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聖アマツミヤ 皇国。
『処刑台』に 拘束されているのは、 罪人となった家族4人。
昼夜を問わずの拷問で 殴られ蹴られ、 心も体もボロボロだ。
ウェンデッタ
父、母、弟―― 変わり果てた家族に囲まれ 呆然とするのは、
罪人となった、 か弱き令嬢。
その名は――
ウェンデッタ ・シラヌイ。
18歳の彼女にとって、 “現実”は 信じがたいものだった。
民衆
民衆
民衆
尖った小石とともに 飛び交うのは 罵声の嵐。
その内容が“事実”なら、 諦めもついたことだろう。
だが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
令嬢は、 朦朧とした意識の中で 思い出す。
“殺人犯”という重罪を 着せられ、必死に 無実を主張したことを。
だが―― 疑いは晴れなかった。
それどころか家族までもが 罪に問われ、4人揃っての処刑が 決まってしまったのだ。
ウェンデッタ
かつての彼女は、 『皇国五大貴族』の1人として 何不自由なく暮らしていた。
そんな事態が “急転”したのは――
数日前。
ウェンデッタ
気が付くと少女は、 ドレス姿のまま 床に倒れていた。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
上半身を起こそうとした瞬間、 後頭部がズキズキ痛む。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
溜息まじりに愚痴りつつ、彼女は 記憶を手繰り寄せていく。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
憎き恋敵の“不敵な笑み”を 思い出した瞬間、
ウェンデッタの瞳に、 闘志が宿る。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
シラヌイ家は 『皇国五大貴族』の1つとして、 屈指の権力を持つ名家だ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
やるせない怒り――
――無理も ない。
順風満帆だった ウェンデッタの人生は、
15歳だった“あの日”、 理不尽にも 一変してしまったのだから。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
脳裏に浮かんだのは、 皇太子アルスの 屈託のない笑顔。
ウェンデッタにとって 彼は、唯一無二の初恋だった。
かつてのアルスは、 忙しい後継者教育の合間、 毎週のように会いに来てくれた。
流行の菓子や紅茶を 囲みながら、国や 自分たちの将来を語り合う。
時間は短いながら、 ウェンデッタは 幸せだった。
「アルスも自分と同じ気持ちだ」 と信じて疑わなかった のだが――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
かつての想い人を振り払うように、 ブンブン首を横に振る ウェンデッタ。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
苦笑いして 立ち上がろうとした ところで、
床に転がる "何か”に 気づく。
ウェンデッタ
思わず拾い上げる ウェンデッタ。
薄暗いなか、目をこらすとー
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
??
“よく知った男”の声。
部屋の『照明』が、 パッと灯る――
ウェンデッタ
振り返ったウェンデッタが 目にしたのは――
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
吐き捨てられた言葉に、 ウェンデッタは耳を疑った。
だが、勘違いでは ないらしい。
皇太子、 聖女、 2人に従う大勢の騎士たち――
――彼ら全員からの視線は “憎悪”そのもの だったから。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
どうにか焦る心を抑える ウェンデッタ。
彼女は、 誇り高き貴族令嬢。
現状を把握すべく、 冷静を装い、 言葉を返すことにした。
ウェンデッタ
アルス
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
アルスとクロエに 非難されるのは、 これが初めてではない。
2人が親密となった日から、 何かと理由をつけ、ウェンデッタへ 文句をぶつけてきたのだ。
ウェンデッタ
心の中で溜息をつきつつ、 ウェンデッタは 困った笑顔で答えた。
ウェンデッタ
アルス
アルス
アルス
ウェンデッタ
――想定外 の糾弾。
呆然とするウェンデッタだが、 慌てて気を取り直す。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
ウェンデッタ
クロエ
クロエ
騎士
騎士
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
ウェンデッタ
――血まみれ のナイフ。
先ほど何気なく拾った“凶器”を、 彼女は握りしめたままだった。
ウェンデッタ
アルス
??
騎士の脇を抜け 室内へ飛び込んできたのは、 執事服姿の青年だった。
ウェンデッタ
驚きの声を上げるウェンデッタ。
主である皇太子を 守るように 警戒する騎士達。
騎士
ダニエル
ダニエル
アルス
ダニエル
ダニエル
ダニエル
アルス
怒り狂ったアルスが 剣を振るう。
ダニエル
丸腰のダニエルは、 あっけなく斬り殺され、 動かなくなってしまった。
ウェンデッタ
へなへなと座り込む ウェンデッタ。
貴族と平民という 身分の違いこそあったが、
年も近いダニエルは、 日々を笑い合える友人 でもあった。
――大切な友の 突然の死。
ウェンデッタ
平和に暮らしてきた 箱入り令嬢の“心”を 折るには、
十分すぎるほどの 衝撃だった。
皇帝の“暗殺”は 重罪だ。
民も貴族も皇族も、 決して許しはしない。
“犯人”のウェンデッタ のみならず、
その父母や弟まで、 一家全員が 投獄された。
取り調べと称して 行われるのは――
騎士
ウェンデッタ
ウェンデッタ
騎士
ウェンデッタ
――殴る蹴るの 過剰な暴行。
打開の一手など あるはずもなく――
――ついに 処刑の時刻。
アルス
アルス
かつての婚約者が 冷たく言い放つ。
クロエ
彼に寄り添うようにして、 聖女が憐みの視線を 向けてくる。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
痛みで回らぬ頭をフル回転し、 ウェンデッタは必死に 策を練る。
そして、導いたのは わずかな“希望”。
ウェンデッタ
アルス
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
彼女は諦めた。
疑いを晴らし、 元の暮らしへ戻る道を。
かわりに決めた。
自身を犠牲に、 大切な家族を救おうと。
真っすぐなウェンデッタの答えに、 意外そうな顔をする アルス。
アルス
――数秒の沈黙。
永遠にも思える思案ののち、 皇太子は おもむろに口を開いた。
アルス
ウェンデッタ
令嬢が パッと笑顔になった、 その瞬間――
アルス
ウェンデッタ
吐き捨てられた言葉に、 困惑する ウェンデッタ。
クロエ
クロエ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
アルス
アルス
アルス
アルス
ウェンデッタ
アルス
皇太子の 無慈悲な号令。
魔術師たちが 『炎魔法』を同時に放った。
瞬く間に、 業火に包まれる 処刑台。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
父が、母が、幼い弟が――
苦しみながら炎で焼かれ、 そして絶命していった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
令嬢の瞳は、命を落とす その瞬間まで、
“赤き憎悪”に 燃え上がっていた のだった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
ウェンデッタ
突然目覚める少女。
そこは、自分の『寝室』だった。
ウェンデッタ
ウェンデッタ
永遠に終わらない拷問で 無数につけられた 傷の痛み。
燃え盛る炎で 生きながら焼かれた 地獄の熱さ。
ウェンデッタ
アルス
ウェンデッタ
少女は、気づいていなかった。
ベッドの横に、 “婚約者”が座っていたことを。
ウェンデッタ
状況を掴めないウェンデッタの 手を握り、 アルスは穏やかな顔で答えた。
アルス
アルス
アルス
自分を殺すよう 命じたはずの “元凶皇子”。
その爽やかな笑顔が 自分だけに 向けられている――
ウェンデッタ
――混乱したウェンデッタは、 再び気絶したのだった。