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朝。 蒼は、自分の机に違和感を覚えた。 教科書の位置が、 昨日と微妙に違う。 誰かが、触った。
出席確認が始まる。 担任は、名簿を見て一瞬止まったあと、 何事もなかったように続けた。
担任
蒼は気づく。 自分の名前が、呼ばれていない。 でも―― 誰も、何も言わない。
休み時間。 蒼が立ち上がると、 クラスメイトが一斉に視線を逸らした。 見えているのに、 見ていないふり。 胸が、ひどく冷えた。
そのとき、 机の中に何かが入っていることに気づく。 小さな、ICカード。 裏に、文字。
「職員室・資料室 17:30」
放課後。 蒼は、職員室の奥へ忍び込んだ。 資料室の棚は、 不自然なほど新しい。 ファイルの背表紙には 年度ごとのクラス名。 一冊、抜き取る。
中身は、
生徒名簿
でも、ところどころ ページが切り取られている。 切り口は、同じ位置。 ――同じ作業を、毎年。 最後のページに、 手書きのメモがあった。
「問題生徒処理完了 記憶定着、異常なし」
蒼の手が、震えた。 背後で、足音。
担任
蒼
担任
突然、 頭の奥が、ズキンと痛んだ。 視界が、揺れる。 担任の声が、遠くなる。
担任
その一言で、 すべてがつながった。
次の瞬間、 資料室の電気が落ちる。 闇の中で、 聞き覚えのある声。
黒いノートの男子
蒼が目を開けると、 自分は廊下に倒れていた。 誰もいない。 でも、 腕には赤い線が浮かんでいる。 まるで――
消しかけの文字みたいに。
スマホが震える。
「第6話までに決めて 消えるか 壊すか」
蒼は、息をのんだ。 ――選択肢が、 残されている。