TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
君消えし春のアケボノは

君消えし春のアケボノは

「君消えし春のアケボノは」のメインビジュアル

1

君消えし春のアケボノは

♥

130

2019年02月09日

シェアするシェアする
報告する

君消えし春のアケボノは

夜と共に消えていく

君は実に素直じゃないねと

泣いて笑うもいとをかし

夏菜

嘘…ですよね…?

朔の母

いいえ、本当よ

朔の母

あの子は死んだの…

夏菜

そんな…

朔が死んだ

まだ実感はわかないけれど

昨日の夜に息を引き取ったんだと

朔のお母さんが教えてくれた

朔の母

いつもお見舞い来てくれてたわよね

朔の母

きっと、朔も嬉しかったと思うわ

朔の母

ありがとう

夏菜

あー、いえいえ

夏菜

私が行きたくて行っていただけなので

違う…

朔は、 私がお見舞いに来ることを嫌がっていた

1ヶ月前に言われたあの言葉が

今も私の耳元で響いているから…

ー1ヶ月前ー

朔は、2ヶ月前から 重い病気にかかっている

もう長くはないようで

持って半年とのことだった

私は朔と仲が良かったし

好きだったから

ずっとお見舞いに行っていた

夏菜

朔ー!また来たよ!

なんで来るんだよ…

昨日、もう見舞いには来るなと言ったはずなのに

夏菜

そうだっけ?w

あのなぁ…!

夏菜

なんで?

なんでって言われても…

夏菜

らしくないなー

夏菜

昨日までは超喜んでくれてたじゃん!

昨日までは、な!

夏菜

だったら今日も…

あーもう!!

知らない方が良い事だってあるだろ!?!?

とにかく来るな!!

お前の顔なんか見たくねえから!!

夏菜

なっ、何それ…!!

夏菜

たしかに美人ではないけど、それはひどいでしょ!?

夏菜

わかったよ!!

夏菜

私も朔の顔なんて見たくないから、もう来ない!!

その日以来 私はお見舞いに行かなくなった

ううん、行けなかった

合わせる顔が無いと思ったから…

本当はずっと行きたかったのに

ごめんって言って会いたかったのに…

桜が咲いても、私はそれをしなかった

意地を張ってしまったんだ………

夏菜

あの…

朔の母

なあに?

夏菜

今日は本当にありがとうございました

夏菜

きっと、朔のお母さんが一番辛いはずなのに…

朔の母

あのね、辛さには順番なんて無いのよ

朔の母

たしかに今私は辛いけれど、夏菜ちゃんも辛いでしょう?

朔の母

だから、お互い支え合っていくのよ

朔の母

同じ痛みを知っている者として…

朔の母

朔の母

あ!

朔の母

そういえば、朔から手紙預かってたの!

夏菜

え!?

朔の母

夏菜ちゃんにって!

朔の母

朔は文章下手だけど、一生懸命書いたと思うから

朔の母

読んであげてね

夏菜

え!?あ、はい!

朔の母

それじゃあ、式で会いましょう

朔の母

じゃあね

夏菜

え、あ、さようなら

手紙、かぁ…

あの朔が一生懸命書いたんだと思うと

すぐに読みたくなって封を開けた

中から便箋を取り出して広げてみると

それはたしかに 朔の文字でいっぱいだった

夏菜

朔…

“夏菜へ”

“夏菜がこれを読んでるってことは、

俺はもういないんだろうな。”

“見舞いに来てくれるの

本当はすげー嬉しかった。”

“1ヶ月前のあの日はごめん。”

“実は、あの日の次の日から

結構きつい治療が始まる予定だったんだ。”

“どんどん弱っていく俺を

夏菜には絶対に見せたくなかった。”

“でも、あの言い方はないよな。”

“本当ごめん。”

“まあ、夏菜は可愛いから自信持て!w”

“俺はそろそろ死ぬと思う。”

“だから、死んだ奴に言われても

全然嬉しくないと思うんだけど

どうしても伝えたかった。”

“ずっと前から夏菜が好きだ!”

“今更で、しかも俺でごめん。”

“ヤベェ、そろそろ逝きそう。w”

“葬式だけはちゃんと来いよ?”

“最期にもう1回夏菜に会いたかった。”

“なんてな。”

“俺のことは思い出さなくていいから

とにかく前を向いて生きてくれ!”

“それだけで俺は嬉しいから。”

“なんて、やっぱ寂しいや。”

“たまには思い出してくれよ?w”

“でもちゃんと前見て進め。”

“今までごめん。”

“そしてありがとう。”

“じゃあな、夏菜。”

“朔より”

夏菜

こんなのっ!

夏菜

こんなのってないよ!!

夏菜

私もずっと好きだったのに…!!

夏菜

鈍感なんだよバカ!!

便箋の端には 日付と時間が書いてあった

日付は昨日で時間は夜…

つまり、朔は本当に死ぬ直前に

最期の力を振り絞って書いたのだ

朔…

夏菜

わかったよ…

夏菜

朔に言われた通り、前見て進む

夏菜

でも、たまには振り向いて

夏菜

朔を思い出すね

夏菜

夏菜

朔…

夏菜

ごめんね、ありがとう

夏菜

そして…

夏菜

夏菜

バイバイ…!

涙で湿った便箋を封筒にしまった

ー1日後ー

今から私は葬式に参列する

朔への想いは詩にして書き留めた

夏菜

朔は見てるのかなー?笑

君消えし春のアケボノは

夜と共に消えていく

君は実に素直じゃないねと

泣いて笑うもいとをかし

君は窓から桜を見たか?

儚く優美な夢芝居

もう一度だけ逢えたのならと

アケボノの空見て恋い焦がれ

それでも前見て進むべし

時折なら振り返り良し

ただただ君に感謝する

花手向ければ

なおをかし

舞い散る桜 風と共に

私の心 君と共に

好きが重なった今想う

前を向いて歩いていく

それが私の使命だと

夏菜

すっかり春だなー

暖かい春の木漏れ日の中

朔が見守ってくれている気がした

この作品はいかがでしたか?

130

コメント

0

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store