〜マルルの調合部屋〜
ヒデオ
いや〜帰ってきて早々聞きたいことがあって
マルル
私なんかで役に立てるならいいわよ
ヒデオ
ヒデオ
さっきの話のことでハバタキ草についてしりたいんですよ
マルル
ハバタキ草なんかについて?
マルル
あれは正直都市伝説みたいなものよ?
マルル
そんな真剣になって聞くことでもない気がするけど…
ヒデオ
ヒデオ
実はそのハバタキ草を探してる人達に会いましてね
マルル
あるかも分からないものを?
ヒデオ
本人達の意思ではなく別の方が依頼してるらしいんですが
ヒデオ
その方もハバタキ草…いや、その先の不死の薬について知ってるんです
マルル
まぁ、有名な話だしね
ヒデオ
マルルさんの主観で構わないんで
ヒデオ
ハバタキ草、もしくは不死の薬についてどう思います?
マルル
マルル
あんだけ茶化した言い方したけど
マルル
私はハバタキ草は存在すると思うし
マルル
その不死の薬っていうのもあると思う
マルル
途中話したエリクサーの材料だとかも言ったけど
マルル
ぶっちゃけあれは嘘よ
マルル
嘘を話した理由としてあなたにハバタキ草の有無を知られたくなかったから
ヒデオ
それは何故?
マルル
あなた探究心の塊みたいな人でしょ?
マルル
あるって確約したら探しに行く気だし
マルル
だからあそこではレアな材料とか、あるかも〜?みたいな濁し方をしたの
ヒデオ
そういう意図があったんですね
マルル
で、ハバタキ草がホントにあると思う理由が私の中にあってね
マルル
別名不死鳥の羽と言われるほどの特徴的な草と言われてるじゃないあれ
ヒデオ
まぁ、私も他の方から聞いた程度ですけど確かにそう言ってましたね
マルル
その上不死鳥の羽なんておとぎ話に出てくるものの一種なのよ
ヒデオ
それも聞きました
マルル
けど確かにあるはずなのよ
マルル
これだけ聞くと空想物語に影響受けて現実にもあるかもって思うヤバい人なんだけど
マルル
実はこれに似た事例があってね
マルル
別のおとぎ話に出てきたとある都市
マルル
そのおとぎ話では『エデン』と言われてるんだけど
マルル
そのおとぎ話に出てくるエデンにそっくりな廃都市が見つかってるの
ヒデオ
偶然一致しただけというのは?
マルル
最初は誰もがそう思った
マルル
けど、調べていくうちに偶然ではなく
マルル
その都市をモチーフに『エデン』という都市が作られたのよ
ヒデオ
例をいくつか教えてください
マルル
長くなるけどいい?
ヒデオ
構わないです
マルル
まずエデンっていうのは楽園とかを指す言葉
マルル
それで人々が想像する楽園は草原、もしくは花畑が広がり
マルル
苦しみのない世界って認識だと思うのよ
ヒデオ
私もその認識です
マルル
おとぎ話の方の『エデン』はそれに近くて
マルル
人々が苦しむことの無い生活を送っていると記されてる
マルル
対する現実世界で見つかった廃都市なんだけど
マルル
こっちもエデンと同じような生活を送っているという住民の日誌が見つかってる
ヒデオ
過度な苦しみはない幸せな日々ですか…
マルル
次に街には伝統なるものがあると思うけど
マルル
その伝統も『エデン』と廃都市は似てる
マルル
エデンの伝統は果実祭りというもの
マルル
その都市では果実が美味しいと有名で
マルル
特定の日に果実の日というものを作りその日が祭りの日になってる
マルル
見つかった廃都市も同じで果物の日というものを作ってたらしいの
ヒデオ
果物に果実…
ヒデオ
更には特産品のようなものになり祭りも開くほど……
ヒデオ
両方とも確かに重なる点はありますね
マルル
で、極めつけはおとぎ話も現実世界と同じように滅ぶことになるんだけど
マルル
その滅んだ原因が今話した果実によるもの
マルル
エデンの住民が好んで食していた果実には幻覚作用を引き起こすものが含まれてたの
マルル
とは言っても一つ一つにはそんな危惧する程入っていない
マルル
だから『毎日三食欠かさず』食べてさえいなければ
マルル
普通に美味しい食べ物だった
ヒデオ
もし、毎日のように食べてたら…
マルル
幻覚に幻聴まで聞こえて思考回路が壊れていく恐ろしい果実に早変わり
マルル
遂には隣にいる人間でさえも人と認識できなくなっていき
マルル
都市全体で殺戮が始まり住民はみな息絶えることになる
マルル
見つかった廃都市は果物に幻覚作用とかはなかったけども
マルル
その果物自体に大きな価値が生まれてその価値に目をくらませた
マルル
人々が一つの果物のために血を流す争いを初めて自壊していった…
マルル
おとぎ話のエデンより酷いのはこの争いを引き起こしたのは
マルル
その価値が生まれた果物を栽培していた人物のぽつりと呟いた一声だった
マルル
悲しいことにその一声は争いを意図的に引き起こすものではなく
マルル
ただ生産者としての嬉しい悲鳴のようなもの
マルル
『今年のも国王様は喜んでくださるだろう』
マルル
その一声を聞いたものが争いにと発展させた
ヒデオ
どうやって都市が滅ぶほどの争いに……
マルル
人って生き物は強欲なのよ
マルル
現状に満足出来ずにその上を求める
マルル
例えば同じリンゴでもAはいつも食べてるものに対して
マルル
BはAよりも美味しいとされるリンゴだとしたらあなたはどっちを食べる?
ヒデオ
それは気になるからBですかね
マルル
そうでしょ?
マルル
この廃都市の住民もその選択をした
マルル
国王が好んで食べるのだからさぞ美味しいのだろうと
マルル
その果物を手に入れた街の人は試しに一口食べてみる
マルル
すると今まで食べてきたものの中でも群を抜いて美味しかったのよ
マルル
それ故に人々の中にありもしない仮説が生まれそれを信じるものが現れた
ヒデオ
まさかその仮説って…
マルル
そう、こんな美味しいものを国王は独占するつもりだ、と
マルル
哀れなことにそんな裏もとれてない噂を鵜呑みにした街の人は
マルル
その果物を欲するあまり度を越して争いにと発展させたのよ
ヒデオ
そんなバカバカしい話が本当にあったのか…
マルル
嘘だと思うならあなた自身で調べるといいわ
マルル
で、長くなったけど私はこの話を知ってるからこそ
マルル
ハバタキ草の存在もそれを使って作り出せる不死の薬についても
マルル
噂ではなく実在するもの、もしくは誕生させることが可能なもの
マルル
そう思ってるってこと
ヒデオ
やっぱりハバタキ草はあるのか…
マルル
ぶっちゃけた話このハバタキ草を追ってる調合師とか研究者
マルル
なんならどっかの国の金持ちとかはきっとろくなことに使わない
マルル
不死になれることを夢見る人は沢山いる
マルル
けどその大半は己の欲を満たすためだけに使うと思う
マルル
もし、ヒデオさんが興味を持ってしまったのなら忠告してあげる
マルル
それを追うことはあなたや周りの人を危険に晒すわよ?
マルル
自分だけじゃなく周りにも迷惑をかけることになる
マルル
それが嫌ならあなたは変わらず魔王城で道具屋を営むといいわ
マルル
やっと叶えられた夢なんでしょ?
ヒデオ
ヒデオ
はい、確かにそうですけど…
ヒデオ
そんなものが実在して悪意ある人に渡ったら
ヒデオ
この世界は壊れてしまう…
ヒデオ
たった一人の欲のために世界を壊されるのは……
マルル
忠告はした
マルル
見つけに行く行かないはあなた次第よ
マルル
マルル
ま、もし行くなら全力でお手伝いするけどね
ヒデオ
!
マルル
あなたならハバタキ草をきっといい方面に使ってくれると思うから
ヒデオ
はい、その時はご迷惑をお掛けしますね