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読み終わりました!今回のエピソード、九条さんと桜さんの現場検証パートと、病院での幻夜さんたちのやり取りが交互に進む構成がすごく好きでした。特に九条さんの軽そうな見た目と、現場に向き合う真剣な眼差しのギャップが印象的で…「……よかった」って生き残った二人を思って漏らした一言にじんときました。白髪の男の存在も気になるし、波瑠くんが「日常はもう戻らない」って覚悟するラストも胸に響きました。続き、読みたいです!
ruruha
1,666
#中学校
#創作
ゆずき
57
#不気味
もな
118
雪の残る現場
夏雨がそぼ降る十六区の廃商店街。
だが、その一角だけは、完全に世界の理から切り離されていた。
崩れ落ちたアーケードの骨組み。
ひしゃげたトタンのシャッター。
砕け散ったアスファルト。
破片の隙間から突き出た鉄パイプ、地面を埋め尽くす無数の鉄釘に至るまで
視界のすべてが、分厚い白銀の氷に閉ざされている。
夏の生ぬるい雨は、氷の境界線に触れた瞬間 儚い白い霧へと変わって消えていく。
まるで、真夏の街の一角だけに、冬の静寂が置き去りにされたかのように。
ぎゅ、ぎゅ、と。
踏みしめられた凍れ雪が、湿った音を立てる。
謎の男
白一色の冷たい景色の中に、あまりにも場違いな男が立っていた。
謎の男
金髪。丁寧に整えられた髭。
そして、頭の上には星型のサングラス。
昔のギャル男をそのまま年齢だけ重ねさせたような派手な風貌
九条星矢。警察所属の地域級能力者である。
九条はしゃがみ込むと、凍りついた地面を指先で軽く叩いた。
コン、コン。
九条
桜
九条
少し離れた場所で記録用端末を操作していた女性 桜が振り返る。
桜
九条
桜
九条
九条は立ち上がり、星型サングラスの縁をくい、と指で押し上げる。
九条
桜
九条
九条が指差した先。
そこには、一本の太い鉄パイプが転がっていた。 その断面は、まるで鏡面のように美しい。
歪みもなく、擦り切れた痕跡もない。
まるで一瞬のうちに、一点だけを寸分違わず 裁断されたような異常な切断面だった。
桜が近寄り、膝を折る。
直接触れることはせず、冷徹な視線だけで断面を観察した。
桜
九条
九条が軽く手を叩く。
九条
桜
九条
九条は再びしゃがみ込み、その切断面を指差す。
九条
桜
九条
桜
九条
九条は周囲を見渡した。
九条
九条
九条
桜
九条
九条は立ち上がり、再び歩き出す。
九条
桜
九条
桜が顔を上げる。
桜
九条
九条は大袈裟に両手を広げた。
九条
桜
九条
九条
桜
九条
九条
桜
九条
桜
九条
九条は遠い目をした。
九条
桜
九条
桜
九条
へらへらと笑う九条。
一見すれば、ただのチャラいおっさんにしか見えない。
しかし、桜は知っている。
この男が、決して軽薄なだけの人間ではないことを。
旧華族・九条家。
由緒ある名門の出身でありながら、本人はその過去を微塵も気負っていない。
『昔の家柄とか、今の俺には関係ないっしょ。』
そう笑う裏で、ふとした瞬間に育ちの良さが滲み出る。 礼儀をわきまえ、困っている人間がいれば自然に手を差し伸べる。
そして何より、その戦闘能力は本物だった。
都市級能力者とも十分に渡り合える、正真正銘の実力者。
そんな九条が、現場の奥へと足を踏み入れたときだった。
桜
九条
桜
桜の指差す先を振り返る。
そこには、雪の上に散乱する無数の太釘があった。
何百本という単位の鉄の針が、鉄製のシャッターに 蜂の巣のような貫通痕を刻み、コンクリートの壁には 激しい肉弾戦の爪痕が残されている。
九条はそのうちの一本を拾い上げ、指先で器用に転がした。
九条
桜
九条
桜
桜が手元の資料と照合する。
桜
桜
九条
九条の眉がわずかに上がる。
九条
桜
九条
九条の目は、地面に残された足跡を追っていた。
激しく踏み込まれたコンクリート。その先に残された、痛々しい赤い血痕。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
桜は資料を確認する。
桜
九条
九条の眉が、わずかに跳ね上がった。
桜
九条
桜
九条
九条は無意識に周囲の凍てついた空間を見渡す。
そして桜は、さらに冷徹な事実を告げた。
桜
九条
桜
九条の動きがピタリと止まった。
九条
桜
九条
桜
九条
九条は現場の奥を静かに見据えた。
九条
桜
九条の表情から、軽さが少しだけ消える。
九条
桜
九条
無数の太釘、粉砕された鉄柱、抉れたコンクリート そして一面を支配する異常な氷。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
桜
九条
桜
九条
桜
桜
九条
九条はしばらく黙り込んだ。 そして、小さく呟く。
九条
その声は、不自然なほど静かだった。
氷に覆われた商店街を見つめ、九条はぽつりと零す。
九条
その一言には、先ほどまでの軽薄さが微塵もなかった。
だが、すぐにいつもの笑みを浮かべ、九条は肩をすくめる。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
九条
九条が目を瞬かせる。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
九条は苦笑混じりに頭を掻いた。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
九条
九条
桜
九条
桜
九条
桜
九条
九条の抗議の声が、白い商店街に虚しく響く。
桜は小さくため息をつき、端末に視線を戻した。
桜
九条
再び歩き出した九条の顔から、笑みが完全に消えていた。
九条
桜
九条
桜
九条は現場の中央へと視線を向けた。
そこには、原型をとどめないほど凍結粉砕された異形の残骸が転がっていた。
頭部も、胸部も、腹部も。全身が内部から凍りつき そして打ち砕かれている。
桜
桜の声がかすかに震える。
桜
九条
九条は静かに答えた。
この異形、死んでる
桜
桜
九条
九条は答えず、頭上に乗せていた星型のサングラスを外した。
金髪の隙間から覗く双眸には、いつものチャラけた男の面影はない。
幾多の修羅場をくぐり抜けてきた、冷静で 鋭い警察官としての目がそこにあった。
九条
桜
九条
九条
桜
九条
九条はサングラスを頭に戻した。 広大な氷の世界。無数の太釘。 二人の若者が残した泥臭い闘争の痕。
そして、それらすべてを無慈悲に上書きする異常な凍結。
九条の脳裏に、病院へ向かった幻夜の背中が浮かぶ。
十九歳と、二十歳。あまりにも若すぎる。
九条
桜
九条
桜
九条
桜
九条
桜
桜がごまかすように端末へ視線を戻す。 九条は首を傾げたが、深くは追わなかった。
九条
九条
氷に閉ざされた商店街を見渡し、九条は低く呟く。
九条
夏雨が降り続ける。 白い氷の世界に、冷たい雨音だけが響いていた。
九条星矢は、まだ知らない。
この時、幻夜が病院で出会っている二人の若者が この事件の核心にいる『白髪の男』を、すでにその目で見ていたことを。
そして、その証言が、彼らをさらに深い闇へと引きずり込んでいくことを。
九条
九条が両手を叩く。
九条
桜
九条
桜
桜
九条
桜
九条
九条は再び星型のサングラスを掛けた。
九条
いつもの軽い声。 しかし、その足取りはどこか重かった。
この氷の向こう側に何がいたのか。なぜ、二人の若者だけが生き残ったのか。
その答えを求めて、九条と桜は再び白銀の現場へと歩き出した。
scene2 病院にて
白く清潔な壁。消毒液のツンと鼻を刺す匂い。一定の間隔で並ぶ無機質な扉。
本来ならば静寂が支配しているはずの病棟の廊下に その一角だけ、異様な怒号が響き渡っていた。
謎のオッサン
田中
田中
謎のオッサン
田中
謎のオッサン
謎のオッサン
田中
謎のオッサン
田中
田中
謎のオッサン
田中
片や、現役の刑事。片や、探偵事務所の所長。
いい年をした大人の男二人が、病室の前で腕を組み 額を突き合わせて本気の口喧嘩を繰り広げていた。
病院の廊下という場所には、あまりにもそぐわない光景である。
ガサッ、と。 重い頭を持ち上げ、ベッドの上で俺 田中波瑠はゆっくりと目を開けた。
ハル
うるさい。めちゃくちゃ怒鳴り声が聞こえる。
僕の頭痛を加速させるために、わざとやっているのだろうか。
ギプスで固められた左手首を庇いながら 開け放たれた病室のドアへ視線を向けると
隣のベッドで上体を起こした真紀さんも 同じようにドアの外を凝視していた。
視線が交差する。 真紀さんは、何が起こっているのかまったく 理解できていないような顔をしていた。
冷や汗を浮かべながら、 (💦 ᐙ ) まさに、こんな顔である。
ハル
僕だって何が起きているのか分からない。
そんな顔をされても助け船は出せない。 二人で無言のまま顔を見合わせる。
数秒後。
看護師長
廊下の奥から、氷点下を大きく下回るような冷徹な声が響いた。
僕と真紀さんの視線が、同時にそちらへ向く。
そこに立っていたのは、先ほどまで見たこともないほど 恐ろしい顔をしている看護師長さんだった。
いや、正確には、顔が怖いわけではない。
その背後にまるで不動明王像でも 立っているかのような、凄まじい圧を感じる。
看護師長
二人
看護師長
二人
続きは一階のカフェテリアでやってくださ〜い?
二人
刑事と探偵。揃って背中を丸め、全力で頭を下げていた。
……普通に怒られている。
ハル
そして僕は思った。
あの看護師さん、絶対に逆らってはいけない人だ。
たぶん、田中さんより強い。そんな気がした。
数十分後、僕と真紀さんは病室からカフェテリアへ移動していた。
丸テーブルを囲むのは、田中さん、刑事さん、そして僕と真紀さんの四人だ。
謎のオッサン
刑事さんがバツの悪そうに頭を掻く。
さっきまで廊下で怒鳴り散らしていた男と同一人物とは思えない。
今は、ちゃんと刑事の顔をしていた。
僕が姿勢を正すと、真紀さんが隣から刑事さんをじっと見つめる。
真紀
田中
真紀
田中
田中さんが意外そうに眉をひそめた。
田中
幻夜
幻夜さんが即座に突っ込む。
田中
幻夜
田中
幻夜
息の合いすぎている二人のやり取りを見て、僕は恐る恐る手を挙げた。
ハル
幻夜
ハル
幻夜
ハル
僕にとって一番の恐怖はそこだった。
ただでさえ貧乏探偵事務所の助手なのだ。
破格の請求書を出されたら人生が詰む。
ハル
幻夜
幻夜さんは即答した。
幻夜
幻夜
ハル
僕は心底ホッとして胸を撫で下ろした。
ハル
幻夜
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜
ハル
思わず叫んでしまった。幻夜さんが笑う。
幻夜
ハル
すると、田中さんがガタリと椅子を引いて立ち上がった。
田中
幻夜
田中
田中さんはポケットから煙草の箱を取り出した。
田中
幻夜
田中
幻夜
田中さんは僕たちを一瞥すると、
田中
とだけ言い残し、カフェテリアを出て行った。
幻夜
幻夜さんが改めて僕たちに向き直る。先ほどまでの軽い雰囲気は消えていた。
幻夜
僕たちは順番に自分のプロフィールを伝えた。
ハル
ハル
真紀
真紀
元気よく挙手する真紀さん。幻夜さんはタブレットを操作しながら頷いた。
幻夜
真紀
真紀さんが腕を組む。
真紀
幻夜
真紀
幻夜
真紀
ハル
僕は頭を抱えた。
ハル
ハル
幻夜
幻夜さんはタブレットに何かを書き込んだ。
幻夜
ハル
幻夜
ハル
僕が顔を上げる。幻夜さんは真紀さんを見ていた。
幻夜
幻夜
ハル
幻夜
幻夜さんが真紀さんを指差す。
幻夜
真紀
ハル
僕は思わず叫んだ。幻夜さんは笑っている。
どうやら、この人は若者を守って戦場から遠ざけるタイプではないらしい。
無茶をするな、ではない。
無茶をしてもいい。その代わり、生きて帰ってこい。
そして、生き残ったなら、次はもっと強くなれ。そんな考え方なのだろう。
幻夜
ハル
ハル
幻夜
真紀
幻夜
真紀
幻夜
真紀
幻夜
真紀
ハル
僕の突っ込みに、真紀さんがケラケラと笑う。 幻夜さんはそんな僕たちを見て、ふっと息を吐いた。
幻夜
その言葉だけが、妙に重く響いた。
僕と真紀さんの表情が、自然と真面目になる。
あの廃商店街。学習する異形。
そして、すべてを一瞬で凍らせた白髪の男。
僕たちは本当に、紙一重のところで死線を越えてきた。
幻夜さんは、そんな僕たちをしばらく見つめていた。
そして――。
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜さんは真剣な顔をしていた。
幻夜
幻夜
ハル
『次に同じような奴が現れた時、また誰かに助けてもらえるとは限らない』
その言葉に、僕は白髪の男を思い出した。
あの圧倒的なチカラ。そして――。
『俺を見つけてみろ』
あの言葉。
幻夜
幻夜さんは、それだけ言った。
幻夜
そこで一度、言葉を切る。
幻夜
真紀さんがニッと笑った。
真紀
幻夜
真紀
幻夜
僕は苦笑した。
この人、思っていたよりずっと怖い人かもしれない。
でも、たぶん、悪い人ではない。
幻夜
幻夜さんがタブレットの画面を僕たちに向けた。
幻夜
幻夜
scene3 白髪の男
ハル
僕が尋ねると、幻夜さんは深く頷いた。
幻夜
真紀
真紀さんが眉をひそめる。
真紀
幻夜
幻夜さんが呟いた。
ハル
僕は言葉を続ける。
ハル
ハル
幻夜
幻夜さんの表情が険しくなる。
彼はタブレットを操作し、何枚かの顔写真を僕たちに見せた。
幻夜
ハル
幻夜
画面には、夏場だというのに真っ白に凍りついた道路や建物が映し出されていた。
ハル
幻夜
幻夜さんは写真を切り替えた。
幻夜
僕と真紀さんは、一枚ずつ慎重に確認していく。
しかし――。
ハル
真紀
二人揃って首を振る。
幻夜
幻夜さんは眉間を揉んだ。
幻夜
ハル
幻夜
幻夜さんは席を立ち、少し離れた場所へ歩いていった。
僕はその背中を見つめる。しばらくすると、幻夜さんが戻ってきた。
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜
真紀
幻夜
その言葉の意味を、僕は数分後に身をもって知ることになる。
謎の人
カフェテリアの静寂を切り裂く、やたらとハイテンションで華やかな声。
振り返った僕たちの視界に飛び込んできたのは、ビシッと警察の制服を着こなした、どう見ても立ち振る舞いが優雅な男性だった。
伊藤
ハル
伊藤
幻夜
伊藤
伊藤さんは僕たちの前の席に座ると、スケッチブックとペンを取り出した。
伊藤
ハル
伊藤
僕は目を閉じる。暗い雨。白い雪。そして、あの男。
ハル
伊藤
ハル
伊藤
ハル
伊藤
真紀さんが横から乗り出す。
真紀
ハル
真紀
ハル
真紀
ハル
真紀
伊藤さんはクスクス笑いながら、驚異的な速度でペンを走らせていく。さらさら、さらさらと、迷いのない線が紙の上に紡がれていく。
ハル
幻夜
幻夜さんが答える。
幻夜
ハル
幻夜
真紀
幻夜
幻夜さんが真顔で制する。
伊藤さんはペンを動かしながら楽しそうに言った。
伊藤
真紀
伊藤
ハル
伊藤
伊藤さんが嬉しそうに笑った。
伊藤
スケッチブックがこちらへ向けられる。
ハル
僕の息が止まった。透き通るような白髪。整った顔立ち。
そして、どこか世の中すべてを見下しているような、冷酷で浮世離れした瞳。
ハル
真紀さんの顔から、いつものおちゃらけた笑みが消えた。
真紀
幻夜さんがスケッチブックを受け取る。 しばらく、じっと似顔絵を見つめていた。
幻夜
ハル
幻夜
真紀
幻夜
幻夜さんはスケッチブックを閉じた。
幻夜
伊藤
幻夜
伊藤
伊藤さんが手を振りながら去っていく。その直後だった。
田中
カフェテリアの入り口から、くたびれた男が戻ってきた。
ハル・真紀・幻夜
僕と真紀さん、そして幻夜さんは同時に鼻を覆った。
ハル
田中
真紀
田中
ハル
田中さんは自分の袖を嗅いだ。
田中
幻夜さんが腹を抱えて笑う。
幻夜
田中
二人
僕と真紀さんの声が完璧にハモった。場の空気が、一気に緩む。
幻夜さんは苦笑しながら僕たちを見る。
幻夜
ハル
幻夜
幻夜さんは立ち上がる。
幻夜
二人
幻夜
真紀
幻夜
幻夜
真紀
真紀さんが固まった。
幻夜
幻夜さんは真紀さんを見た。
幻夜
真紀
幻夜
真紀
幻夜
真紀
真紀さんが親指を立てる。幻夜さんは苦笑した。
幻夜
そして僕を見る。
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜
ハル
幻夜
僕は思わず黙り込んだ。
幻夜
幻夜さんが指を立てる。
幻夜
ハル
幻夜
そう言って、幻夜さんは笑った。
幻夜
幻夜さんはカフェテリアを後にした。
僕はその背中を見送り、そして思った。
この人は、僕たちを『守るべき子供』とは見ていない。
いや、これから強くなれる存在だと思っているのかもしれない。
病院の敷地を出た齋藤幻夜は、一人で暗い空を見上げながら歩いていた。
手元には、伊藤が描いた一枚の似顔絵。
白髪の男。
ハルと真紀を絶望から救い、同時に、圧倒的な力で現場を支配した謎の人物。
そして、幻夜の脳裏に、あの現場での二人の証言が蘇る。
白髪の男は、戦いの最後に二人へ向かって言った。
『俺を見つけてみろ』
幻夜はポケットからスマートフォンを取り出し、短縮ダイヤルを押す。
数回の呼び出し音のあと、重厚な声がスピーカーから漏れた。 幻夜の上司だった。
幻夜
上司
幻夜
電話の向こうで、短い沈黙が走る。
幻夜
幻夜は歩きながら続けた。
幻夜
幻夜
上司
幻夜
上司
上司
上司
幻夜は足を止め、手元の似顔絵を見る。
幻夜
上司
幻夜
幻夜は一度、言葉を切った。
幻夜
上司
幻夜
幻夜は似顔絵の男を見つめた。
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
幻夜は小さく息を吐いた。
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜は苦笑した。
幻夜
上司
幻夜
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
幻夜は似顔絵を見つめる。
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜は少しだけ考えた。
幻夜
上司
幻夜
幻夜は笑った。
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
幻夜の声が少しだけ低くなる。
幻夜
上司
幻夜
幻夜は白髪の男の似顔絵を見た。
幻夜
その目が鋭くなる。
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
幻夜
上司
幻夜
上司
幻夜
上司
上司の声が少しだけ低くなる。
上司
幻夜
幻夜は即答した。
幻夜
電話が切れる。幻夜は一人、暗い空を見上げた。雨が降り始めていた。
幻夜
手の中の似顔絵を見つめる。
幻夜
答えは返ってこない。ただ、冷たい雨だけが降り続いていた。
一方、その頃。病院のカフェテリアでは
ハル
田中
ハル
田中
ハル
田中
ハル
田中
ハル
ハル
田中
真紀
二人の不毛な争いの間に、真紀さんがひょっこり顔を出した。
真紀
田中
真紀
田中
真紀
田中
田中さんは頭を抱え、深々とため息をついた。
田中
真紀
田中
田中さんが指を立てる。
田中
真紀
田中
ハル
元気よく喜ぶ真紀さんと、肩を落とす僕。十九歳と二十歳。
世間一般で見れば、立派な大人かもしれない。
でも、僕たちを見ている田中さんにとっては まだまだ守るべき子供なのだろう。
田中さんは煙草の臭いが残る手で、ぽんと僕たちの頭に手を置いた。
田中
ハル
田中
田中さんは真剣な顔をしていた。
田中
真紀さんがニッと笑う。
真紀
田中
真紀
田中
真紀
田中
真紀
田中
またしても病院中に怒号が響き渡る。
ハル
僕は苦笑しながら、自分のギプスで固定された左手首を見つめた。
白髪の男。あの圧倒的な力。
そして『俺を見つけてみろ』
あの言葉が、頭から離れない。
あれは、ただの捨て台詞じゃない。
あの男は、僕たちに自分を追わせようとしている。
まるで、次に会う時までに、もっと強くなってみろと。 そう言われたような気がした。
嫌な予感が胸の奥で渦巻いている。
僕たちの日常は、もう元には戻らないのかもしれない。
いや、もしかしたら、もう始まってしまったのだ。
あの白髪の男を追うことも。あの男が何者なのかを知ることも。
そして、いつか、もう一度あの男と対峙することも。
それでも。今は
田中
田中さんが戻ってきた。
田中
真紀
ハル
田中
ハル
僕は届いたばかりの温かいハンバーガーを一口頬張った。
騒がしくて、うるさくて、少しだけ馬鹿らしい。
でも、今は、この時間が愛おしかった。
この日常が、いつまでも続けばいい。 そんなことを、僕はぼんやりと思っていた。
――けれど。きっと、もう無理なのだろう。
あの白髪の男は言った。 『俺を見つけてみろ』
ハル
ハル
僕はそう思いながら、もう一度ハンバーガーにかじりついた。