何度も何度も何度も
同じ日を彷徨っている
いわゆる
〝タイムリープ〟ってやつ
漫画とか空想の話でよく聞いたけど
これが結構キツい
同じ空気の朝
同じイントネーションの台詞
同じ写真の様な風景
そして
何も変わらない終わり
貴方は
ずっとずっとずっとずっとずっと
同じ一つの小説を繰り返し読める?
それも1度や2度じゃなくて
何百回、何万回って
読めるかな?
無理だって
正直に言うと
もう死にたい
何を求められてるのか
何をしたら解放されるのか
分からないから
お母さん
1階からいつものように母の大声が聞こえてくる
里津花
支度をして家を出るとすぐ目の前の通りを歩くサラリーマンが軽くつまずいて
右側のコンクリート塀の上には三毛猫がゆっくりとあくびをする
3秒後に枯れ葉が私の左肩に落ちてきて
そのすぐ1.5秒後に後ろの閉まるドアの向こうから、お母さんの行ってらっしゃいの挨拶が
何万回見ただろうか
«高校»
楓
楓
里津花
里津花
楓
楓
里津花
里津花
楓
楓
眉をしかめながら私を見て
何か言いたげに口をぱくぱくさせる
里津花
楓
楓のこの反応にも見飽きてしまった
楓
里津花
楓
楓
ぐるぐる巻きの包帯を左足首に着けて
松葉杖を使ってカツカツとゆっくり近づいてきた
里津花
里津花
楓
楓
楓
楓
里津花
本当は心配する気持ちも薄れてしまってて
ただの〝イベント〟の一部にしか見れなくなっている自分がいる
心まで無くしてしまったような気がして
やるせない気持ちになる
夕日の光を浴びながら
楓の歩幅に合わせてゆっくり歩いて行く
里津花
里津花
里津花
楓
楓
楓
里津花
里津花
楓
里津花
楓
楓
楓
楓
里津花
里津花
ああ
もう〝終わり〟だ
里津花
楓
里津花
里津花
楓
後からダッダッダッと足音が近づいてきて
私に抱き着くようにして右脇腹を果物ナイフで刺される
いつもこの終わり方
楓
この痛みには
何万回体験しても
やっぱり慣れない
楓
楓
楓の声が霞んで聞こえなくなってくる
楓
楓
ごめん楓
もう辛いよ
お母さん
お母さん
変わらない終わり
変わらない始まり
変えようと努力はした
あの犯人と戦ってみたり
警察官と一緒にいて守ってもらったり
一日中部屋に閉じこもってみたり
他にもいろいろ
でも
やっぱり変わらない
最後は必ず刺されて死ぬんだ
…
自分からも…したことがある
自殺
やりたくなかったけど仕方がなかった
お母さん
里津花
«高校»
楓
楓
里津花
楓
里津花
里津花
楓
里津花
里津花
楓
楓
里津花
楓
里津花
楓
楓
里津花
里津花
楓
里津花
楓
楓
楓
里津花
里津花
楓
授業中も落ち着かなかった
後はあの犯人さえどうにかすれば
昼休みに窓の外を見ながらそんなことを考えていると
バタンと教室のドアが開いた
息を切らしたクラスメイトが駆け込んでくる
『山岡先生捕まったって…』
こんな展開今まで無かった
〝今回〟は何かおかしい
あの犯人ってもしかしたら
里津花
楓
楓
他の先生やクラスメイト
先輩とか後輩にも色々と情報を聞き出していく
半年前から始まった連続殺人と
2週間前の殺人の手口が一致して
しかも現場に残っていたナイフから山岡先生の指紋が出たらしい
後から抱き込んで脇腹を刺す
私と一緒だ
里津花
楓
里津花
里津花
里津花
里津花
楓
楓も足を怪我せずに部活を終えた
ちゃんと
進んでる
帰りに食べたクレープも
めちゃくちゃ美味しかった
途中で楓と別れて
無事に家に帰る
里津花
里津花
お母さん
里津花
思わず母に抱き着く
お母さん
お母さん
時間の進みがこんなにも嬉しいなんて
思わなかった
お母さん
お母さん
やっと来た〝明日〟を
頑張って生きよう
そう思えた
久しぶりに食べた夕飯
落ち着いて横たわれるベッド
幸せだ
本当に
本当に…
……
お母さん
お母さん
コメント
5件
やっぱり当たり前って大切なんだなって思えます。私も今両手を火傷していて,手が使える事の大切さを知りました。
里津花!遅刻だよ! (´;ω;`)