コツ、コツ、コツ、と、 無機質な靴の音がする。
今、僕達は、日本の部屋へと向かう所だ。 中国が小籠包と肉まんを作ったらしく、みんなで日本の所で食べよう、となったらしい。 日本は中華料理が大好きだから、匂いでも残してあげれば喜ぶかな、と思ったのだ。
韓国
北朝鮮
中国
モンゴル
ロシア
台湾とパラオは、一緒に経済の勉強するとかなんとかで、来れないらしい。 来ればよかったのに、と本当に思う。
今日今この時間に来たのは、アメリカがこの時間帯はいないからだ。 僕達が日本の所へ行くと、高確率でアメリカがいる。そうなれば、誰かの分の中華料理を食べられてしまうだろう。そして、喧嘩になってしまったりしたら....と考えると、恐ろしい。 一応言っておくと、アメリカは今国際組織の会議に参加している。 いつもならアメリカはそんな会議に殆ど出席しないが、”日本絡み”と聞いた途端いきなり真面目になって会議に出席していった、...と、イギリスが言っていた。
...そんなこんなで談笑しながら、日本の部屋についた。
先頭に立っていた中国が、軽くドアノブを握り、 扉を開いた。
中国
その瞬間、中国の手から、料理が落ちた。
北朝鮮
落ちる寸前で、中国の横を歩いていた北朝鮮が料理を受け止めたので、無事だった。
韓国
中国の様子がおかしい。 さっきまで笑い話をしていたのに、急に部屋の中を見ながら扉の前で固まっている。
韓国
韓国
ゴトン。
僕の手から、スマホが滑り落ちた。
部屋の中には、 きちっと整えられたベッドで仰向けになって寝ている、 日本が、居た。
アメリカ
息切れを知らぬ振りにして、死ぬ気で走り続ける。
会議中、連絡があった。 国連にバレないようにスマホを取り出し、ロックを解除してメールを見たら、韓国からだった。
そのメールには、 「日本が生き返った」 と、記されていた。
俺は会議中だというのに音を立てて立ち上がり、荷物を持って会議室を飛び出した。 国連の、驚きの混ざった静止の声が聞こえたが、俺は振り向かなかった。国連が追ってこなかったのは、きっと、国際組織の誰かが国連を止めてくれたからだと思う。
俺はよくわからない感情に見舞われていた。
嬉しいは嬉しいけど、焦りや不安が複雑に入り混じって気持ちが悪い。 例えるならば、...そうだな、フランスが敬語使ってメイド服きたイギリスにイタリア料理を提供している、...みたいな気持ち悪さだ。
メールによると、極東組で日本の部屋に行ったら、全身が復活した日本が寝ていた、とのこと。
アメリカ
アメリカ
そうした、謎の悲しみが込み上げてきて目が熱くなる。 なんとかそれをおさえながら、ただただ走り続ける。
こんなに廊下を全力疾走して、ドイツや日本が居たら怒られてしまうだろう。 ただ、今の俺は、誰にも止められないと思う。
.....一直線に疾走して、やっと目的の場所までたどり着く。 その部屋の前は、いろいろな国であふれていて、とても部屋に入れそうにない。
ただ、......
____今のアメリカは、誰にも止められない。
アメリカ
そうして、ドア付近の国達を押し出す。 国達は、すぐにドアのそばから退いてくれたので、意外とすんなりと部屋に入れた。
アメリカ
俺は、叫ぶように、名前を呼んだ。
コメント
7件
文章と表現が天才すぎます…!!💖✨ 自分も日本が最初に見るのはアメリカが良い…!!😭
例え方が面白過ぎたwww