一話完結

ねえねえ、知ってる？

2組の女子がね、廃ホテルに行って行方不明になったんだって

最上階から飛び降りたみたい

それ以来、その廃墟に幽霊が出るんだって

絶対それ、例の死んだ女子だよね…

《プルルルルル》

《ガタンッ》

《バン！！》

そこに、女が立っていた

学生服を着ている

よく見ると、腹部が潰れぽたぽたと液が漏れている

赤い何かが月明かりに照らされ、 ぬめぬめと光っていた。

女は何も言わない

下を向いている

女が何か言っている

前髪の隙間からわずかに見える唇が、少しずつ動いていた

と

だ

か

ず

ま

とだかずま

戸田和馬

＿＿俺の名前。

女は

ゆっくりと、ないはずの足を動かし、

こちらに向かってきた。

よかった

やっと、逃げてくれた。

彼は覚えていないだろうけど

私は、ずっと好きだった

彼が怖がってくれてよかった

＿＿ここはきっと、よくない場所だ。

私がそうだった

私は、誰かの視線を感じて、

腕を引かれて＿＿

今もそうだ

『それ』は今も、じっと私を見つめている。

彼だけは、私と同じになってほしくない。

もう来たら駄目だよ

和馬くん。