エレナside.
ネイ
…じゃあ、噛むよ。
エレナ
…うん。
首元に、ネイの顔が沈んでく様子を横目で眺めていた。
牙がたてられ、一瞬痛みが襲う。
痛みには慣れていたが、こんな優しい痛みを私は知らなかった。
ネイが血を飲み始める。
ここまでは、いつも通りと変わらなかった。
…ここまでは。
エレナ
…!?
なぜか、言い知れぬ快楽が私を襲った。
甘く、切なく、それでいて気持ちの良い。
エレナ
…っ。
声を出しそうになるのを必死に防ぐ。
ネイに血を飲まれている時。
それが、私が唯一生きていると思える瞬間だった。
エレナ
んっ…
突然、自分のものとは到底思えない甘い声が漏れた。
相手をもっと求めて喘ぐような、そんな声だった。
エレナ
…!?
ネイは私から体を引き離した。
困惑した表情でこちらを見る。
私も困惑していた。
ネイ
…ごめん、今日は帰るわ。
エレナ
…なんで?
困惑していることを悟られないよう、平静を装う。
ネイ
急用を思い出した。
…嘘だ。
ネイは嘘をつくとき、よく目を逸らす。
今のネイは目を逸らしていた。
私にはネイが嘘をついてまでここを去りたい理由がわからなかったが、何も言わず、ネイの後ろ姿を見送った。