ショップ
渚
(あー、このアクセサリー欲しい)
店員
これ限定なんですよ
店員
あと1品しかないんです
渚
限定!
渚
じゃあ、これちょうだい
店員
ありがとうございます
渚
…あ、待って
渚
また今度にする
店員
え?は、はぁ…そうですか
渚
(また、警察沙汰は困るわ…)
渚
(あー、早くしないと売り切れちゃう)
渚
(チッ、かな子の奴)
渚
(あれから連絡ないし)
トゥルルル…
渚
(この番号…誰?)
かな子
もしもし、かな子です
渚
えっ!かな子!?
渚
ちょっとあんた、遅いじゃない!
渚
早くお金が必要なの
渚
限定のアクセサリー、いますぐ買いたいの
渚
早くセレブ紹介して!
かな子
ふふふ
渚
何、笑ってんのよ
かな子
そんなすぐにはセレブ男性と結婚できないわ
渚
何言ってんの。私ほどの美貌があれば…
かな子
そのようね
かな子
渚さんのこと、調べさせてもらったわ
かな子
美人でスタイル抜群
かな子
モデル経験もあるのね
渚
あなた、分かっているじゃない
渚
私に落とせない男なんていないの
かな子
ふふふ
かな子
けど、バツ3ね
かな子
しかも、窃盗で前科がついたばかり
渚
な、何よ
渚
失礼ね
かな子
セレブ男性と結婚なんて、普通は無理よ
渚
あんた、何
渚
バカにするために電話してきたの
渚
どんな恋でも叶えるって噓だったのね
かな子
ふふふ
かな子
叶えられないなんて、言ってないわ
かな子
一般論を言っただけ
かな子
私の手にかかれば、どんな恋も叶えてあげる
渚
で、誰を紹介してくれるの?
かな子
だ・か・ら、このままじゃ無理
かな子
渚さん、背乗りしない?
渚
何、それ?
かな子
ふふふ
かな子
背乗りって言うのは
かな子
行方不明者の戸籍を乗っ取って、別人になることを言うの
渚
私が私じゃなくなるってこと?
かな子
そうよ
かな子
渚さん、ご両親からもご兄弟からも
かな子
絶縁されているわよね
渚
…………
かな子
渚さんが消えても不思議に思う人はいない
かな子
私ね
かな子
渚さんとちょうど同じ年ごろの女性の戸籍を持っているの
かな子
前科なし、結婚歴なし
渚
…………
かな子
あなたは今のままじゃ、平凡な男との結婚も無理
かな子
モデル事務所をクビになって、貯金も底をついたし
かな子
新作のアクセサリーどころか
かな子
おもちゃのアクセサリーも買えないでしょ
渚
…………
かな子
ねぇ、どうする?
渚
分かった、やる
かな子
戸籍の代金は3000万円
渚
3000万!?
かな子
けど、セレブ男性と結婚すれば
かな子
払えるわ
渚
分かったわ
かな子
あ、セレクトショップ同様、ツケはききませんよ
渚
ど、どうしてそれを…
かな子
私、何でもお見通しなの
かな子
ふふふ
渚の部屋
渚
(かな子にはああ言ったものの)
渚
(とんでもない犯罪に巻き込まれるんじゃ…)
渚
(私には確かに前科がある)
渚
(けど、ただの窃盗だし)
渚
(それにあのアクセサリーも洋服も、私にぴったりだった)
渚
(私が着て町を歩いたら、世間の人たちも喜ぶはず)
渚
(私はみんなのためにやっているの)
渚
(だから、窃盗といっても何も悪いことはしていない)
渚
(けど、また警察の世話になるのはイヤ…)
トゥルルル…
渚
(あっ、かな子から…?)
かな子
もしもし、渚さん
かな子
迷っているでしょ
渚
どうしてそれを…
かな子
ふふふ
かな子
言い忘れたけど
かな子
渚さんと同じ年ごろの女性の戸籍は限定1品
渚
限定!?
かな子
だからもう…手に入らないかも
かな子
20代女性の戸籍はレアなの
渚
欲しいっ!
渚
買った!
かな子
お買い上げ、ありがとうございます
かな子
ふふふ








