コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
……
新城貴恵の部屋のクローゼットと 聡太郎のテレビスタンドに通じる謎の穴
新居との実験や会話と合わせて 発見されたさまざまな事実は
僕の頭の中に入っていき 共に客室へと持ち帰ることになった
僕に用意された客室
もうすっかり見慣れてしまったが 未だに心は休まらない
立て続けに人が殺されて 謎は更に増えるばかりで
かなり消耗していた
だが、そうも言っていられないのだ
犯人を早く特定しないと また、人が殺されるかもしれない
今回の事件で身に染みた
今回の事件
加賀春樹
ずきり
脳が針に刺されたように痛んだ
瞬間的に記憶が呼び覚まされ また消えた
視界に 事件の真相が映されたような気がした
しかし 次の瞬間には消えていた
何も分からないはずなのに 強い後悔と罪悪感が残る
感覚だけが明瞭だった
加賀春樹
僕のせい……?
僕が解決できなかったから……
あれだけ躍起になって解決を謳っていたのに、家庭の問題まで干渉して、出しゃばっていたのに……
助けられなかった
新城賢太郎は本当に犯人なのか?
マインドコントロールがどうだとか言っていたが、無理にこじつけた憶測に過ぎない
何も分かっていないのに、犯人呼ばわりするようなことを言って、新城賢太郎が殺されでもしたらどうする?
殺されなくとも、事件後も心的消耗が残り人間不信に陥ってしまったらどうする?
全て
僕のせいだ
感情を止められなかった
僕のせいだ
後悔だけが残る
僕のせいだ
そんなつもりはなかった
僕のせいだ
記憶は混濁して
僕のせいだ
真相さえ見えなくなる
僕のせいだ
僕のせいだ 僕のせいだ
……
僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
……せ
突然、頭の中で声がした
殺せ
2人目も椅子に座っている その額にナイフを穿て
お前がするのはそれだけだ
ただ、憎悪を込めて
殺せ
嫌だ
人なんか殺したくない
殺せ
助けて
殺せ
やめろ
殺せ
やめろ!!
"どうされましたかな?"
加賀春樹
佐久間浩樹
目を開けると また突然、この男は現れていた
椅子の背に深くもたれて 腕を組んでこちらを見ていた
なぜだか 酷く面倒臭そうな顔をしていた
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
加賀春樹
加賀春樹
佐久間浩樹
加賀春樹
ふざけているのか
やはり この男だけはさっぱり素性が分からない
苛立つ気持ちを抑えて その目を凝視した
「おお、怖い」
佐久間浩樹は笑っていたが 急にその笑顔を引っ込めたかと思うと
厳しい口調でこう続けた
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
加賀春樹
僕は口を噤んだ
こんな事を他人に言ってどうする?
しかし それはずっと前から気にかかっていた
自分の頭の中で 「殺せ」と指示をする謎の声
これは誰なんだ?
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間浩樹
加賀春樹
佐久間浩樹
佐久間は椅子から立ち上がると 「失礼」と言って、ベッドに屈み込む
ベッドシーツを持ち上げ その下へと潜り込んでいく
音もなくするすると入ると 何も動かなくなった
僕は諦め半分に歩み寄り シーツをめくってみる
当然のように、そこには誰もいなかった
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
僕はバッグの中を漁る
「心は解かれている」
新城賢太郎のエッセイ書があった
いま明らかにするべきは マインドコントロールの詳細である
これを読んで 何かヒントを得られないだろうか
それに、自身の心を見つめるためにも 何か着想を得られれば良いのだが
僕はベッドに腰掛けて その本を読み始めた
「タイトルにあるように、心というものは解かれている。そして心は、気高く美しいものである……」
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
黙々と読み進めた
心の諸問題について 断章的に考察しているのが主な内容だ
一つ一つは興味深いものの エッセイという体裁と大衆向けの意識が強まっていて、学術的とは言い難かった
そして、本の中盤辺り
気になる文章を見つけた
「……さて、人が教育を受けて、教育者に習った知識及び技術を実践できるようになるには、脳が情報を正確にインプットし、正常に記憶が身体と連動して働かなければ機能しない。これが、アウトプットである」
「しかし、この知的生命体の素晴らしい学習能力にも限度がある。どれだけ優れた人間でも、教育者の言わんとすることを完璧に為す者は存在しない。一度に膨大な情報を吸収し、8割でも実行できる者は存在しない。それは人間が人間であるという点で、当然の理なのだ」
「私はその理を解きたいと思う。武道を志す弟子が、師匠の伝える妙技を即座に完璧に習得できる世界が訪ればどうなるだろうか。人間は、更に一歩踏み出した新たな人類として生まれ変わる。機械に乗っ取られると危惧する学者たちの胃痛をも無くすことができる」
「私の研究成果とは、心理分野に留まらない、人類の進化を促す革命的なものであると断言する。私という存在は、歴史上類を見ない最も優れた教育者ということになるだろう」
これは……
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
あの男は かなり名誉に拘りがあるようだ
不正をしてまで偉大な学者になりたい 不正でなくとも、世間に偉大さを伝えたい
もっと称賛されたい
一連の事実から 新城賢太郎の心が解ってきたのだ
神聖な雰囲気を漂わせているが その正体は……
……金と栄誉を愛する俗人
そうに過ぎなかった
ますます 例の仮説の信憑性が増した
動機も新城賢太郎の人間性と一致し 手段も新城賢太郎のみ可能だ
結局、最も気になっていた マインドコントロールの詳細を知ることはできなかった
だが、大きな収穫だった
真相に近付いたに違いない
僕は最後まで注意深く読み 特に参考になる箇所はないことを確認した
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
少し前まで迷っていたが ここまで証拠があれば決めてかかるべきだ
だが、まだ謎も多く残る……
加賀春樹
新城賢太郎が犯人であり 密室を作る必要性
疑いの目を退ける
自身が犯人だと疑われないこと
……ん?
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
時刻は午後2時のことだった
……
また、気晴らしに外にでも行こうか
様々な可能性が浮かび上がり ようやく焦点を絞れてきたのだ
その結果 犯人はもう解った
僕は肩の荷がおり廊下へと歩み出た
ホールへ向かおうとした
そこに
加賀春樹
金田涼子
金田涼子がいた
今朝、半狂乱になって伴侶の死を嘆いた 悲劇の女だった
声を掛けづらかったので 少し様子を見ていた
金田涼子
何やら金田夫妻の客室前で ふらふらとしている
かと思えば 奥の壁に向かって歩き出す
そして こちらを見ることもなく引き返す
…‥何か変だ
明らかに不審なその様子に 僕は声を掛けてみることにした
加賀春樹
加賀春樹
金田涼子
金田涼子
ゆっくりと顔を上げる
その瞬間
加賀春樹
金田涼子は こちらに背を向けて走り出した
廊下突き当たりの左側に折れる
陰に飲まれて姿は見えなくなった
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
僕は嫌な予感を振り切って追いかけた
そのタイミングで
新居宗介
加賀春樹
後ろから 新居に声を掛けられた
疲れているのか 少し目がうつろである
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
加賀春樹
口早に答えて走った
それほど距離もなく すぐに金田夫妻の客室前を通り過ぎた
視界の先には壁が待ち受け 左に折れる暗く狭い道が見えてくる
そう言えば わざわざ突き当たりに用はなかったから 何があるか分からなかった
ここはどこに繋がっているのだ?
片足で踏みとどまり すぐに曲がろうとする
しかし
加賀春樹
加賀春樹
新居宗介
少し遅れて新居もやって来た
僕はすぐに尋ねる
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
加賀春樹
新居宗介
簡単な備え付けの掃除機があった
他にも雑多な掃除用具や 補充品が置かれている
廊下側からは死角となっていたのは こういうことなのか
恐らく 2階にも同様のスペースがあるのだろう
この広い邸宅を 執事1人が掃除するのは大変だ
だから 客人には見えない簡素な作りで 掃除用具が設置されている
ここは そのために作られた空間なのだ
いや、それより
加賀春樹
加賀春樹
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
では、人体消失が起こったというのか?
佐久間浩樹も行っていたが 金田涼子は正式な客人で不審な点はなかった
この屋敷の構造に詳しいとも思えない
本当に何が起こったのだ?
僕は震えるしかなかった
新居宗介
新居宗介
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
新居宗介
加賀春樹
加賀春樹
新居宗介
新居宗介
加賀春樹
加賀春樹
犯人の正体 密室の必要性
この二つが解って 事件は大きく進展した
それでも謎は増え続けて 僕の頭は混乱を極めていた
今の消失はどう説明すればいいのだ?
事件が収束することはありえるのか?
加賀春樹はふらふらと歩き出した