テラーノベル
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1月4日、木曜日
肌を刺すような冷気が頬を打つ
足元では霜がきらめき、吐く息は白く空へと溶けていった
こんな日は、暖かい温泉に入って身を溶かしたくなるものである──
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
駅前の噴水広場ですうあが大きく手を振った
厚手のマフラーを揺らし、菜乃羽が近付く
祥氷 菜乃羽
目慈悲 かいあ
かいあは肩をすくめ、はあっと白い息を吐く
目慈悲 かいあ
吹雨希 すうあ
松澤 美結
美結が目を輝かせた
四宮 アスカ
アスカは勢いよく頷き、自信満々に言う
四宮 アスカ
松澤 美結
松澤 美結
美結は呆れて笑った
目慈悲 かいあ
四宮 アスカ
かいあのツッコミに、アスカは首を傾げる
吹雨希 すうあ
松澤 美結
ナレ
今回の目的は温泉旅行
昼は温泉街を散策し、夜は温泉を楽しむ──
そんな目的のため、彼女らは朝から集まっている
四宮 アスカ
祥氷 菜乃羽
祥氷 菜乃羽
菜乃羽がため息を吐いて言う
四宮 アスカ
松澤 美結
松澤 美結
目慈悲 かいあ
美結とかいあが盛り上がっていると、すうあが時計を見て言う
吹雨希 すうあ
祥氷 菜乃羽
すうあの声に5人は駅構内へと足を踏み入れ、期待を胸に旅行へと向かうのだった
Ep.34 女子会水入らず
ガタンゴトン……
一定に刻まれる振動と共に、景色が移り変わる
白く霞んだ山並みがゆっくりと流れていく──
─そんな窓の外を、すうあはぼうっと眺めていた
ふいに、すうあの頬にじんわりと暖かいものが触れる
吹雨希 すうあ
目慈悲 かいあ
そう笑うかいあの手には缶のコーンスープ
吹雨希 すうあ
すうあはそう言いつつも、かいあから手渡されるそれを受け取った
目慈悲 かいあ
本気で悪いとは思っていなさそうな声でかいあは謝る
そんな心もとない謝罪を耳にしながら、すうあは缶を開けた
カシュッ
とうもろこしの香りと共に白い湯気が立ち上がる
すうあはその香りを一呼吸味わい、コーンスープを一口啜った
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
目慈悲 かいあ
向かいの席では、ふわりとココアの匂い
菜乃羽が缶をくるくると回しながら飲んでいる
祥氷 菜乃羽
コーンスープを飲む2人を見つめながら言う
目慈悲 かいあ
目慈悲 かいあ
そう言いながら、かいあは財布から小銭を取り出す
目慈悲 かいあ
松澤 美結
四宮 アスカ
目慈悲 かいあ
そう言い残し、かいあは再び席を立った
松澤 美結
松澤 美結
四宮 アスカ
美結がポツリと呟き、アスカは手を挙げて賛同する
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
すうあは微笑みながらコーンスープを啜った
祥氷 菜乃羽
菜乃羽は窓の外を眺めながら吐き捨てる
四宮 アスカ
四宮 アスカ
アスカが口を膨らませて反論する
祥氷 菜乃羽
だが、菜乃羽はまともに取り合う気は無いようだ
目慈悲 かいあ
かいあが席に戻ってくると、アスカは身を乗り出して言う
四宮 アスカ
目慈悲 かいあ
目慈悲 かいあ
目慈悲 かいあ
かいあはコーンスープをアスカに手渡す
四宮 アスカ
四宮 アスカ
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
祥氷 菜乃羽
その後も、缶の温もりと談笑に包まれながら列車は進む
やがて車内アナウンスが響いた
『次は──雨月温泉、雨月温泉です』
四宮 アスカ
祥氷 菜乃羽
車両のドアが開くと、ひんやりとした冬の空気が流れ込んできた
冷えた空気と、ほのかな硫黄の香りが鼻をくすぐった
5人はマフラーを整え、温泉街の駅ホームへと降り立った
賑やかな観光客の声と、ふわりと漂う硫黄の香りが温泉街を包んでいた
湯気を立てる湯呑み屋台や、軒先に吊るされた赤い暖簾が冬の風に揺れる
そんな通りを、すうあ達はゆったりと歩きながら土産物屋を巡っていた
四宮 アスカ
アスカが指差したのは、蒸籠からもくもくと湯気を上げる温泉まんじゅう
白くふっくらとした皮から、甘い香りが漂ってくる
四宮 アスカ
祥氷 菜乃羽
四宮 アスカ
松澤 美結
松澤 美結
四宮 アスカ
四宮 アスカ
目慈悲 かいあ
そのやり取りを背に、通りの向こうからすうあの声が響く
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
湯呑みや手ぬぐいが並ぶ棚の奥、色とりどりの入浴剤
そんな商品のある売り場の前で、すうあが手を振っていた
松澤 美結
目慈悲 かいあ
小袋を手に取り、香りを確かめながら微笑む
四宮 アスカ
祥氷 菜乃羽
四宮 アスカ
笑い声が土産物店の中に広がり、外から入り込む冷たい空気さえ、少し和らいだ気がした
こうして5人は、湯気と笑顔に包まれながら、土産探しを楽しみ続けた
カコーン──
ししおどしの澄んだ音が、冬の静けさに溶けていく
湯気が立ち込める露天風呂
ほのかな硫黄の香りと、湯面を撫でる小さな波の音…
それらが耳と鼻を優しくくすぐる
肩まで湯に沈めば、凍える空気さえも心地よい
祥氷 菜乃羽
目慈悲 かいあ
四宮 アスカ
松澤 美結
吹雨希 すうあ
5人の口から、同じように気の抜けた吐息がこぼれる
かいあが、湯を掬っては肩に掛けながら、ぽつりと呟いた
目慈悲 かいあ
菜乃羽は目を閉じ、肩の力を抜いたまま短く言う
祥氷 菜乃羽
祥氷 菜乃羽
松澤 美結
四宮 アスカ
吹雨希 すうあ
くすくすと笑い声が湯気に紛れて消えていく
耳を澄ませば、遠くで川がさらさらと音を立て、木々の梢を揺らす風がかすかに鳴っていた
その音を背景に、誰も急かさず、誰も急がない時間がゆるやかに流れていく──
ふいに、美結が湯面を見つめたまま小さく声を上げた
松澤 美結
湯煙の向こうから、白いものがふわりふわりと舞い落ちてきた
雪だ
指先に触れた瞬間、温もりに溶けて消える
祥氷 菜乃羽
菜乃羽は湯から肩を出し、空を見上げた
灰色の雲の切れ間から、月が淡く姿を覗かせていた
月明かりを浴びた雪は、まるで粉砂糖のように静かに舞い降り、湯気と混ざって淡い霞となって消えていく
目慈悲 かいあ
四宮 アスカ
松澤 美結
四宮 アスカ
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
四宮 アスカ
四宮 アスカ
普段は賑やかなアスカの声も、この時ばかりは穏やかだった
湯面には月と雪が映り、風が運ぶ硫黄の香りがふわりと鼻をくすぐる
ししおどしが、また静かに─
─カコーン、と響く
誰も言葉を重ねず、その音と湯の温もりに身を委ねる
温泉街の賑わいから離れたこの場所で、ただ雪と湯気と月に包まれる
5人はしばし、時を忘れたようにその景色を眺め続けた
コメント
4件
アスカひとりだけ修学旅行気分でしょ いい歳なのに……