カタヅケ屋霊異記【完結】

神奈川県御子浜市

前日

カタヅケ屋本舗事務所

拳をぶつけ合い、中へ入る。

校内からは、盛大な水音が響き渡っていた。

図工室

壁に掛かった一枚の油絵

勢いよく流れる滝に続く川から、大きな音を立てて水が溢れていた。

水の溢れる絵の中で、子どもたちが駆け回っている様子が見える。

滝上から泳いでは岩肌を滑り、水遊びを楽しんでいた。

いまいち信用しきれない顔をしつつ、

渋谷は手を水の中に突き入れた。

周囲は、小鳥が飛び交う森の中に変わっていた。

少しだけショックを受ける。

子どもたちは声を上げながら、見る間に逃げていく。

しかしそのどれもが楽しそうに笑っていることから

渋谷はこれを、鬼ごっこの誘いと理解した。

森を抜ける風と、滝の音だけが肌に触れる。

心地いい木漏れ日と、安らぐ水と木の葉の匂いに

渋谷は不意に、肩の力が抜けるのを感じた。