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見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

第44話 - バトル７　太郎合わせゲーム【終】

2025年01月09日

#ミステリー

#心理戦

#デスゲーム

#推理

#第4回テノコン

日比野響

一宮

この場合、最後の親順はどうするんだ？

一宮

すでに勝負は決まったようなもんだけど。

二ツ木

どちらにせよ、まだ【太郎】を持ってる私が、親順【３】で【太郎】を出すから、流れてセットが終了する。

二ツ木

流れた場合は私の勝ちでいいんだよね？

七星

あ、あぁ。

二ツ木

確かにそう言ったもんね。

二ツ木

今さらになって撤回するとかやめてよ。

二ツ木

まぁ、セットが流れなくても親順【２】で勝負はついたけどね。

二ツ木

(もうどうあがいたって私の勝ちだから)

二ツ木

(変な提案をしてきた割に、大したことなかったね)

七星

あぁ、今さらになってルールの撤回を求めたりはしないさ。

七星

セットが流れてしまえば、こちらの負けで構わない。

七星

――ただし、セットが流れていたらの話しだがな。

二ツ木

は？

二ツ木

あ、そうか、セットが流れたりはしないもんね。

一宮

親順【２】で全員が【太郎以外】を出したからな。

二ツ木

そう、下手な提案をしなかったほうが良かったかもね。

七星

いいや、そんなことはない。

七星

こうでもしなければ、ここまで誘い込むこともできなかっただろうからな。

二ツ木

えっ？

七星

今のセットの親順を知りたい。

七星

君の口から発表してもらえると助かるんだが。

二ツ木

えっと――。

二ツ木

(はぁ？)

二ツ木

(どうして？)

二ツ木

(どうして私の親順が――【２】なの？)

二ツ木は言葉を失う。

なぜなら、自分に割り当てられた親順が、なぜか【２】だったのだから。

二ツ木

な、七星の親順が【１】で……。

一宮

俺の順番が【３】だから。

七星

必然的に君の親順は【２】ということになるな。

七星

一宮、よく私の意図を汲んでくれたな。

二ツ木

……な、なんで！

二ツ木

だっておかしいじゃん！

二ツ木

前のセットと親順が被らないように、今回のセットでは親順を決めるんでしょ？

二ツ木

だったら、私が前回と同じ【２】のわけないじゃん！

七星

確かに、私は前回のセットと親順が被らないようにして欲しいと意見した。

七星

だが、その前に条件を出したはずだ。

七星

【ランダム抽選方式を変更して】とな――。

二ツ木

え、えっ？

七星

もう一度言うぞ。私は【ランダム抽選方式】を変えて欲しいと言ったまでだ。

一宮

つまり、それ以外の抽選方式は、そもそも七星の提案通りにはならない。

一宮

ってことでいいか？

二ツ木

(意味が分からない。だからなに？)

七星

あぁ、一宮の解釈で間違いない。

七星

二ツ木といったな？

七星

これは、ある意味で踏み絵だったのさ。

七星

君が正直にランダム抽選方式で親順を決めているのかを確かめるためのな――。

二ツ木

(まさか――まさかまさかまさかまさか！)

二ツ木

(バレてた？)

二ツ木

(私が【２】の親順を固定していたこと！)

七星

このゲーム、基本的に自分の親順さえ把握できていれば絶対に負けない仕様になっている。

七星

その中でも【２】は展開的にも有利に持っていける立ち位置だ。

七星

なぜなら、このゲームは心理戦に見せかけたチキンレースなんだからな。

七星

いつ、どのタイミングで【太郎】を出すのか。

七星

言ってしまえば、それだけ単純なものであり、またパターン化した展開しかない。

七星

言い返せば、このゲームは運だけでもなんとかなってしまうため、戦略性の要素が薄くなる。

七星

戦略性が薄くなるほど、実力の差も出なくなる。

七星

それなのに、やたらと自信ありげにゲームを展開させるからな。

七星

もしかしたら、なにかしらの裏があるんじゃないかと考えたんだ。

七星

例えば、自分の親順だけ特定の順番で固定すること――とかだ。

七星

そんな疑いを持っていた矢先、たまたま君が２連続で【２】の親順となった。

七星

だから提案させてもらったんだ。

七星

【ランダム抽選方式を変更する】という提案をな。

七星

もし、仮に君の親順もランダム抽選で、たまたま連続で親順が【２】になっただけなら、私の思い過ごしで済んでいたのだろうし、君の親順もルールに則って前セットとは異なる親順になっていただろう。

七星

【ランダム抽選方式を変更して】から【前セットと被らないように親順を決める】のだから、その対象となるのは当然ながら、その時点で【ランダム抽選方式】にて親順を決めていた者に限定される。

七星

要するに、順番の固定など、あらかじめ小細工がされて親順が決まっている人間は、その対象外になるんだ。

二ツ木

(ルールを提案した時のニュアンスを、私が履き違えていた？)

二ツ木

(てっきり私自身も対象だと思っていたから、絶対に親順が【２】じゃないって確信したのに！)

二ツ木

(こんなことってある？)

七星

真っ当に勝負をしていれば、こんな結果にはならなかった。

二ツ木

でも、どうして？

二ツ木

どうやって意思の伝達をしていたの？

二ツ木

それはあくまでも、七星の策略であって、一宮は知らなかったんでしょ？

一宮

……ん、強いて言うならなんとなくかなぁ。

一宮

七星だったらそう考えるだろう……って漠然と思っただけで。

一宮

特に明確な打ち合わせがあったわけじゃないし、確信があったわけでもないんだよな。

二ツ木

(この２人、正気なの？)

二ツ木

(どちらかが満を持して仕掛けても、もう片方がそれを把握できなかったら台無し)

二ツ木

(それなのに、漠然となんとなく――で、背中を預けたってこと？)

七星

君には信じられないだろうな。

七星

これが俗に言う【信頼】と呼ばれるものだ。

七星

それは曖昧で形がない。

七星

しかし、確実に存在はしている。

二ツ木

そんな……私が負けるなんて。

一宮

君は確かに強いのかもしれない。

一宮

でも、人間ってのはどんなに強くても――。

一宮

ずるしたら意味ないよ。

七星達に策略を見破られ、それ逆手に取られてしまった二ツ木。

太郎合わせゲーム、ここに決着。

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