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3分間サバイバル[つかみとれ！最高の結末]編

第1話 - 星空の殺人

2023年08月04日

#小説

#ミステリー

amane🥀📖⌨️

蝶ネクタイをしたバーテンダー

もうお帰りですか？

俺(ナレーター)

俺が席を立ったとき、蝶ネクタイをしたバーテンダーが声をかけてきたのはグラスの中身が半分残っていたせいだろう。

俺(ナレーター)

せっかくタイに来たんだから、ココナッツ・ミルク入りのカクテルでも頼んでみるかと、飲んだことのないピニャ・コラーダをオーダーしたんだが、なんだかあまったるくて持てあましてしまったんだ。

俺(ナレーター)

と、本当のことを言うのも悪いから、

俺

約束に遅れそうなんでね

俺(ナレーター)

と彼に笑いかけ、水をひと口飲んで席を立った。

俺(ナレーター)

そんな余計なことを、言わなければよかったんだが…。

俺(ナレーター)

降るような星空のもと、俺は待ち合わせの場所に向かう。

俺(ナレーター)

人目をしのぶために選んだのは、ホテルの敷地内のはずれのココヤシの木だ。

俺(ナレーター)

ところが…。

俺(ナレーター)

待ち合わせの相手であるリー氏は、木の下にうつぶせに倒れていたのである。

俺(ナレーター)

俺はしゃがみこむと、そっとリー氏の首にふれてみた。

俺

(脈がない！心臓に持病でもあったのか？)

俺

(もしかしてまだ蘇生するかもしれない。救急車を呼ぶべきか。)

俺

(いや、敵の多いリー氏のことだ。)

俺

(もしかしたら殺されるのかも…毒殺とか。)

俺

(…というか、俺に疑いがかかる可能性は大きいじゃないか。)

俺(ナレーター)

すぐに荷物をまとめて逃げようと思ったとき。

ホテルの支配人

おーい、チェン！そっちに行っちゃダメだよ！

俺

その人どうしたんですか？

俺(ナレーター)

支配人はサルを腕に抱くと、俺を疑いの目でにらみつけながら、後ずさる。

俺

ちがう……俺は何もしてない！たった今ここに来たら倒れていたんだ！

俺(ナレーター)

リー氏の死因は、頭を強打したための脳出血だったそうだ。

俺(ナレーター)

死体のそばにいた上に、バーテンダーが「『約束に遅れそうだ』と言って出ていった」と証言したことながら、俺は容疑者にされてしまった。

俺(ナレーター)

リー氏の持ち物が調べられると、俺の連絡先も出てきて　─　後ろ暗いところのある俺はまずい立場に追い込まれた。

俺

でも、もし殺すつもりだったら、わざわざ他人に『約束がある』なんて言ったりしませんよ。

俺(ナレーター)

俺は懸命に主張したが、刑事はバカにしたように言った。

刑事

きっと最初は殺すつもりじゃなかったんだろう。だけど、取り引きの交渉がうまくいかずに、カッとなって殴りつけた。そんなところじゃないか？あなたはボクシングの心得があるらしいね。凶器も見当たらないし、相手が死ぬほどの力でなぐれる人はそういないはずだ。

俺(ナレーター)

交渉のことを持ち出されると、こっちも苦しい。

俺(ナレーター)

俺はリー氏と法律的に禁止されている薬物の取り引きについて交渉することになっていたんだ。

俺

でも……本当に俺はやってない。もし、リー氏がだれかに殺されたのなら、ほかに真犯人がいるはずだ。もっとよく調べてくれよ。

俺(ナレーター)

興奮してせきこんだ俺に、刑事が水の入ったペットボトルを渡してくれた。

俺(ナレーター)

いつのまにか、喉がカラカラになっていた。

俺(ナレーター)

水をぐいっと飲み、喉をうるおしたとき、俺はひらめいたんだ。

俺(ナレーター)

もしかしたら……。

俺

刑事さん、真犯人がわかりました。ひとつ実験をやらせてください。そうしたら、俺の無実が証明できるかもしれない。

主人公は真犯人を名指しし、自分の無実を証明することができた。主人公はどんな実験を行ったのか。リー氏を殺した真犯人はだれだったのだろうか。

解説真犯人は、支配人のペットである。サルは待ち合わせのココヤシの木にのぼり、ココナッツの実つけ根をねじって落とした。これが、真下にいたリー氏の頭を直撃したのである。熟したココナッツが自然に落ち、頭にぶつかって大ケガをしたり、死亡したりする例は多く報告されている。実が現場に残っていれば主人公は疑われなかったはすだが、サルがどこかに持っていってしまったのだ。主人公は支配人に頼んで、ペットのサルをヤシの木のそばに連れてきてもらった。このサルがヤシの実を落としたこと、リー氏の頭の外傷とヤシの実の形状が一致したことから、主人公は解放された。ココヤシの木になるココナッツはタイの名産品。ヤシの木は高さ15メートルほどあるため、現地の農業では古くからサルに収穫をさせている。伝統的な手法だそうだが、現在では「動物虐待ではないか」という声もあり、議論されている。