テラーノベル
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sora
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ゆゆ

33
3,974
キリキリと、スタジオの床が激しいステップの音を響かせる。 新曲のダンスレッスンは、終盤に差し掛かるにつれて全員の息を容赦なく奪っていった。
振付師
振付師の先生の声と同時に、全員がその場に崩れ落ちる。 俺も汗を拭う気力すらなく、鏡に背中を預けて床に座り込んだ。 荒い呼吸の隙間で、胸の奥が激しく脈打っている。 ダンスの疲労だけではない。 フォーメーションの最中、何度も至近距離で交わした勇斗の視線が、まだ身体の奥に残っている気がしてならなかった。
佐野勇斗
不意に、視界が遮られる。 見上げると、すでに汗を綺麗に拭った勇斗が、自分の飲んでいたスポーツドリンクのペットボトルを俺の目の前に差し出していた。
吉田仁人
佐野勇斗
図星だった。 俺が頑なに拒もうとするのを無視して、勇斗は俺の隣にすとんと腰を下ろすと、強引にペットボトルを俺の手の中に握らせてくる。 彼の大きな手のひらの熱が、一瞬だけ俺の肌に直に触れた。 心臓が跳ねる。
山中柔太朗
少し離れた場所で水分補給していた柔太朗が、ストローをくわえながら、ジト目で俺たちを見ていた。
吉田仁人
言い直しながら、手の中のペットボトルを少しきつく握る。
曽野舜太
タオルを首にかけた舜太が、きらきらした笑顔でこちらに歩いてきた。
曽野舜太
吉田仁人
俺は慌てて声を裏返した。 顔が熱くなるのが自分でもわかる。 レッスンで火照っているのだと、周りにも、そして自分にも言い訳をするように、慌てて勇斗から渡されたドリンクを口に含んだ。
佐野勇斗
勇斗が俺の顔を覗き込み、悪戯っぽくニヤニヤしながら、俺の頭を大きな手でぽんぽんと叩く。
吉田仁人
心のモノローグが、苦しく冷ややかに響いた。 世間やメンバーが「さのじん」として俺たちを特別視し、勇斗が「俺の最高の相棒」と呼ぶたびに、俺の胸の奥はチクリと音を立てて痛む。 その特等席は、世界で一番近くにいられる場所であると同時に、一歩でも踏み出せば全てを失う、進めない「檻」だ。 勇斗が向けてくれる「好き」の境界線がどこにあるのか分からない。 だから俺は、これ以上傷つかないために、「ビジネスパートナー」という名の仮面を、今日もより深く被り直すしかなかった。
コメント
1件
わあ……読み終わってすぐ、胸がぎゅっとなりました。 「特等席=檻」っていう仁人の心中、すごく刺さりますね。相棒って呼ばれるたびに痛むって感覚、切なすぎる……。勇斗の過保護な優しさと、それに戸惑いながらも抗えない仁人の気持ちの揺れが、レッスンの熱気と一緒に伝わってきて、すごく没入できました。続き、どう転ぶんだろう。