これほどまでに完璧な殺人を犯す人間が今までいただろうか。
証拠を一つとして残さず、
監視カメラにも映らず、
まるで亡霊のように
人を惨殺する。
そんな殺人鬼の存在を
小藤糸織(ことう しおり)は 知らなかった。
今や、都市伝説の如く語られる”死魔さん”と呼ばれる殺人鬼。
過去に二十人近い人間を殺害しておきながら、
その尻尾さえ警察は掴めていないという。
小藤は、”死魔さん”という存在をSNSで見つけてから
彼?に関する事件についてインターネットの世界を探し回った。
一番有名な話は”何でも相談所”だ。
そこに書かれた人物は全員、もれなく殺害もしくは行方不明になっている。
その殺され方はあまりにも惨たらしいモノだった。
手足を切り落とされ、
腹を裂かれて
内臓を引きずり出され、
眼球を刃物で貫通し、
脳味噌を掻き混ぜる。
犠牲となった人々の死に顔は、
直前まで苦しんだであろうほど痛みと恐怖に歪んでいた。
小藤 糸織
事件に書かれた内容を読めば読むほど、
小藤は”死魔さん”に強く惹かれていった。
男性か女性か、
単独犯か複数犯かもわからない。
だが、
この世界には”死魔さん”と呼ばれる殺人鬼が実在する。
そう考えただけで、
背筋がゾクゾクするような感覚があった。
小藤 糸織
小藤 糸織
そうやって一日の大半を
”死魔さん”に想いを馳せて過ごしていた。
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知能の低い客
知能の低い客
小藤 糸織
小藤 糸織
知能の低い客
知能の低い客
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
自意識過剰な店員
小藤 糸織
自意識過剰な店員
自意識過剰な店員
小藤 糸織
自意識過剰な店員
自意識過剰な店員
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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小藤にとって”死魔さん”の存在は絶対的な心の拠り所だった。
そして、同じように”死魔さん”を崇拝する人たちと掲示板やSNSで出会い。
意見を交わしていくうちに、
彼女の中で”死魔さん”という存在がどんどん大きくなっていった。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
次いで送られて来たのはネットニュースのURLだった。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
記事を読み進めていけば、
栗原秋のスマホは見つかっていないということ。
近隣での目撃者がいないということ。
そして何より、
殺され方が彼女の父親も含め凄惨さを極めたとある。
小藤 糸織
背筋がゾクゾクとして、
言いようのない高揚感が襲い掛かってくる。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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ニヤニヤしながらバイトに戻る。
薄汚い客
小藤 糸織
お会計して釣銭を渡そうとして、
老齢の男性はギュッと小藤の手を握りしめてきた。
背筋を這う、嫌悪感。
小藤 糸織
男性を見れば、
薄汚い笑みを浮かべている。
薄汚い客
そして、ねばついた声でそう言うと
名残惜しそうに手を離して店を出て行く。
小藤 糸織
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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知能の低い客
小藤 糸織
自意識過剰な店員
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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同士の中には、
”死魔さん”を見つけようと躍起になっている者もいた。
小藤 糸織
逐一報告されるSNSの書き込みを見て、
小藤は小馬鹿にしたようなため息をこぼした。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤は自分の口角が緩むのを感じ取った。
小藤 糸織
小藤 糸織
完璧でなければ意味が無い。
絶対的でなければ意味が無い。
小藤の思い描く”死魔さん”はどんどん大きく膨らんでいった。
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同士と一緒に”死魔さん”が人を殺した廃墟を訪ねる
聖地巡礼をすることもあった。
もちろん、
中に入ることは出来なかったが、
外観を見るだけでも十分満足できた。
そこに”死魔さん”がいたという空気が感じられるだけでも幸せだった。
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小藤 糸織
それは、同士との通話の中で出た言葉だった。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
そう思った小藤の脳裏を数名の客と、
一緒に仕事をしている人間の顔が過ぎった。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
うーむ、と唸りパソコンの画面を見つめる。
小藤 糸織
例えば、不特定多数の人が利用できるもので、
書き込んだ人の特定が難しく、
足が付きにくい方法。
今ではインターネットの掲示板も規制が厳しくなっているという。
小藤 糸織
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
次いで、送られて来たのはネットニュースのURLだった。
小藤 糸織
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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しかし、事件の詳細を読んで確信する。
小藤 糸織
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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会いたいと思って会えるものではない。
ただ、
会いたいと思っているのならば
その無意識下に干渉するのは容易いことだ。
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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その言葉の途中で、
男性は五寸釘を彼女の右肩に突き立てた。
小藤 糸織
小藤 糸織
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釘を抜き、
もう一度右肩に突き刺す。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
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ほぼ無感情に彼が言うと、
釘を押し込んだ。
小藤 糸織
小藤 糸織
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言いながら彼は彼女の左手を掴み、
ノコギリの歯を手首にあてがう。
小藤 糸織
小藤 糸織
ギョリ…ギョリ…
小藤 糸織
手を体を激しく揺らしても、
彼は手を離すことなく
ノコギリを押したり引いたり…。
その度に、
肉が削げる音と
彼女の悲鳴が部屋に響く。
小藤 糸織
涙が溢れ、
コンクリートの床に落とされた己の左手を見つめる。
ニコニコと微笑んで言う彼を見て、
彼女は顔を引きつらせる。
小藤 糸織
彼は左耳を摘みノコギリの歯をあてる。
小藤 糸織
ギョリ…
小藤 糸織
ギョリギョリ……
ベチャッ…
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
ギョリ…
小藤 糸織
小藤 糸織
ギョリギョリ…
小藤 糸織
ベチャッ…
小藤 糸織
小藤 糸織
彼は彼女の右手を掴む。
小藤 糸織
小藤 糸織
彼女は早口で尋ねる。
ギョリギョリ…
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
そう言って彼は、
切り落とした小藤の右手で
彼女の頭を撫でた。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
彼は首を傾げて
小藤の右手で顎を撫でる。
小藤 糸織
小藤 糸織
にっこりと微笑んで名前を呼ばれ、
小藤は心臓が高鳴ったのを感じた。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
ギョリギョリ…
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
名前を呼ばれて口元が緩む。
次いで襲い掛かってくるのは快楽ではない。
激痛である。
それでも、
小藤糸織は幸せだった。
”死魔さん”に出会えて、
”死魔さん”と会話が出来て、
”死魔さん”に名前を呼ばれて、
”死魔さん”に
殺されて。
小藤 糸織
小藤 糸織
ノコギリの刃は、
確実に食道の半分を切断していた。
血を吐き、
それでも
小藤は微笑む。
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
小藤 糸織
ノコギリが頸動脈を切ると、
鮮血が綺麗な弧を描いて吹き出し、
小藤は大きく痙攣を起こして
白目を剥いた。
床に転がり落ちた小藤の生首を見つめる。
そう言って、彼は大きく背伸びをした。
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コメント
6件
怖かったです!!
香坂さんも軽く引くくらいの慕いぶり… ありがとうございました!