天使
…………
王子
似合ってるぞ
赤紫色の前ミニ・トレーンドレスを着せられ、鏡の前に立たされた
前ミニから覗く足は妖艶さを感じる
天使
(まるでお姫さまみたいだな)
王子
今まで一番綺麗だ
天使
褒められても嬉しくない
天使
天使
そもそも僕は人じゃないし
王子
知ってる
ぎゅっ
優しく抱きよせる
天使
──性別不明の僕なんかより
天使
王侯貴族の女の子の方が似合うと思うけど
王子
このドレスはあんたのためだけに用意したものだ
天使
…………
王子
もし気に入らないなら、ほかのもある
天使
……何着用意したんだ?
ぱっと見30着くらいありそうだ
王子
50着
天使
…………
王子
本当は500着用意したんだが、部屋に入りきらず
王子
泣く泣く厳選して50着にした
天使
なんでピアノ演奏以外、ポンコツになるの?
思わずため息をつく
僕を着飾らさせたあと、中庭へと連れ出した
天使
…………
正直戸惑った
ここ数年、部屋から出したがらなかったのに……
天使
(どういう風の吹き回しなんだ?)
王子
何か言いたげだな
天使
…………
王子
この時間帯なら誰もいない
王子
求婚するには申し分ないだろ?
まっすぐな眼差しを向けられる
王子
王子
あんたを俺の妃に迎えたい
天使
──え?
思わず耳を疑った
僕を妃に…………?
天使
口を開きかけた途端、唇を塞がれた
王子
…………
天使
……ん……!?
慌て離れようとしたけれど、後頭部を手で押さえられできなかった
ようやく解放されたけど立っていられなくて、あいつに身をもたせる
抱きとめるように腕を回された
天使
天使
……なんで、僕なの…………?
王子
あんたじゃなきゃ、意味がない
天使
でも、僕は……
不意を衝かれ抱きかかえられた
天使
…………!
王子
部屋に戻るぞ
天使
え、あ……ちょっと……!
王子
ちょうど満月だ
王子
『月の光』を弾いてやろう
天使
イヤだ、下ろして……!!
抗議の声を上げつつも、構わず歩を進める