十五年前のある日、
娘は転落死した。
一緒にいたと思われる
クラスメイトの子は
”一緒に遊んでいただけ”
”落ちちゃったアイちゃんを見て”
”動かなくなったアイちゃんを見て”
”怖くなって”
”逃げた”
そう話していた。
大人を呼びに行っていれば、
助かったかもしれない命。
それを、
あの子は見捨てたのだ。
でも、
相手は6歳になったばかりの子供。
正常な判断など出来るはずもない。
そう思うことにした。
娘が亡くなって十五年の月日が流れたころ、
ようやっと遺品整理をする決心がついた。
そこで、
私は思いもよらぬものを見つけてしまった。
娘の、
愛莉(あいり)の書いたもの。
”ナミちゃんになぐられた”
”ナミちゃんにけられた”
”ナミちゃんにくーちゃんをとられた”
”ナミちゃんにくーちゃんをいけにすてられた”
そんな言葉が並んでいた。
娘は夫が買ってきた熊のぬいぐるみに
”くーちゃん”と名前を付けて
とても大切にしていた。
思えばあのころ、
ぬいぐるみをよく汚して帰ってきていた。
”一緒に遊んだの”
そう言った娘の顔が
脳裏を過ぎり、
あの当時抱いていた疑問が
溢れ出てくる。
”どうしてくーちゃんが”
”仰向けに倒れていた愛莉の”
”下敷きになっていたのだろう?”
落ちたぬいぐるみを取ろうとして
足を滑らせたのだろうか……。
それとも、
あの子がぬいぐるみを
投げ落としたのだろうか……。
でも、
確証は無い。
これも憶測に過ぎない。
だけど、
娘の残した言葉が
想いが
日毎増していく。
そんなある日、
『何でも相談所』の噂を耳にした。
”これを使えば”
”我が子の無念を晴らせるのではないか”
そんなことを思ってしまった。
私はあらゆるSNSを駆使して、
あの子が今、
どこで何をしているのが探し、
そして、
見つけ、
書き込んだ。
あの子が我が子を
死に至らしめたのなら、
きっと、
罰が下るのだろう。
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『何でも相談所』
20211130224212
投稿者:名無しさん
斎藤奈波(さいとう ななみ) 西〇大学デザイン科
2000/04/20
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斎藤奈波は、
多くの刑事の監視下にあったが、
当然、本人には何も伝えていない。
加藤ハルの件もあり、
妙な緊張感が刑事たちの間に漂っていた。
そして、
監視を始めて一週間が過ぎた日のこと。
バイトを終えて
最寄りの駅に向かう斎藤を
四人の刑事が監視していた。
いつもなら
そのまま真っすぐ電車に乗るのだが、
その日は駅前のカラオケ店で
友人と待ち合わせをしており、
合流するとカラオケ店へ入って行った。
飯塚刑事
飯塚刑事
若い刑事が眉間に皺を寄せて呟く。
松葉刑事
松葉刑事
松葉はため息混じりに言って、
他の刑事に連絡を取った。
しかし、
拍子抜けするほどあっさり
三時間後に斎藤は一人で出て来た。
飯塚刑事
松葉刑事
そのとき張り込んでいたのは、
この二人の刑事だけだった。
長丁場になると予想して、
他の二人は、
食事を済ませていたのだ。
飯塚刑事
松葉刑事
週末の終電前となれば
駅前はそれなりに人も増える。
二人は斎藤を見失わないよう
細心の注意をはらいながら
一定の距離をあけて歩いていた。
飯塚刑事
声をかけられたような気がして振り返るも、
そこには誰もいなかった。
飯塚刑事
松葉刑事
飯塚刑事
飯塚刑事
そのたった一瞬、
二人が目を離した隙に
斎藤奈波は人波に飲まれ、
その姿を消したのだった。
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きりしま
みぞぐち
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
きりしま
きりしま
きりしま
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
きりしま
みぞぐち
きりしま
きりしま
みぞぐち
みぞぐち
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溝口 圭一
溝口 圭一
溝口 圭一
溝口 圭一
溝口はパソコンに表示されている
『何でも相談所』
の文字を見つめる。
溝口 圭一
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霧島 希
霧島 希
霧島 希
霧島 希
霧島 希
驚いて振り返っても
そこには誰もおらず、
真っ暗な道が続いているだけだった。
霧島 希
霧島 希
霧島 希
慌てて向き直ったが、
そこに斎藤奈波の姿は無かった。
霧島 希
駆け出し、
辺りを隈なく見て回っても
斎藤を見つけることは出来なかった。
霧島 希
・
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───二十分後。
溝口 圭一
霧島 希
溝口 圭一
溝口 圭一
霧島 希
溝口 圭一
霧島 希
溝口 圭一
霧島 希
溝口 圭一
霧島 希
溝口 圭一
霧島 希
霧島 希
霧島 希
霧島 希
霧島 希
霧島 希
溝口 圭一
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