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『何でも相談所』【完結】

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『何でも相談所』【完結】

16 - 「お゙あ゙あ゙あ゙あ゙」前編

♥

61

2024年08月23日

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十五年前のある日、

娘は転落死した。

一緒にいたと思われる

クラスメイトの子は

”一緒に遊んでいただけ”

”落ちちゃったアイちゃんを見て”

”動かなくなったアイちゃんを見て”

”怖くなって”

”逃げた”

そう話していた。

大人を呼びに行っていれば、

助かったかもしれない命。

それを、

あの子は見捨てたのだ。

でも、

相手は6歳になったばかりの子供。

正常な判断など出来るはずもない。

そう思うことにした。

娘が亡くなって十五年の月日が流れたころ、

ようやっと遺品整理をする決心がついた。

そこで、

私は思いもよらぬものを見つけてしまった。

娘の、

愛莉(あいり)の書いたもの。

”ナミちゃんになぐられた”

”ナミちゃんにけられた”

”ナミちゃんにくーちゃんをとられた”

”ナミちゃんにくーちゃんをいけにすてられた”

そんな言葉が並んでいた。

娘は夫が買ってきた熊のぬいぐるみに

”くーちゃん”と名前を付けて

とても大切にしていた。

思えばあのころ、

ぬいぐるみをよく汚して帰ってきていた。

”一緒に遊んだの”

そう言った娘の顔が

脳裏を過ぎり、

あの当時抱いていた疑問が

溢れ出てくる。

”どうしてくーちゃんが”

”仰向けに倒れていた愛莉の”

”下敷きになっていたのだろう?”

落ちたぬいぐるみを取ろうとして

足を滑らせたのだろうか……。

それとも、

あの子がぬいぐるみを

投げ落としたのだろうか……。

でも、

確証は無い。

これも憶測に過ぎない。

だけど、

娘の残した言葉が

想いが

日毎増していく。

そんなある日、

『何でも相談所』の噂を耳にした。

”これを使えば”

”我が子の無念を晴らせるのではないか”

そんなことを思ってしまった。

私はあらゆるSNSを駆使して、

あの子が今、

どこで何をしているのが探し、

そして、

見つけ、

書き込んだ。

あの子が我が子を

死に至らしめたのなら、

きっと、

罰が下るのだろう。

『何でも相談所』

20211130224212

投稿者:名無しさん

斎藤奈波(さいとう ななみ) 西〇大学デザイン科

2000/04/20

斎藤奈波は、

多くの刑事の監視下にあったが、

当然、本人には何も伝えていない。

加藤ハルの件もあり、

妙な緊張感が刑事たちの間に漂っていた。

そして、

監視を始めて一週間が過ぎた日のこと。

バイトを終えて

最寄りの駅に向かう斎藤を

四人の刑事が監視していた。

いつもなら

そのまま真っすぐ電車に乗るのだが、

その日は駅前のカラオケ店で

友人と待ち合わせをしており、

合流するとカラオケ店へ入って行った。

飯塚刑事

これって朝まで…

飯塚刑事

っていうパターンですかね

若い刑事が眉間に皺を寄せて呟く。

松葉刑事

かもしれんな

松葉刑事

こりゃ、交代で監視するしかないな

松葉はため息混じりに言って、

他の刑事に連絡を取った。

しかし、

拍子抜けするほどあっさり

三時間後に斎藤は一人で出て来た。

飯塚刑事

あれ?あっさり出てきましたね

松葉刑事

だな

そのとき張り込んでいたのは、

この二人の刑事だけだった。

長丁場になると予想して、

他の二人は、

食事を済ませていたのだ。

飯塚刑事

この時間ならまだ電車はありますが

松葉刑事

今日はやけに人が多いな

週末の終電前となれば

駅前はそれなりに人も増える。

二人は斎藤を見失わないよう

細心の注意をはらいながら

一定の距離をあけて歩いていた。

 

あの、すみません

 

落とされましたよ

飯塚刑事

え?

声をかけられたような気がして振り返るも、

そこには誰もいなかった。

飯塚刑事

あれ…?

松葉刑事

おい、どうした?

飯塚刑事

あ、いえ

飯塚刑事

何でもありません

そのたった一瞬、

二人が目を離した隙に

斎藤奈波は人波に飲まれ、

その姿を消したのだった。

きりしま

溝口くん!今どこにいるの?

みぞぐち

今、ですか?

みぞぐち

まだ謹慎中なので

みぞぐち

家にいますけど

きりしま

じゃあ今直ぐ来て!

みぞぐち

え?どうしました?

みぞぐち

というかどこに?

きりしま

地図は今から送る

きりしま

出来るだけ早く来て

きりしま

じゃあないと斎藤さんが殺されるわよ

みぞぐち

え、あ、はい

みぞぐち

で、でも、斎藤さんには警察の監視が

きりしま

ついてないから電話したんでしょ!?

きりしま

ほんっと!

きりしま

警察は何してんのよ!

みぞぐち

……

みぞぐち

地図、確認しました

みぞぐち

今から出るとなると合流するのは

みぞぐち

二十分後になるかと

きりしま

わかったわ

きりしま

とにかく急いで来て!

みぞぐち

霧島さん

きりしま

なに?

みぞぐち

どうして斎藤さんが殺されると?

きりしま

いつもなら電車に乗って帰るはずの彼女が

きりしま

徒歩で家とは逆方向に向かってるのよ

みぞぐち

彼氏のところとか

みぞぐち

友達のところに行くんじゃなんですか?

きりしま

そうかもしれないけど!

きりしま

でも、彼女の雰囲気は明らかにおかしかったの

みぞぐち

おかしい?

きりしま

そう、上の空っていうか

きりしま

声をかけても気の無い返事しかしなくて

きりしま

”どこに行くの?”って聞いても

きりしま

”友達が呼ぶんです”としか答えなかったの

みぞぐち

だったらなおさら友達とか彼氏のところに

きりしま

そうじゃないわ

きりしま

”友達って誰?”って聞いたら

きりしま

”十五年前に亡くなった友達”って

きりしま

おかしいと思わない?

みぞぐち

……

みぞぐち

…霧島さんに目的地を言いたくなかっただけじゃないんですか?

きりしま

溝口くん

みぞぐち

な、なんですか?

きりしま

本当に犯人を捕まえたいの?

みぞぐち

え?

みぞぐち

そ、そりゃ捕まえたいですけど…

きりしま

確かに彼女は友達や彼氏の家に行ったかもしれない

きりしま

私に目的地を言いたくなかったかもしれない

きりしま

それならそれでいいじゃない?

きりしま

でも、そう決まったわけじゃないのに

きりしま

そう決めつけるのはよくないわ

きりしま

もしかしたら

きりしま

これが犯人を捕まえる千載一遇のチャンスかもしれないでしょ?

みぞぐち

た、確かにそうです…けど…

みぞぐち

自分は今、謹慎中で…

きりしま

はぁ…

きりしま

やる気が無いなら来なくていいわよ

きりしま

私だけで探すから

みぞぐち

霧島さんは

きりしま

何?

みぞぐち

この事件にどうしてそこまで執着するんですか?

きりしま

被害者の一人、藤崎花は私の身内なの

みぞぐち

え…

きりしま

だから、犯人を絶対捕まえたい

きりしま

そんな理由じゃダメ?

みぞぐち

いえ、十分です

みぞぐち

急いで合流します

溝口 圭一

……

溝口 圭一

(このままだと本当に霧島さんが)

溝口 圭一

(犯人を捕まえてしまう…)

溝口 圭一

(そうなったら俺は……)

溝口はパソコンに表示されている

『何でも相談所』

の文字を見つめる。

溝口 圭一

(何か…手を打たなきゃいけない…のか…)

霧島 希

相変わらず頼りない男

霧島 希

でも

霧島 希

彼にしか頼めない

霧島 希

だって彼も

 

”犯人の死を望んでるから?”

霧島 希

え?

驚いて振り返っても

そこには誰もおらず、

真っ暗な道が続いているだけだった。

霧島 希

今、のは?

霧島 希

……

霧島 希

しまった!!

慌てて向き直ったが、

そこに斎藤奈波の姿は無かった。

霧島 希

どこに…

駆け出し、

辺りを隈なく見て回っても

斎藤を見つけることは出来なかった。

霧島 希

しくじった…

───二十分後。

溝口 圭一

すいません、遅くなりました

霧島 希

……

溝口 圭一

霧島さん?

溝口 圭一

あの、斎藤さんは?

霧島 希

見失った

溝口 圭一

え…

霧島 希

警察は?

溝口 圭一

総力を上げて探していますが

霧島 希

そう……

溝口 圭一

霧島さん

霧島 希

諦めるのは早いわ

溝口 圭一

…そう、ですね

霧島 希

これまで犯行は人気のない場所で行われて来た

霧島 希

ということは

霧島 希

この辺りにある空き家を探せば

霧島 希

彼女か、犯人は見つけられるはず

霧島 希

溝口くんが来るまでにいくつか気になる場所を見つけておいたのから

霧島 希

片っ端から当たるわよ

溝口 圭一

は、はい…

『何でも相談所』【完結】

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