そこに仕組まれたものを垣間見たからなのかもしれなかった。
一宮
(七星のさっきの【親順が連続で同じになることはあり得るのか】って発言、よくよく考えたら、あれは彼女なりのメッセージだったのかもしれない)
一宮
(あの発言をしたのは、2セット目の親順が決まった時点で、彼女の目には誰かが連続で同じ親順になっているのが見えたからなんじゃないか)
一宮
(それは果たして誰なのか)
一宮
(1セット目の親順は、七星が【1】番目、二ツ木が【2】番目、俺が【3】番目)
一宮
(そして、2セット目の開始時点で、俺には七星の親順が【3】番目だと見えている)
一宮
(これらのことから、七星と俺は前回のセットから同じ親順が続いているわけではないことが分かる)
一宮
(つまり、前回のセットと同様の親順が当てがわれているのは――【2】の二ツ木ということになる)
一宮
(これが偶然なのか、それとも意図的なものか。こればかりは、もう少しゲームを進めてサンプルを集めないことには分からない)
一宮
(ただ、仮に彼女の親順が【2】に固定され、彼女がその事実をあらかじめ知っているのだとすれば――)
一宮
(二ツ木は絶対に負けない)
一宮
(いずれ勝つことになる)
一宮
(いや、このゲームにおいて、自分の親順を知っているだけで、充分にアドバンテージを取ることができるだろう)
一宮
(このゲームに負けないようにするには、相手の親順で【太郎】を出さず、自分の親順で【太郎】を出すように徹底することだ)
一宮
(まず、自分の親順で必ず【太郎】を出すのだから、太郎出ずの負けは確定で回避できる)
一宮
(万が一、自分の親順で他の人間が【太郎】を出してくれれば、太郎が揃って勝つこともできる)
一宮
(このままだと、ずっと負けを回避しているだけに見えるかもしれないが、実はこのゲーム……ずっと負けないというのは、かなり強い戦略だ)
一宮
(ポイントとなるのは、1セットに一度しか【太郎】が出せず、一度出してしまったら、残りはそれ以外を出し続けなければならない点)
一宮
(なぜなら、このゲームが継続する条件となるパターンが決まっているからだ)
一宮
(まず、最初の親順で勝負が決するパターンとなったら、全員が【太郎】【太郎】【太郎】を出して、親順【1】が勝つパターンしかない)
一宮
(仮に二ツ木の親順が【2】で固定されていたとすると――)
二ツ木
それじゃ、2セット目だよ。
二ツ木
最初の親順――どちらを出すのかイメージして。
二ツ木
それじゃ、オープンするよ。
二ツ木
オープン。
一宮
(そう、二ツ木は【1】の親順じゃ絶対に【太郎】は出さない。下手をすれば【太郎】【太郎】【太郎】の形になってしまい、相手の勝ちになるから)
一宮
(七星は【1】で【太郎】を出さないようにしたみたいだけど、仮に出していたとしても、二ツ木が【太郎】を出さない限り、親順【1】で決着はつかない)
一宮
(そして、今は辛うじて回避できたけど、ここで恐れるべきは、俺と七星が【太郎】を出してしまうことだ)
一宮
(初っ端で俺と七星が【太郎】を出してしまうってことは、それ以降の親順【2】と【3】では、確定で【太郎以外】を出すことになる)
二ツ木
それじゃ、次の親順。
一宮
(幸いなことに、今の七星には二ツ木の親順が見えているはず)
一宮
(だから、ここでは【太郎】を出さない)
勝負は淡々と進み、ここでは二ツ木が【太郎】を出して、七星はさらに温存。
もはや【太郎】は出せない一宮は、強制的に【太郎以外】でやるしかない。
そして親順【3】番目にて七星が【太郎】を出し、すでに【太郎】を出してしまっていた二ツ木と一宮が【太郎以外】を出して、今回のセットも流れる。
一宮
(そう、最後まで決着がつかない形は、この形しかないんだ)
一宮
(全員【太郎以外】を出すと、その時の親順が負けになるんだから当然)
一宮
(必ず【太郎】が出ている必要がある)
一宮
(ここで無理に勝負しても裏目に出て終わるだろうし、このままじゃジリ貧になる)
一宮
(このままじゃまずい)
焦りを感じる一宮のことを鼓舞するように、彼女がすっと手を挙げた。
七星
ひとつ、私から提案がある。
七星
少しルールに手を加えないか?