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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

引き続き、 冒険者ギルドの 応接スペース。

マキリ

…なんか、
すごくいい買い物
できたかも…!

買ったばかりの魔導具 『魔法鞄《マジカルバッグ》』 をニヤニヤ眺める。

その軽さは、まるで羽根のよう。 ずっしり重かった硬貨の山が 入っているとは思えない。

“まさに異世界”な アイテムだ!

この世界に来てからは 生きるだけで精一杯だったけど――

――ヴィッテ達のおかげで 風向き変わってきたかも…?

ステファニー

ちなみにマキリさん

マキリ

あ、はい

ステファニー

魔法鞄《マジカルバッグ》
自体を盗られてしまう――

ステファニー

――という
可能性もあることを
忘れないでくださいね

マキリ

そっか…確かに
そう、ですよね…

ステファニー

お連れの方が
『オークの集落』の
魔物を倒せるほどの実力者
のようですし、

ステファニー

おそらく心配ないとは
思いますが…

ステファニー

“念のためのご忠告”
ということで!

マキリ

ありがとうございます

マキリ

扱いには
気をつけますね!

ステファニー

そうそう、
扱いに注意が必要
と言えば、

ステファニー

マキリさんのメガネも
そうですね

マキリ

メガネ?

マキリ

まぁそりゃ
レンズが割れちゃえば
終わりですよねぇ

ステファニー

それも
そうなんですが…

ステファニー

…あなたの
メガネ、

ステファニー

売却不可能クラスの
レアアイテム
なんですよ?

マキリ

えッ?!

マキリ

でも、そんな
“レア”扱いされるような
もんじゃない
はずなんだけど……

高校生の時から1日のほとんどを 共に過ごしている 細フレームの度無しメガネ。

私にとっちゃ いわば“相棒”。

だけど、 どこにでもある量産品だし “レア”なわけない。

まぁ確かにお祖母ちゃんに 買ってもらったこともあって 私の宝物では あるんだけど…

ステファニー

【鑑定】スキルに
よりますと、

ステファニー

そのアイテムは
『神の翻訳眼鏡LV1』
という名称です

マキリ

カミ…?

ステファニー

“神様” の
“神” ですよ

ステファニー

神を冠したアイテム
というのは、それだけで
非常に珍しいものです

ステファニー

しかも
あなたのメガネの
効果は

ステファニー

『所持していると、
スキル【言語自動翻訳LV1】
使用可能』

ステファニー

――という
レア中のレアと言っても
おかしくないほど
珍しいものですね

マキリ

言語自動翻訳?

マキリ

それって
どんな――

――バタンッ!

豪快に部屋のドアを開く音が 私の声を遮った。

傷だらけの大男

おう!
居たのかッ!

ドカドカと入ってきたのは、 見覚えのある“大男”。

マキリ

あ゛ッ!!

思わず 叫んでしまう。

なぜなら彼は、つい数日前に 路上でスライ2号を叩き切った 張本人だったから。

あの時の恐ろしい形相が 頭をよぎり、同時に 嫌な汗が背中をつたう。

ステファニー

あらマキリさん、

ステファニー

ギルド長と
知り合いなんですか?

ステファニーが 不思議そうな顔をする。

ギルド長

誰かと
思えばよォ

ギルド長

街ン中でスライムに
襲われかけてた
嬢ちゃんじゃねェかッ!

ギルド長

元気そうで
よかったぜッ!

うっわ…私の顔、 しっかり 覚えられてるし…!

逃げ出したい気持ちを ぐっとこらえ、 引きつる笑顔で言葉を返す。

マキリ

その節は、
その…

マキリ

ありがとう
ございました…

ギルド長

いいってことよ、
ガハハハッ!!

“ギルド長”と呼ばれた大男の 笑い声は 異様に迫力たっぷりで、

私の耳に 響き渡りまくったのだった。

ギルド長は、 見た目通り強そうな 『ダガルガ』 という名前だった。

助けた恩を着せるでもなく、 竹を割ったように、真っすぐで いい人そうだったんだけど…

――威圧感が 凄すぎて!

マキリ

…………

彼の迫力に 気圧されそうになった私は、

余計なことをしゃべる前に、 早めに切り上げて 我が家に帰ることにした。

ヴィッテ

あ~ん…

ヴィッテ

…んふふっ♪♪

お行儀よく椅子に座った ヴィッテが、小さな口で 頬張っているのは、

ギルド帰りに私が買った “マリトッツォ”的なお菓子。

切れ込みを入れた柔らかい丸パンには、 これでもかと言わんばかりに 大量のクリームが詰め込んである。

私もさっき食べたところ、 クリームが柑橘風味で程よい甘さで、 胸やけしないおいしさだった。

マキリ

ヴィッテちゃん、
おいしい?

ヴィッテ

わるくないわっ♪

幸せそうに食べるヴィッテを 見るだけで、私まで自然と 笑顔になっちゃうねぇ…

…気に入ってるみたいだし、 そのうち似た感じの クリームたっぷり系おやつ 作ってみようかな!

スライ

……

ぴょんっと 近寄ってきたスライが 文字を表示した。

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>マキリ。

文字表示(スライ)

>冒険者ギルドでのアイテム売却に関して、情報共有を希望します。
・・・・・・・・・・

マキリ

あぁ、
そうだね…

マキリ

…結構いろいろ
あったから、

マキリ

話がちょっと
長くなるよ?

私はギルドで書いたメモを 片手に話し始めた。

時々挟まるスライの質問にも 答えつつ、 思い出せる限りの説明を終える。

おやつタイムを終えたヴィッテも 途中から 聞き役に合流していた。

マキリ

……と、まぁ
こんな感じ!

マキリ

無事にアイテムは
全部売れたし、

マキリ

ギルドのスタッフさんに
丁寧に説明してもらえて
分かったことも多かったし、

マキリ

行ってみて
よかったよ

マキリ

で、これが
アイテムを売った
代金ね!

ヴィッテ

あ、お金!

マキリ

魔法鞄《マジカルバッグ》を
買うのに一部
使っちゃったから、

マキリ

残ってるのは
これで全額だよ

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>この残金なら、スラピュータ試作には充分に事足りるでしょう。
・・・・・・・・・・

マキリ

そーだね!

そもそも私たちが お金を稼ぎたかったのは、 新たな魔導具『スラピュータ』を 作りたかったから。

いい感じのアイデアはまとまったけど、 肝心の開発資金が無くて 詰んでたんだよね…

…大金が手に入ったことで、 資金問題はクリアできた と言っていい。

マキリ

これも、
ヴィッテちゃんが
いっぱい魔物を倒して
くれたおかげだよ!

ヴィッテ

あれぐらい
たいしたことないわ

ヴィッテ

必要なら また
たおしてあげるね!

マキリ

あ、ありがと…

マキリ

…まぁ
そうなったら
相談するよ

ヴィッテの教育とか 倫理的な観点とか でいえば――

――幼児が 日常的に 魔物と戦うのは どうかと思う。

だけど、背に腹は 変えられないし…

…何よりヴィッテ本人が 戦うのを楽しんでいる 節がある。

私がどうこう言って いいのかも含め、 ちょっと悩みどころだな。

とはいえ、今日の遠征で 売ってないドロップアイテムが まだ大量にあるから、

当面はヴィッテに 討伐をお願いする必要は ないはずだけど!

マキリ

ってなわけで
資金問題は
解決したことだし、

マキリ

最短で、明日の
仕事帰りだったら

マキリ

魔導具工房にいって
スラピュータ作りの相談
しに行けるけど、

マキリ

それで
いいかな?

ヴィッテ

おっけーよ

ヴィッテ

はやいに
こしたことないもの!

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>ヴィテッロ様の決定に異存ありません。
・・・・・・・・・・

マキリ

じゃ、今日のうちに
いろいろ準備しておくね!

その夜のこと。

マキリ

…えっと、スライムが
中に隠れるわけだから、

マキリ

スラピュータには最低でも
“スライム1体分の容積がいる”
ってこと?

文字表示(スライ2号)

・・・・・・・・・・
>その通りです。

文字表示(スライ2号)

>我々スライムがいくら肉体を圧縮できるとはいえ、流石に限度があります。

文字表示(スライ2号)

>さらに核を隠さねばならぬ点をふまえれば、構造も工夫せねばなりません。
・・・・・・・・・・

マキリ

ってことは――

私はスライ2号と 相談しつつ作っているのは

“魔導具の発注用資料” となる書類。

マキリ

…なんか会社時代
みたいだなぁ~

うちの会社って 部分的に外注する機会が 割と多くて、

その時に発注用資料を 作りまくってた経験が すごく活きてる気がする…

マキリ

『情報は過不足なく
最小限に、なるべく短く
分かりやすく!』

マキリ

――って先輩に
言われまくってた頃
思い出すよ

ただし、この世界には パソコンもスマホも 資料作成ツールも 無いから、

全部手書きで書かなきゃ なんないのが、ちょっと まだ慣れてないけど。

で、ネット検索できない分を フォローしてくれてるのが 2号なんだ。

スライ2号

……

スライ本体《オリジナル》と違って 2号のほうから意見を あまり言ってはこないけど、

ずっと付きっきりで 私の質問になんでも細かく 答えてくれるのは すごく助かる。

さすが私の教育係担当を 自称するだけあるね!

マキリ

…よし、
こんなもんかな

マキリ

2号も
おつかれさん!

作り終えた資料を揃えて 魔法鞄《マジカルバッグ》に 入れておく。

スライ

……

ここで、ぴょこぴょこと 2階から降りてきたのは スライ。

マキリ

あれスライ?

マキリ

いつも通り
ヴィッテちゃんのそばに
いなくていいの?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>現在は分裂体が警護中ですので問題ありません。
・・・・・・・・・・

マキリ

そっか

マキリ

何か用事?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>マキリのアイテム『神の翻訳眼鏡LV1』および、スキル【言語自動翻訳LV1】に関して、検証を希望します。
・・・・・・・・・・

マキリ

あっ

マキリ

そういえば
ちゃんと確認して
なかったな…

冒険者ギルドのステファニーいわく、 私のメガネは『神の翻訳眼鏡LV1』という 売却不可能クラスなレアアイテムで、

『所持していると、 スキル【言語自動翻訳LV1】使用可能』 という効果を持つんだって。

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>『神の翻訳眼鏡LV1』のように、アイテムへ “神” との名称付与が可能な存在は、私が知る限り『神』以外は有り得ません。

文字表示(スライ)

>非常に貴重なアイテムだと考えられる事から、早い段階での検証を推奨します。
・・・・・・・・・・

マキリ

というか
そもそも、

マキリ

この世界には
普通に神様がいるの?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>私が知る限り、神の存在を裏付ける記述はヒトの世に数多く見られます。

文字表示(スライ)

>多くの記述に共通するのは「神はこの世界を管理する唯一の存在であり、『原初の神殿』にて世界の全てを見守り続けているとの内容です。

文字表示(スライ)

>少なくともヒトの多くは神の存在を信じており、否定するヒトは少ないと考えます。
・・・・・・・・・・

マキリ

神様の存在を
裏付ける記述…

マキリ

…そういや、この間買った
絵本『勇者と魔王の物語』の
お話は、

マキリ

神殿にいる神様が
この世界に
勇者を召喚するシーン
から始まってたな…!

あれはあくまで物語だから、 “存在を裏付ける記述”なんて 大層なもんじゃないけど。

――まぁ、魔術や魔物が 存在する世界だもの。

神様も存在したって おかしくはないよね!

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