ツヨシ
――脅迫?

ツヨシ
一体誰から?

ニコが現在住んでいる部屋へと入れてもらったツヨシ達。
お茶を準備するニコから聞かされた話に、ツヨシは素っ頓狂な声を上げる。
ニコ
そ、私のところにこんな手紙が届いてね。

ツヨシ
なんだよ、これ――気味悪いな。

カシン
――あの事件の中心人物だったことをばらされたくなければ【革命軍】に手を貸すべし。

カシンが開いた半分折りの用紙には、パソコンで出力したであろう無機質な文字列が並んでいた。
ツヨシ
あの事件の中心人物?

ツヨシ
確かに、中心人物って言えば中心人物だけど――。

マドカ
これじゃまるで、ニコが事件に加担していたみたいに捉えられるわね。

カシン
そもそも、あの事件――犯人の動機などは、色々と考慮されて、世の中には発信されてませんよね。

ツヨシ
まぁ、だからこそニコはこうして普通に暮らしているわけだが。

例の【3D事件】は、ニコが属するナンバーズによるいじめが全ての発端だった。
ニコ
そう、私はごくごく当たり前だけど、普通の幸せを手に入れたの。

ニコ
旦那もいて子どもがいる。

ニコ
今日はこども園に預けてるから会わせられないけど、自分の子どもがどれだけ可愛いか分かる?

マドカ
さぁ、親になったことないから分からないなぁ。

ニコ
と、とにかく。

ニコ
私が例の事件の発端の一部だった――なんて旦那にバレたらどうなると思う?

ニコ
子どもだってそう。

ニコ
今はまだ小さいけど、じきに私のせいでいじめられるようになるかもしれない。

ニコ
――なんで?

ニコ
なんで私がこんな目に?

マドカ
――いじめたからだよ。

マドカ
あんた、親になったから分かるでしょう?

マドカ
あの子のために罪をおかした、あの子の親のこと。

マドカ
私はあの人達を称賛することはできないけどさ、決して間違った行動だったとは思わない。

マドカ
自分の子どもが――小さい頃から大きくなるまで大切に育てた子どもが、寄ってたかっていじめられて、その結果として命を絶つ。

マドカ
親からしたら許せたもんじゃない。

マドカ
だから、あんたはマシなほうだよ。

マドカ
あんな事件に巻き込まれておきながら――いいや、原因の一部となっていたくせに、こうして家庭を築いて普通に暮らしている。

マドカ
今のあんたを、あの子やあの子の両親が見たらどう思うだろうね?

ツヨシ
お、おい。

ツヨシ
マドカ、それくらいにしとけって。

高校時代からズバズバとものを言うタイプだったが、今回はやや言い過ぎだ。
ヒメ
とにかく、今の生活を弱みとして握ってぇ、どうやら【革命軍】はニコを引き込もうとしたわけね。

カシン
似たような理由で協力させられた方もいるようですし、随分と【革命軍】も姑息な手を使ってきますね。

ツヨシ
なんか、話がどんどんでかくなってきてるような気がするなぁ。

マドカ
それでニコ、あんたはどうしたの?

マドカ
やっぱり連中に力を貸したの?

ニコ
――それがポストに投函されていただけで、特に連絡先も書いてなかったし、連絡の取りようもなかったから、仕方なくイチカ達に連絡を取った。

ツヨシ
イチカ達ってことは、えーっと……。

ニコ
とりあえず元ナンバーズだった3人に連絡を取ったの。イチカが【革命軍】と連絡が取れるらしくて、だからイチカにとりあえず任せることにしたの。

ニコ
もしかすると、私にも連絡が来るかもしれないって話だったけだ、あれ以降は音沙汰ないし。

ニコ
ほら、テレビで報道されるくらい大きな事件に関与しているみたいだったから、私――怖くて。

カシン
あ、あの――ちょっと待ってください。

カシン
さっき、3人に連絡を取ったって言いましたよね?

カシン
この際、濁さずに言ってしまうと、レイとミナミは例の事件で亡くなってますし、ゴミは刑務所の中です。

カシン
となると、連絡を取るべき相手はイチカとシキしかいなかったはず。

カシン
なのに3人?

ニコ
あ、念のためにね――。

ニコ
あー、そっか。みんなは知らないか。

ニコ
1年頭のナンバーズは、1人だけメンバーが違ってたんだ。

ニコ
だから、念のためにその子にも連絡を取ったんだ。

ツヨシ
そ、それって誰だ?

ニコ
それは――。
