アラン
お前……いつ参入したんや
ダンスフロアの小道に先程国家重要人物から離れたアランと燐光がいた
燐光
久しいな、雷王神
燐光
自然神から承った人間の生活は楽しいか?
アラン
俺の質問に答えろや
アラン
いつ、この組織に参入した
燐光
さっきだよ、ついさっき
燐光
俺が宿っていた人間を唆してこの総会まで連れ出し、わざと捕まるようにした
燐光
そして、魔力が溢れかえった場所で魔族と接触し身体の主導権を奪った。だから、俺の意思で動いている訳だ
アラン
長が恨んでる人間に宿っておきながら乗っ取り、その身体で参入を頼んだんか?
燐光
質問を続けるな
燐光
神だろうと、七つの大罪には関係ない
燐光
そうだろ?地位を重んじる神様?
アラン
っ
燐光
俺はこの組織に一生涯の忠誠を誓うさ
燐光
盾にだって、矛にだってなってやる
燐光
彼奴の人生は、俺の身体の持ち主だった奴に破壊されたんだ
アラン
それはただ親ガチャが悪かっただけやろ
燐光
神がそんなこと言うか
燐光
悪魔が先導したならまだわかる不幸体質だ
燐光
だが!人間の「生」に関わるのは神のみ
燐光
全知全能神様がたった一人のまだ幼い子供に、大きな命運を託す訳が無いだろ!
アラン
なんで悪魔であるお前が全知全能神様を庇うんや
アラン
悪魔は人間の欲望を食いちぎり、しまいには精神を蝕み「死」に追い込む
アラン
「死」という概念を造り出した始祖やろうが
燐光
なら「生」という概念を造り出したのは神
燐光
生まれたくなかった家庭に強制的に生まれさせ、才能を捨てた人間を多く造り出したのは神共だろ
燐光
俺達悪魔はそんな人間を救う為に「死」という概念を造り出したんだ
アラン
「死」を救済とでも言うんか。人間は永遠の命を欲していると言うんに
燐光
なら、ずっと生きた人間の物語を見てみるか?
燐光
神界で習っただろ?
燐光
『神や悪魔以外の生物にとって、永遠の命は叶わないモノだから尊いモノ』だと
燐光
たった一人、人間界に「永羽」という人間を試験的に生み出し、永遠の命を与え人生を歩ませた
燐光
信頼した者が自分より先に老いて死んでいく
燐光
これにより永羽は精神を蝕まれ、全知全能神様に言った
燐光
『人間に永遠の命など不要だ!家族も友達も大切な人も、自分より先にこの世界に逝ってしまう。一人であの世界に残されるのならば、悪魔に食い殺された方がマシだ!』
燐光
だから、永羽の「生」をグニチェハッハ様が奪った
燐光
これは永羽本人と全知全能神様そしてグニチェハッハ様全員が同意して行った行為だ
燐光
もし、スカイ様利用しようとしているのなら、俺は容赦しない
アラン
なんでだ?スカイ様のアビリティーは『生死掌握』
アラン
これは全知全能神様の力だ
アラン
あの方が、神界に必要な存在やったんや!
燐光
あんな腐りきった世界は、崩壊して正解だったんだ
燐光
まだ、行方を眩ませた自然神様を探しているのか?
燐光
あのお方が、人間界にいる痕跡なんて一つも無いんだぞ
アラン
黙れ!”お母様”が俺を捨てるなんてしないんだ!
アラン
絶対人間界で生きている!
アラン
神界のNo.2だったんだぞ!?
アラン
そんなお母様が……消滅するなんて有り得ないんだ
ハク
雷王神らしからぬ言葉遣いや、大罪らしからぬ振る舞いは辞めなよ。見苦しい
アラン
お嬢
燐光
??
ハク
……久しぶり、マモン
燐光
今は名を改めて燐光だ。久しぶりだな、??
ハク
僕も今はハクだよ。その名前は捨てたからさ
アラン
お嬢、なんで止めるんや?俺やお嬢、此奴の出身世界なんやで?
ハク
”時空”が違う
ハク
この世界に神界の常識は無いし、歴史もない
ハク
ここは人間界、人間らしく振る舞うのが礼儀だよ
燐光
さすが、礼儀を叩き込まれた聖獣の一族だな
ハク
……悪魔が神を庇うなんて前代未聞だよ
ハク
まぁ全知全能神様を崇めていて以前は配下に居たはずの神が恨んでいるなんて、思わなかったけど
アラン
全知全能神様を恨んでいる訳やない
アラン
ただ、全知全能神様の生まれ変わりがスカイ様やって言ってるだけや
ハク
それは違うよ、アラン
ハク
生死掌握は全知全能神様が持っていた『創世掌握』とは比べられない程の劣化アビリティー
ハク
世の中に生きる生物に寿命しか操れない生死掌握と、人を生み出す所から扱える創世掌握では領域がまず違う
燐光
それに生死掌握はグニチェハッハ様が持っていた『滅亡掌握』の劣化アビリティーでもある
燐光
もし、本当に全知全能神様の生まれ変わりなら生死掌握をもつことなんて、ありえないんだよ
ハク
もし、神界復興をするつもりなら僕は協力しない
ハク
勿論、そんな事に身内を売るつもりは無いから白鳳龍族をはじめ、他の聖獣にも伝え、聖獣一族は絶対に従わないよ
燐光
俺ら悪魔も懲り懲りだ
燐光
神界は神や配下の天使が正当化される世界であって、悪魔に居場所はない
燐光
あんな世界の出身やったことさえ汚名だと思ってる悪魔や魔族がいる
燐光
だから悪魔も魔族も、神界復興には協力しないな
ハク
神界復興にはこの世界にもあるけど、数多の種族が必要
ハク
ランクも高位な者しか参加出来ない
ハク
それで復興は無茶だ
アラン
ぅ、やけど!
アラン
……二人声揃えて言わんくてもええやん
ハク
はぁ、子供に戻った
燐光
やっぱ、雷王神はそれが一番だな
燐光
ずっと気を張って無理に大人を演じなくても良いさ
燐光
まだこの世界でお前は16歳だしハクは13歳
燐光
神としても聖獣としても若いしな
ハク
神界ではもう飽き足りる程生きたよ
ハク
もう、母様も見飽きた
ハク
たまには”元皇龍”だった父様にも会いたいなぁ
燐光
……
アラン
……
燐光
ハク、お前の父親の事なんだが……
ハク
知ってるよ。知ってるから……言わなくて大丈夫
ハク
調べてくれてありがとう
燐光
……すまなかった
MOB
ごめん下さいな!ワインのおかわりは何処に御座いますの?
ハク
あ、申し訳御座いません
ハク
すぐにお伺いします
ハク
それじゃ、各役割を果たそう
ハク
燐光、正中層部は序列式
ハク
いくら七つの大罪だろうと、正中層部の序列が反映される
ハク
落ち着いた頃に、また雄蔵様に会いに行こうね。それじゃ
燐光
雄蔵?誰だ、それ
アラン
俺達が所属している正中層部No.1の人や
アラン
魔蛾族重蛾種であり、魔蝶族をも纏める存在の蛾野雄蔵様
アラン
ここは自分より序列が上の人に「様」を付けやなアカン
アラン
元々友人関係やったら、別に問題ないけどそれ以外は絶対
アラン
それに普通に話してたけど、お嬢はアレでもNo.5なんやで?
燐光
ハクがお前を抑えて高い地位にいるなんてな
燐光
元の立場は逆だったというのに
アラン
大丈夫、お前はいつから序列上がるわ
俺は一生無理よ
燐光
まぁ魔族が悪魔より上だとは思わないが、あの様子だと、俺も昇格は無さそうだな
燐光
俺は憎らしかったとはいえ、組織長の父親を殺したんだ
アラン
お嬢の親父さんは……どこに行ったんだろうな
燐光
さぁな、地獄にも天使界にも神界にも、この人間界にもいない
燐光
ハクが生まれるより遥か昔に、地獄が生み出される前に消滅したのかもな
アラン
現皇龍のセツナ様は……本当に愛されていたのかな。お嬢のことも、お嬢の親父さんの事も……
燐光
聖獣は人間からは信仰を、身内から愛を貰わなければ生きられない
燐光
どちらかが無くなれば皇龍の地位は簡単に取られる
燐光
聖獣の雌は面倒臭い
燐光
ハクの母親のように権力しか愛さない聖獣もいるさ
燐光
地獄で学んだ、聖獣や神は人間の次に依代にしやすいってな
燐光
ま、俺は七つの大罪って事で天使との関わりもあったし、そうとは思わなかったけどな
アラン
……
燐光
俺は少なくとも、魔力とは別の悪魔の力を持った人間として姿を変えた
燐光
本質は悪魔とはいえ、できる事はアラン同様に限られる
燐光
人間としても本質の力をフル活用出来るのは信仰され愛される神や聖獣だけだ
燐光
だから俺は、友人としたハクを愛する人間として、お前とハクを信仰する
燐光
それが今の俺に出来る、お前達をこの世界に維持させる為の方法だ
アラン
……ありがとうな、燐光
アラン
全く、なんでお前が神か聖獣に生まれなかったのが不思議や
燐光
はは、生まれたからずっと……俺は悪魔だからな
燐光
俺、フロアの見回りに戻るわ
アラン
わかった。お互い頑張ろうな
燐光は笑っていた口角を下げ、瞳に悪魔の証である縦筋のハイライトを浮かび上がらせる
燐光
魔眼『デビルアイズ(黒)』
燐光
これを発現させている間は、人間の醜い部分を見る事や神や聖獣の抑制が出来る
燐光
アランとハク、七つの美徳である天使どもには効かないが、他の神や聖獣には有効
燐光
俺ら悪魔にとって、人間の「欲」は大好物だ
燐光
彼奴の為に、力を蓄えないと
燐光は小道から出て人間達から狂うように踊るフロアへ入っていった