのは 意外だった。 姉貴は少し悲しそうに笑う。

小峠華灘

…あの子が言うにはね。

小峠華太

俺、当たり前に人が生きている表の世界が
凄く気持ち悪くなっちゃってさ…
だから、死がすぐ隣にあるような裏の世界が、居心地よく感じて…

小峠華灘

華太…

小峠華太

変なのかな…俺って…

小峠華灘

変じゃない、大丈夫だよ。

小峠華太

………

小峠華灘

華太、よく聞いて。
貴方は今すぐ天羽組を抜けなさい。
ただでさえ精神が不安定な状態なのに、
これ以上裏の空気に触れれば本当に……
壊れてしまう。親っさんには私が伝える。
だから…

小峠華太

俺は、天羽組を抜けないよ。

小峠華灘

華太!

小峠華太

何で、姉さんは俺から居場所を奪うの?

小峠華灘

は?

小峠華太

俺が苦しむのがそんなに嬉しい?
見てて楽しい?

小峠華灘

そうじゃなくて!

小峠華太

じゃあ、何で俺から天羽組を奪おうとするの?

小峠華灘

そうでもしないと貴方が壊れるからに
決まってるじゃない!

小峠華太

…そうか。……

小峠華灘

……華太…?

小峠華太

姉さん

普通の弟じゃなくて、ごめんね。

青山琉己

………そうだったんですね…

小峠華灘

…私は、別に普通じゃなくても良いんだけどねぇ…

そう言って、姉貴は苦笑いする。 けれど、俺には一つ疑問があった。

青山琉己

ちゃんかぶは…何故自分の居場所を奪うのかと言っていたんですよね?

小峠華灘

ん?あぁ、そうだよ。

青山琉己

…………こういう会話をするのは、何回目なんですか?

小峠華灘

………

途端、姉貴の目つきが険しくなる。 俺は落ち着きながら話をする。

青山琉己

……居場所を奪われるなんて、普通思うことじゃありません。余程精神が滅入っていたのか、トラウマがあるのか…

小峠華灘

前者でしょ?

青山琉己

けれど、昔ちゃんかぶから聞かされたんです。いつも、居場所を奪われると。

小峠華灘

……

青山琉己

それが誰なのかは知りません。けれど
この話なら辻褄が合います。

青山琉己

貴方は、ちゃんかぶから居場所を奪っていたんじゃないんですか?

小峠華灘

……奪ってないよ。
私は、あの子の事を思って…

青山琉己

それが、彼を傷つけていたとしても?

小峠華灘

………

青山琉己

貴方が弟を大切に思ってるのは分かります。
けれど、その行動が彼の心には寄り添えていないはずです。
彼の話の一言だけ…心の傷一つでも、汲み取ってあげてほしい。

姉貴は無言のまま、下へと繋がるドアを開けた。 そして、こちらを振り返りながら言う。

小峠華灘

私は、あの子のことを誰よりも知っている。
理解している。私は正しいよ。
あの子へ対する行動も、言動も…
きっとあの子は分かってくれている。
私の弟だもの。

そうして、姉貴は 階建を降りた。 俺はその姿を苦い表情で見送った。 せめて、ちゃんかぶが壊れない事を 願うしかない。

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