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______春の風は、よく似ている。
あの人が泣いた日も、咲いた桜の色は今日と同じだった。
どんなに遠く離れていても、彼の沈黙は耳に届く。
…声にならない『さよなら』を、僕は何度も聴いた気がする。
フランス
レストランに入って少しした途端、フランスがそんな声を上げた。
やれやれ。どうやら、彼の頭の辞書には静かに座って注文するというものはないらしいです。
ドイツ
イタリア
イタリア
イギリス
…まぁ、もちろん誰も聞いちゃいなかったんですがね。
フランス、ドイツ、イタリア_______この面子での食事は久しぶりですね。
仕事の気晴らしとはいえ、こうして四人で顔を合わせるのは随分ぶりでした。
そしてその数刻後。
隣の机に、見慣れた顔が揃って席に座った。
フランス
イギリス
イギリス
くすっ、とフランスが笑った。
...まぁ、正直私は笑えないな、と思いながらジョークを飛ばしたんですが。
日本、中国、韓国_________あの三人は、仲が悪いことで有名。
少なくとも私達西洋組から見れば、あれは兄弟喧嘩の域をとうに越えているとわかるくらいには。
ですが...今日は、珍しく和やかに笑い合っているように見えた。
日本
中国
韓国
彼らは珍しく、仲の良い"兄弟"として会話を繰り広げていた。
ドイツ
イタリア
ドイツが呟き、イタリアが頷く。
私も、『まぁ、兄弟なんてそんなそんなものでしょう』とだけ言った。
___________そう、兄弟。
あの三人も、そう呼ばれている。
ですが...実際のところ彼らがどんな絆で結ばれているのか、誰にも分からない。
私が少し知っているのは、あの関係を壊した原因の一つが“私自身”であるということだけ。
その昔、私は利益のために当時の中国の立場を引きずり降ろした。
その結果...彼は笑わなくなってしまったんです。
……いや、正確には、“誰に対しても笑わなくなった”。
日本とは結構喋るし笑ってくれますが、兄弟への未練を結構抱えているらしく、酔った時なんかは特に
『ほんとは謝りたいんですよぉ...』
と語っていた。
韓国に関しては兄弟と他のアジアの方々以外とは全くと言っていいほど話さない。
イギリス
イタリア
ドイツ
イタリア
ドイツ
きゃっきゃ、と楽しそうに二人で騒ぎ始める。ふふ、微笑ましい。
…私達も、いつか_________
イギリス
フランス
イギリス
フランス
イギリス
フランス
全く、何考えてたんだか...。
暫くすると頼んでいた食事が全て届き、欧州の食事会はさらに盛り上がった。
イタリアが『pizzaなんね!!!』と叫んだり、
ドイツが真顔でコップをすべらせたり、
フランスが何故か全員の料理をつまみ食いしたり。
全く、騒がしいことこの上ない。
...まぁたまには悪くないですが。
そんな騒がしい中、フランスがとあることに気がついた。
フランス
イギリス
フランス
フランスが指さす方向は...隣の席の兄弟たち。
普段の私なら冷たくあしらいますが...
フランスがいつもより真面目な顔をしていた。
そのせいか、ドイツやイタリアまでもが彼らに注目した。
中国
中国
日本
日本
韓国
韓国
韓国
中国
韓国
…見てみると、笑顔で会話をしていた。
...中国は相変わらず真顔でしたが、言葉は弾んでいるように聞こえました。
それを見たドイツは、別に微笑ましい光景じゃないか、と不思議そうに首をかしげた。
…たしかに彼らは、まるで昔っからずっと仲の良さそうな兄弟のようだった。
_____でも、私からしたら...どこか、薄い笑顔に見えてしまった。
韓国
日本
韓国が持っていた食器を両手で置くと、日本の手もその場で止まった。
中国は、フォークを持ち直していましたが。
韓国は至極当然のことを語るように再び話し始める。
韓国
日本
あはは、懐かしいですね、と日韓が談笑する。
______ガシャン。
その瞬間、金属が机に落ちる音がした。
見てみれば、中国がフォークを落としていたようでした。
韓国
どうやらフォークを落としたのは中国のよう。
なにかあったのか、と顔を見てみても、彼は相変わらずの真顔でした。
やがて何かに気がついたのか、彼は笑い始めた。
中国
日本
_____私は思わず、息を呑んだ。
その笑顔の奥に、底の見えぬ、真っ暗な井戸のようなものが見えた気がしたから。
イギリス
ぽつり、と呟く。フランスも同意見だったのか、頷いた。
日本
中国
日本が喋っている途中...だというのに、それを中国が遮った。
中国
_________場の空気が凍った。
いつものエセ中国語が消え失せ、口は笑っているのに目は笑っていない。目は...すごく、暗い。
ふと、ぼんやりと思い出す。
今は、中国は感情を表に出すような人ではありませんが...
昔は、感情豊かだった。
私やフランスが日本や中国に初めて訪れた時は、まるでこんなふうではなかった。
それに、日本や韓国のことを信頼していた様子でしたし、仲も今より良好でした。
…普通に考えて、そんな彼が、あの喧嘩で裏切られて...
根に持っていない訳がないですよね...と感じた。
中国
韓国
中国
日本
中国
…そして、また当たり前のように笑い合う。
…寒気がした。
アレは最早、仲直りじゃない。
...誤魔化しだ。
耳を済ませれば、ドイツが『あれが...本気でキレたときの兄弟喧嘩...』と震え気味に呟いていた。
フランス
フランス
イギリス
フランス
イギリス
フランス
そんな会話をしながらも、心のどこかで_____その言葉の"意味"を考えていた。
フランス
イギリス
_______兄弟というのは、かくも壊れやすいものなのかもしれない。
けれど、それでも皆、同じ食卓につこうとする。
それが__________冬の終わり頃に雪を溶かす、わずかな『ヒカリ』に見えた。