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――聖アマツミヤ皇国。
『処刑台』に拘束されるは、 罪人となった家族4人。
昼夜を問わずの拷問で 殴られ蹴られ、 心も体もボロボロだ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
父、母、弟――
変わり果てた『家族』に 囲まれ、呆然とする か弱き令嬢。
18歳の彼女にとって、 “現実”は 信じがたいものだった。
民衆
民衆
民衆
尖った小石とともに 飛び交う罵声の嵐。
その内容が“事実”なら、 諦めもついたことだろう。
だが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
令嬢は、 朦朧とした意識のなかで 思い出す。
“殺人犯”という重罪を 着せられ、必死に 無実を主張したこの数日を。
だが――
ウェンデッタ
それどころか家族までもが 罪に問われ、
爵位剥奪のうえ、 4人揃っての公開処刑が 異例の早さで決まったのだ。
ウェンデッタ
かつての彼女は、 何不自由なく暮らしていた。
この国を守護する誇り高き 『皇国五大貴族《ファイブガーディ》』 の1人として
先祖代々受け継いだ“魂”に 恥じぬ生き方を してきたつもりだったし…
これまでも、これからも、 幸せな日々が続くとばかり 信じていた。
そんな平和が “急転”したのは――
――数日前。
ウェンデッタ
薄暗い部屋の中。
気が付くと少女は、 ドレス姿のまま 床に倒れていた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
乾いた笑いが、思わず漏れる。
なぜならウェンデッタは、 “選ばれし淑女”として 徹底的に礼儀と作法を学んできたから。
淑女の象徴であるドレスを こんな風にシワだらけにしたり、 ベッドでもない所で 寝転がるなど絶対ありえない――
ウェンデッタ
改めて、気を引き締め直す。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ひとまず上半身を 起こそうとした瞬間――
ウェンデッタ
――後頭部が ズキッと 悲鳴をあげた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
溜息まじりに愚痴りつつ、彼女は 記憶を手繰り寄せていく。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
薄暗く見通しは悪いが、 このやたら高い天井には 見覚えがあった。
倒れる前の記憶と 照らし合わせても、矛盾はない。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
憎き恋敵の“不敵な笑み”を 思い出した瞬間、
ウェンデッタの瞳に 闘志が宿る。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
建国時から 『皇国五大貴族』の1つである 『シラヌイ家』は、 屈指の権力を持つ名家だ。
この数百年の伝統にならい、 彼女は「生まれた瞬間から次期皇妃に 内定していた」――はずだった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
3年前の“あの日”。
順風満帆だった人生は 一変した。
それから始まったのは、 理不尽な仕打ちだらけの日々。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
…だけど、ふと 彼女は思う。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
脳裏に浮かんだのは――
――皇太子アルスの、 屈託のない“笑顔”。
ウェンデッタ
最初で最後の 初恋相手。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
時間は短いながら、 ウェンデッタは 幸せだった。
だからこそ、 「アルスも自分と同じ想いだ」 と信じて疑わなかった のだが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ぶんぶん首を横に振る。
再び蘇りかけた“邪念”を 跡形もなく消し去るように。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
苦笑いして 立ち上がろうとした ところで、
床に転がる "物体”に 気づく。
ウェンデッタ
思わず拾い上げる ウェンデッタ。
薄暗いなか、目をこらすとー
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
??
“よく知った男”の声。
部屋の『照明』が、 パッと灯る――
ウェンデッタ
振り返ったウェンデッタが 目にしたのは――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
吐き捨てられた言葉に、 ウェンデッタは耳を疑った。
だが、勘違いでは ないらしい。
揃いの白い婚礼衣装に身を包んだ 皇太子アルスと、 聖女クロエ――
2人に従う 大勢の騎士たち――
――彼ら全員の視線は “憎悪”そのもの だったから。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
どうにか焦る心を抑える ウェンデッタ。
彼女は、 誇り高き貴族令嬢。
現状を把握すべく、 冷静を装い、 言葉を返すことにした。
ウェンデッタ
アルス
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
皇太子アルスと聖女クロエに 非難されるのは、 これが初めてではない。
2人が親密となった日から、 何かと理由をつけ、ウェンデッタへ 文句をぶつけてきたのだ。
ウェンデッタ
心の中で溜息をつきつつ、 ウェンデッタは 困った笑顔で答えた。
ウェンデッタ
アルス
アルス
アルス
ウェンデッタ
――想定外 の糾弾。
呆然とするウェンデッタだが、 慌てて気を取り直す。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
アルスの後ろに隠れ、すかさず 言葉を挟んでくるのは 白い婚礼衣装姿のクロエ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
言葉に詰まるウェンデッタをよそに、 クロエは涙を流して訴える。
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
――血まみれ のナイフ。
先ほど何気なく拾った“凶器”を、 彼女は握りしめたままだった。
ウェンデッタ
慌てて手を離すウェンデッタ。
床へ転がるナイフの音が、 虚しく 辺りに響き渡った。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
??
騎士の脇を抜け 室内へ飛び込んできたのは、 執事服姿の青年だった。
ウェンデッタ
驚きの声を上げるウェンデッタ。
主である皇太子を 守るように 警戒する騎士達。
騎士
ダニエル
ダニエル
アルス
ダニエル
ダニエル
ダニエル
アルス
アルスが剣を振るう。 怒りのままに。
ダニエル
丸腰のダニエルは、 あっけなく斬り捨てられ――
――動かなく なった。
ウェンデッタ
へなへなと座り込む ウェンデッタ。
ダニエルは、最も身近で 彼女を支えてくれた従者だった。
貴族と平民。 身分の違いこそあれど、年は近く、 なぜか不思議と馬が合い…
…お互い心を開いて 軽口をたたいては、日々を笑い合える 唯一無二の親友であった。
――大切な友の 突然の“死”。
ウェンデッタ
彼女の心を折るには、
十分すぎるほどの 衝撃だった。
皇帝の“暗殺”は 重罪だ。
民も貴族も皇族も、 決して許しはしない。
“実行犯”のウェンデッタ のみならず、
その父母や弟まで一家全員が 投獄された。
取り調べと称して 行われるのは――
騎士
ウェンデッタ
ウェンデッタ
騎士
ウェンデッタ
――殴る蹴るの 過剰な暴行。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
打開の一手など あるはずもなく――
――ついに 処刑の時刻。
アルス
かつての婚約者アルスが 冷たく言い放つ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
わざとらしくアルスに寄り添い、 無言で“慈愛の笑み”を 浮かべるクロエ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
――事態は崖っぷち。
ウェンデッタ
彼女の視線の先には、 一緒に縛られた家族たちの姿。
父、母、弟… 彼らには、かろうじて まだ息があった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
痛みで回らぬ頭をフル回転し、 ウェンデッタは必死に 策を練る。
そして、導いたのは わずかな“希望”。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
心なしか、アルスの表情も、 ほんの少しだけ柔らかい。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
絶望の淵で見えた一筋の光。
ウェンデッタ
慎重に、慎重に。 彼女は“言葉”を選んでいく。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
彼女は諦めた。
疑いを晴らし、 元の暮らしへ戻る道を。
かわりに決めた。
自身を犠牲に、 大切な家族を救おうと。
アルス
アルスは意外そうな顔をする。 それから 何やら考え込み始めた。
アルス
――永遠にも 思える沈黙。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタは、 ただひたすらに 祈ることしかできなかった
アルス
それからアルスは、 にこりと笑った。
初めてウェンデッタと 会った日の まぶしい笑顔、そのままに。
アルス
ウェンデッタ
令嬢が パッと明るくなった、 その瞬間――
アルス
――皇太子の顔は、 醜く歪んだ。
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
アルス
アルス
ウェンデッタ
アルス
皇太子の 無慈悲な号令。
魔術師たちが 『炎魔法』を同時に放った。
瞬く間に、 業火に包まれる 処刑台。
ウェンデッタ
――厳格だけど優しい父が。 いつも民を第一に考える、 良き領主だったのに。
ウェンデッタ
――にこやかだった母が。 いつまでも可憐で素敵で、 私の密かな憧れだったのに。
ウェンデッタ
――成人すらしてない弟が。 将来のためにって、 剣術を学び始めたばかりなのに。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
何の罪もない家族が。 私の大好きな人たちが。 苦しみながらに炎で焼かれ――
――絶命していった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
命を落とす その瞬間まで、
令嬢の瞳は、“赤き憎悪”に 燃え上がっていた のだった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
突然目覚める少女。
そこは、自分の『寝室』だった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
永遠に終わらない 拷問。
無数につけられた 傷の痛み。
熱く激しく燃え盛る 炎。
生きながら焼かれる 地獄の苦しみ。
ウェンデッタ
アルス
ウェンデッタ
少女は、気づいていなかった。
ベッドの横には、 “婚約者”が座っていたことに。
ウェンデッタ
状況を掴めないウェンデッタの 手を握り、 アルスは穏やかな顔で答えた。
アルス
アルス
アルス
自分を殺すよう 命じたはずの “元凶皇子”。
その爽やかな笑顔が 自分だけに 向けられている――
ウェンデッタ
――混乱したウェンデッタは、 再び気絶したのだった。