雨足は弱まってきたけど、
風はまだ唸りを上げている。
台風が完全に通過するまで
あと一時間ぐらいかな。
みんなは何を思いながら
この長い夜を過ごしているんだろ。
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・
オーナーの武藤正は、
絵に描いたようなクズ男で、
パワハラ、
セクハラ、
モラハラ、
全てを網羅していた。
正直、
こんな時代遅れの人間が
どうして今も生きているのか
不思議でならなかった。
それと同時に、
興味も湧いた。
このクズ男は、
落ちるところまで堕ちたら
どうなってしまうのだろうか、と。
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───数年前。
武藤(むとう)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
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結果、
純利益だけ見れば
3倍どころの話ではなかった。
多くの利益を出したこの作戦は
廃業寸前の民宿を建て直し、
武藤の懐を潤した。
武藤は浮いたお金で
宿を修繕することなく、
そのほとんどを
自分のために使っていった。
キャバクラ、
風俗、競馬に
パチンコ、
単純な人間ほど
面白いほど簡単に落ちていく。
大金が手に入れば
人の気は自然と大きくなる。
金を借りてもすぐ返せると
高をくくり、
遊ぶ金が無くなれば
闇金で金を借り、
その返済に追われる日々。
最初は上手くいっていた返済も
どんどん間に合わなくなっていく。
一人また一人と従業員のクビを切り、
客単価を上げようと
料金を上げたら客が激減した。
それもそうだ。
この宿の取り柄は”料理”しかない。
同じ値段で
もっと綺麗な宿があれば
誰だってそちらを選ぶ。
・
武藤は焦っていた。
借金の金額は膨れ上がり、
もうどうしようもなくなっていた。
ここからどうするのだろう?
二束三文にもならない
宿を売り払うのか、
夜逃げをするか、
首を吊るか……。
そこに
追い打ちをかけるように
武藤を訴えるという人物が現れた。
昔、ここで働いていた従業員だそうだ。
興味が無いので覚えていないが、
武藤に対して
相当強い恨みを持っているらしく、
パワハラとセクハラの証拠動画まであるという。
訴えられれば勝てる見込みは無い。
武藤は示談に持ち込もうとしたが、
相手にそのつもりは無いらしい。
とうとう落ちるところまで落ちたのか、
そう思っていた矢先の出来事だ。
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武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
衣色(いしき)
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武藤(むとう)
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武藤(むとう)
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衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
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・
奥の手など
ありはしない。
あとはどうなるのか
事の顛末を見守るだけ、
そう思っていたのに。
この男はどこまでも
予想に反した行動をして、
僕を楽しませてくれる。
・
武藤は何を血迷ったのか、
ある日突然
女を一人連れてきた。
衣色(いしき)
衣色(いしき)
衣色(いしき)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
武藤(むとう)
そう言う彼は血走った目をギラつかせ
歪んだ笑みを浮かべていた。
衣色(いしき)
・
この男は、
本当に
救いようのない
クズだ。
ああ、
ダメだ。
笑うな。
笑うのは、
全てが
終わってからだ。
・