奪ワレル・・・

ラウールの言葉を聞いて、翔太の首元を見るとそこには指の痕までくっきりと残るくらいの痣

阿部の腕に抱かれた翔太は目を閉じて荒い呼吸を繰り返していた

熱い身体をそっと持ち上げると翔太は眉間に皺を寄せてビクッと震える

口がパクパクと動き、閉じた目からは涙が

なるべく振動を与えないようにゆっくりと寝室へ移動する

腕の中で震える翔太は俺のシャツを力無く握り、潤んだ目で俺を見ていた

その口が『ゴメン』と動く

何故喋らないのか分からないが、安心させるため抱き抱える腕に力を込めた

照に翔太を寝室に運んでもらって、ベッドに寝かせた途端、翔太は意識を失うように眠った

熱を測ると39.4℃あり、慌ててラウールが近くのコンビニに走って冷えピタとスポーツドリンクを買ってきた

苦しそうな呼吸が少し落ち着いたのを見て、3人でリビングに戻りソファに座ったところで照が口を開いた

照は怪訝な顔で俺を見ていた

それからあの夜の出来事を話した

阿部とラウールから語られたのは、あまりに非現実的で、俄には信じられないような話だった

でも、実際昨日、ラウールが足を引き摺っていたのも、翔太の声が掠れていたのも見ている

阿部に関しては気づかなかったが……

翔太は結構怖がりだ……

だけど……

チラッと2人を見る

阿部とラウール

この2人相手だと、翔太は……

分かっているのは夜になると起こる事

恐らく、あのロケが原因である事

黒い影が襲ってくる事

狙われているのは翔太の声、阿部の頭、ラウールの足

そこで殺されると戻ってきてそれぞれ症状が出る事……

情報が少なすぎる……

それに……このメンバーじゃ、翔太は弱さを見せれない

目の前で疲れた顔をした2人

苦しそうだった翔太

このままじゃ、3人の身体も精神もやられてしまう

俺の言葉に不安そうな表情を浮かべながらも2人は頷いた