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入学式の朝は思っていたよりも静かだった
さとみ
玄関でそう言うと母親が少し驚いた顔をした
母親
さとみ
それだけ言って俺は靴を履いた
鏡に映る制服姿の自分を 一瞬だけ確認してからドアを開ける
春の空気が少しだけ冷たかった
校門に近づくにつれ 同じ制服の生徒が増えていく
少し緊張した顔、ぎこちない歩き方
ここに居る全員が新入生だ
その中でふと周囲の視線が 自分に向けられていることに気づいた
さとみ
聞こえるか聞こえないかの小声で
生徒1
生徒1
生徒2
一瞬、自分の後ろを振り返りそうになった
でも、視線は確実に俺に向いている
莉犬
莉犬が手を振りながら走ってくる
莉犬
さとみ
莉犬は俺の顔を見るなりニヤッと笑った
莉犬
さとみ
莉犬
るぅとも少し遅れて到着する
るぅと
さとみ
るぅと
さとみ
顔が一気に熱くなる
でも、悪い気はしなかった
その頃
校舎の二階では二年生たちが 窓際に集まっていた
生徒3
ころん
ころんが首をかしげる
生徒3
その言葉にジェルが顔を上げる
ジェル
ななもりも窓の外を覗いた
ななもり
校門を通る新入生の列の中に ひときわ目立つ存在がいた
整った顔立ちに自然に流れる髪
姿勢も、どこか落ち着いている
ころん
ころん
ジェルは腕を組んだまま その姿をじっと見ていた
どこかで見たような気がする
でも、思い出せない
体育館へ向かう途中でも、噂は続いていた
生徒1
生徒2
俺はできるだけ聞こえないふりをして歩いた
莉犬
莉犬が小声で笑う
さとみ
体育館の中
椅子に座ると、前方には在校生の列が見えた
その中にジェル先輩がいる
遠くて顔ははっきりしない
でも、オレンジ色の髪だけは はっきりと分かった
胸が強く鳴る
さとみ
小さく呟いた声は隣の莉犬にしか届かなかった
式の途中
在校生代表の方を見ていたジェルは ふと視線を新入生の方へ向けた
噂のイケメンがどこにいるのか気になったからだ
そして目が止まる
一人の男子生徒が真っ直ぐ前を見て座っている
整った横顔
でも、それが中学の廊下で助けた 後輩だとは結びつかなかった
式が終わり人の流れが一斉に動き出す
体育館の出口へ向かう途中
俺とジェルは数メートルの距離ですれ違った
声をかけようとした
でも、喉が動かなかった
ジェルは友達と話しながら歩いていて 俺に気づく様子はない
そのまま人の波に飲まれていく
外に出ると桜の花びらが風に乗って舞っていた
莉犬
莉犬が大きく伸びをする
るぅと
るぅとが静かに言う
俺は体育館の扉を振り返る
さっきまであの人がいた場所
同じ空間にいたのに声一つ届かなかった
でも、今度は逃げない
中学の頃とは違う
そう思いながら 俺はゆっくりと校舎の方へ歩き出した