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朝からはなもり幼稚園では、園児達の賑やかな声が響いていた
今日は2月3日
節分の日だ
それに習い、幼稚園でも豆撒きが行われることとなっていた
Ep.37 みんなでオニをたおすんだ!
知花 凜叶
鏡狂 花
知花 凜音
鏡狂 花
子供達は張り切っているのか、豆を投げる予行演習をしていた
その様子は一箇所だけでなく、教室のあちこちから聞こえていた
清本 來
清本 來
清本 來
清本 來
四宮 祐希
得意げに胸を張る來に、祐希が目を輝かせる
古寺 将風
古寺 将風
将風も真剣な顔で呟いた
豆撒きに使うのは、園長のすうあが用意した個装された小袋入りの豆
散らかっても片付けやすく、何より食べるときも衛生的に安心できる
おまけに棚の隙間などで行方不明になる豆もなくなるという、一石三鳥なアイデアである
そして、子どもたちがいちばん楽しみにしている「鬼」を演じるのは──
悠穂だ
遠足のときにはバスを出し、クリスマスにはサンタ役になり……
先生がすうあ一人しかいないこの幼稚園では、彼はすっかり「お助けマン」として定着している
吹雨希 悠穂
額に手作りの角をつけ、虎柄のパンツ姿で登場した悠穂は、全力で子どもたちを追いかけ始めた
「きゃー!」「にげろー!」と園児たちが歓声を上げ、教室は一気にお祭り騒ぎになる
だが──
悠穂はつい熱が入りすぎてしまう悪い癖がある
本気で追いかけられた子の中には、「こわいー!」と涙目になってしまう子も出てきていた
吹雨希 すうあ
──それは、前日の夜のことだった
すうあは、節分で鬼役をする悠穂に、事前に釘を刺していた
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂
吹雨希 悠穂
吹雨希 悠穂
悠穂はすうあの忠告に、若干目を逸らしつつも、きちんと返事をしていた
──にもかかわらず
見事にフラグを回収しているこの状況に、すうあは笑顔を保ちながらも内心でため息をつく
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
すうあはすうっと息を吸い込み、声を出す
吹雨希 すうあ
パシッ
子どもとは明らかに違う鋭いフォームで、豆の小袋を悠穂に投げつける
吹雨希 悠穂
声を漏らした悠穂は、反射的に投げられた方向へ顔を向ける
そこには笑顔を浮かべつつも怒りのオーラをまとったすうあが立っていた
吹雨希 悠穂
吹雨希 悠穂
苦い顔ですうあから目を逸らす悠穂を見逃さず、すうあはすかさず声を張る
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
ニコニコとしながら叫ぶすうあ
園児達から見れば、自分達と共に戦う頼もしい先生だろう
だが、悠穂から見れば…
吹雨希 悠穂
吹雨希 悠穂
顔は笑っているはずなのに目は笑っていない
そんなすうあは、自分に害を加えようとする鬼だろう
四宮 祐希
清本 來
古寺 将風
貴島 乱兎
子どもたちは一斉に豆を投げ始める
四葉や姫恋は最初こそ不安げにしていたが、悠穂が「うわーっ!やられたー!」と大げさに倒れ込んでくれると、安心したように笑顔になり、勇気を出して次々と投げるようになった
凜叶と凜音は声をそろえて「おにはそと!」と投げ
四葉も小さな声ながらも精一杯手を伸ばして「……ふくはうち」と投げる
乱兎も無表情のまま淡々と投げつけ
姫恋は緊張に震えながらも「やぁっ!」と精一杯声を張り上げて小袋を放った
吹雨希 悠穂
豆の雨に打たれ、悠穂は声を張り上げながら後ずさり、最後には子どもたちの大歓声に包まれて教室の隅に倒れ込んでいくのだった
四宮 祐希
清本 來
知花 凜叶
知花 凜音
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
すうあはそう言うと床で寝そべっている悠穂に近付く
鏡狂 花
松澤 絋
すうあは子供達に応援されながら、悠穂の足を掴む
吹雨希 悠穂
するとそのまま悠穂を引き摺って教室から出ていく
吹雨希 悠穂
悠穂が教室の外へ引きずり出されたことで、教室の中から“鬼”の姿が消える
園児たちはほっと息をつきながらも、まだ興奮冷めやらぬ顔でわいわいと騒いでいる
四宮 祐希
松澤 絋
清本 來
そこにすうあが戻り、棚から残りの豆を取り出して言う
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
すうあは豆を子供達の年齢分お皿に入れ、一人ひとりに手渡す
子どもたちは皿を受け取ると、自分の席で指で一つひとつ数えながら口に運んだ
四宮 祐希
鏡狂 花
清本 來
松澤 絋
古寺 将風
数を数える声はどこか誇らしげで、小さな胸を張る姿が微笑ましい
知花 凜音
知花 凜叶
誇らしげに報告する年長組に、花が羨ましそうに目を丸くする
鏡狂 花
古寺 将風
鏡狂 花
その横で、祐希は皿を覗き込んで頭を傾げていた
四宮 祐希
松澤 絋
四宮 祐希
みんながくすくすと笑い、教室はさらに明るくなる
一方で、すうあと着替えを済ませた悠穂は教室中に散らばる小袋を拾っていた
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂
吹雨希 すうあ
すうあと悠穂は豆をビニール袋に詰め、園児達に向かって言う
吹雨希 すうあ
吹雨希 すうあ
その言葉に、子どもたちの目がさらに輝く
四宮 祐希
古寺 将風
鏡狂 花
松澤 絋
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂
知花 凜音
知花 凜叶
四宮 祐希
四宮 祐希
清本 來
鏡狂 花
いっぱいに小袋が入ったビニール袋を用意し、子供達
は1人1袋ずつ受け取る
大事に抱きしめるように持ちながら、子供達は得意げに顔を見合わせていた
鏡狂 花
清本 來
四宮 祐希
知花 凜叶
知花 凜音
四宮 祐希
四宮 祐希
口々に声を上げる子供達
少し離れたところでは姫恋がそっと袋を胸に抱きしめる
王城 姫恋
ポツリと呟かれたその言葉に、隣の四葉は一瞬きょとんとしたが、小さく頷く
守森 四葉
すうあは残った2つのビニール袋を横にいた悠穂に差し出す
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂
二人は顔を見合わせ、柔らかく笑みを交わした
こうしてはなもり幼稚園の節分行事は、鬼役の悠穂の熱演と、子どもたちの笑顔に包まれて賑やかに幕を閉じる
四宮 祐希
清本 來
古寺 将風
鏡狂 花
四宮 祐希
四宮 祐希
無邪気な掛け合いに教室中がまた笑いに包まれる
冬の園に響くその声は、雪の冷たさを忘れさせるほど明るく温かかった
ビニール袋のがさがさと、小さな笑い声が、廊下まで転がっていった
すうあはそんな様子を見守りながら、柔らかく微笑んだ
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂
ぼそりと呟く悠穂に、すうあは小さくため息をつく
吹雨希 すうあ
吹雨希 悠穂