テラーノベル
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夕暮れの校舎。
橙色の光が西の空を染め、低くなった雲がゆっくりと流れていた。
風がフェンスを鳴らし、二人の髪を乱す。
ぷりっつ
ぷりっつの声は、低く抑えられているのに、少しだけ震えていた。
あっきぃ
あっきぃは、軽く笑って見せる。
でも、その笑みはどこか探るようで、 冗談めかしながらも視線を逸らさなかった。
ぷりっつ
あっきぃ
ぷりっつ
あっきぃ
ぷりっつ
その一言が、やけに風に溶けていった。
ぷりっつが、一歩近づく。
靴底が屋上のコンクリートを踏む音が、やけに大きく響いた。
あっきぃは動かない。
ただ、フェンス際で夕陽を背に受けながら、ぷりっつを見上げる。
ぷりっつ
あっきぃ
ぷりっつ
あっきぃ
ぷりっつ
答えの代わりに、ぷりっつの手が伸びてきた。
肩に置かれたその手は、驚くほど温かかった。
ほんの一瞬――
押された、という感覚さえ曖昧なまま、体が後ろに傾く。
あっきぃ
足が宙を切り、重力が全身を掴んだ。
時間が、ゆっくりになる。
フェンスとぷりっつの姿が、逆さまに視界の端へと遠ざかっていく。
あっきぃ
耳を切り裂く風の音。
でも、不思議と怖くなかった。
あっきぃ
押される直前、ぷりっつの瞳が揺れていたのを、はっきり覚えている。
怒りでも憎しみでもない……もっと、違う何か。
あっきぃ
頬をかすめる風が、夕陽の温度を含んでいる。
そのぬくもりが、心の奥を締めつけた。
あっきぃ
落下の合間に、いくつもの記憶が脳裏をよぎる。
笑いながらコンビニでアイスを選んだ夏の日。
雨に降られて、相合傘で肩を寄せた帰り道。
くだらないことで言い合って、最後は同じタイミングで謝った夜。
あっきぃ
地面が迫る。
でも、視線はまだ、上にいるぷりっつを追っていた。
フェンス際、夕陽を背負ったまま、動かずにこちらを見下ろす姿。
その影が今、そっと揺れた気がした。
あっきぃ
唇は動かさず、心の中でだけ呟く。
次の瞬間――
——世界は、音もなく、真っ白になった。
コメント
2件
すごすぎます✨ 書き方も天才だし、発想も凄いです!! prちゃん、どうして落としたんだろ.ᐣ