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朝。 蒼は、鏡の前に立っていた。 違和感は、はっきりしている。 ――自分の輪郭が、少し薄い。 触れると、 指先が遅れて返ってくる気がした。
教室に入る。 誰も、蒼を見ない。 椅子にぶつかっても、 謝る声はない。 黒板に書かれた座席表。 蒼の名前だけ、 最初からなかった。
昼休み。 蒼は旧校舎へ向かった。 もう、隠す意味はない。 中は静かだった。 でも、確かに「人の気配」がある。
一番奥の教室。 黒いノートの男子が、座っていた。
蒼
男子は、ゆっくり顔を上げる。
黒いノートの男子
声は、穏やかだった。
彼は話し始める。 自分は、問題児でも成績不良でもなかった ただ、「学校のやり方」に疑問を持った 旧校舎の記録を見つけてしまった そして―― 教師に呼び出された。 次の日から、 名前を呼ばれなくなった。
黒いノートの男子
中には、 消えた生徒の名前 年度 消えた理由 最後のページ。
「選ばれるのは、 “壊せそうな生徒”」
蒼
黒いノートの男子
胸が、痛んだ。 それは、 蒼自身のことだった。
そのとき、 校内放送が流れる。
「蒼くん、 職員室まで来てください」
黒いノートの男子
蒼
男子は、少しだけ笑った。
黒いノートの男子
彼はノートを破いた。 破られたページは、 風もないのに舞い上がる。
黒いノートの男子
廊下に、足音。 複数。 教師たちの声。 蒼の視界が、 一気に白くなる。
その瞬間、 黒ノートの男子が言った。
黒いノートの男子
黒いノートの男子
次の瞬間、 蒼は意識を失った。 目を覚ますと、 教室の自分の席に座っていた。 周りは、普通。 誰も騒がない。 でも、 自分の机の中に、 一枚の紙が入っている。
「最終処理日:成人式前日」
日付は、 明日だった。 蒼は、紙を握りしめた。 ――これが、 消える理由。