ちら、と様子を窺いみる
別に何かをしているわけでもなさそうだった
ソファを独占するみたいに脚も腕もだらんとさせて座り、仕事関係ではないのだろう、時々スマホを弄る指がすい、と動く程度だ
私は構ってほしい、と猛烈に思った
同じ屋根の下にいるとはいえ、四六時中ぴったりくっついているわけではない
それが突然、足りないと騒ぎ立て、同じ部屋にいる彼をひったくるようにして奪わなくては気が済まない
また、ちら、と様子を窺いみる
同じように座っているだけだった
でもそれを再度確認してから、たとえその手が仕事をしていようとこの欲求を抑え込むことはできないと悟った
そこからの私の行動は早かった
突然、自我が消えたようにソファの元へと足が向く
角名倫太郎.
言葉はなかったけど、会話はあったように感じられた
大きく脚が開かれても、なお私がそこに座れるようにすら感じるほど広いソファなのに、敢えて隣に座るようなことはせず、脚の間に入って座る
宛ら犬だ
きっと耳はぺたん、と左右にぴったりひれ伏し、今か今かと頭を撫でられるのを待っている
それでも彼は何も言わなかった
こちらに束の間目をやったかと思えば、またふい、とスマホに目を戻した
興味がないというより、動いたな、というのを脳に送り届ける作業が行われたようだった
密かに期待をしてしまっていたのか、手が伸ばされないことがわかると途端に眉が下がる
悲しい、というより淋しい、と感じた
少し手を伸ばしてくれればそこに頭を持っていくのも厭わないというのに、その手が何も求めてこないのが途端に淋しくなる
ただ、私も何も言葉にしなかった
好きにしてやろう
この欲求は私の三大欲求に入る
そして今ちょうど、理性で抑えられる境界を超えたのだ
そう決めると、首が座らない赤子のようにこてん、と頭が右に折れる
項の辺りには膝の皿が当たるし、頬には薄い筋肉を通して大腿骨が触る
寝心地がいいとは言えないが、これを求めていたのだからしょうがない
直接当たるこの部屋着の生地が好きだ
一緒にいるんだと実感が湧いてくる
満足よりももっと重たくて、満たされているというよりまた欲求が逆撫でされる
優越感に浸っていると、知らぬ間に伸ばされていた手が頭を掠める
何度が薄く髪をなぞるように撫でられ、毛並みを整えられた後にやっと、頭蓋骨を慈しむように手を添わされる
待ち焦がれていたものがようやく与えられた
そして与えられた途端、図々しくもその次を求めてしまう
撫でることをすぐにやめ、定位置を見つけたのか乗せられたままになった手に恨めしく動け、動けと念じる
それに合わせるようにその手に頭を擦りつける
そこでようやく目が合った
角名倫太郎.
fin.
コメント
16件
可愛すぎるし最高すぎるしどうしようッッッ…!!!😫💗💗
角名くん、イケメソぉ…() 相変わらずの対応な角名くん…🫣💗
りんりん意地悪ーーーー!笑 興味ないフリしといて内心デレデレだったらめちゃカワイイ💕