テラーノベル
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第二話:すれ違う気持ちと、近づく距離 翌朝、いつも通りの朝が訪れた。だけど、昨日の言葉が頭の中でぐるぐると渦巻いている。 「透、今日の予定は?」 陽翔が食卓の向こう側から聞いてきた。カップから湯気が立ち上る珈琲をゆっくりと飲みながら。 「午前は大学の研究室、午後からはバイト」 そう答えながらも、心は重い。どうしても、あの夜の話が気になってしまう。 陽翔は何も言わずに頷いた。 「そうか……」 言葉少なだが、どこかいつもと違う雰囲気が漂っていた。 *** 大学のキャンパスに向かう途中、スマホにメッセージが届く。 【陽翔】「帰り、寄る?」 その一言に、胸が熱くなる。すぐに返信を打つ。 【透】「うん、今日もよろしく」 普段なら何でもないやり取りだけど、今日はそれが特別な約束のように感じてしまう。 *** 夕方、シェアハウスに戻ると陽翔はソファに座って漫画を読んでいた。 「おかえり」 「ただいま」 気まずさはない。ただ、距離が少しだけ近くなった気がする。 陽翔が隣に座ると、肘が触れた。 その瞬間、心臓が跳ねた。 「なあ、透……」 「ん?」 陽翔の声はいつもより少しだけ低くて、優しい。 「さっきの話、真面目に考えてる」 胸の中がぎゅっと締め付けられる。 「……俺も、同じだ」 ふたりの視線が交わる。 そのまま、陽翔がそっと手を伸ばし、透の手を握った。 「///」 手のぬくもりが、まっすぐに伝わってくる。 「ずっと、伝えたかった」 ぽつりと呟いた陽翔に、透は目を閉じて、小さく頷いた。 「俺も……」 *** その夜、ふたりはゆっくりと距離を縮めていった。 初めての恋の予感に、胸が締めつけられながらも、暖かい。 あの日々はもう、ただの友達同士じゃない——。
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