哲汰の声がアパートの静寂を突き破った直後
ガチャッ――
突然、ドアが勢いよく開かれた。
そこに立っていたのは、鋭い目つきと酒の匂いを纏った、〇〇の“父親”。
父親
てめぇ……誰に向かって口きいてんだ、ガキ
そう唸るように言うと、父親は迷いなく、 哲汰に向かって拳を振り上げた その瞬間だった。
高尾颯斗
やめろ!!
颯斗が哲汰の前に立ちふさがった。 遅れて、直弥も凌太も和人も次々に飛び出し、 父親の腕を押さえるようにして止めに入った。
上村謙信
未成年に何してんだよ!!
長野凌太
警察呼ぶぞ!!
関哲汰
この家……もう終わってるって自覚、あんのか?
次々に声が上がる中、父親は暴れようとするも、多数の手に抑えられ動けない。
そのとき、〇〇は部屋の隅で立ち尽くしていた。
父の怒鳴り声。 自分をかばうように動いてくれた哲汰の姿。 押し殺してきた“助けて”という心の声が―― 今、胸を突き破るように溢れた。
〇〇
やめてッ!!
震える声だった。 でも、誰よりも大きく、誰よりも強かった。 部屋の全員の動きが止まった。
〇〇
……もう、誰にも手をあげないで……
〇〇は立ち上がった。
〇〇
私……私、もうこの家にいたくない。
私を傷つける人たちと、家族なんて呼ばれたくない
私を傷つける人たちと、家族なんて呼ばれたくない
その言葉に、父親は黙った。 呆然と、何かが崩れ落ちたような表情をしていた。
その隙に、玲が警察に連絡していた。 そして――到着した警察によって、父親はその場で取り押さえられた。
警察
……○○さんですね。安全のために、しばらく保護します
警察の人の言葉に、〇〇はゆっくりと頷いた。
玄関の外には、哲汰がいた。 ボロボロに膝をついていた○○の前に、そっと手を差し出す。
関哲汰
……帰ろう。俺たちのとこへ
その手を、○○は――震えながらも、しっかりと握った。 そしてその温かさに、声を上げて泣いた。
――今度こそ、 ○○の物語は「助けを呼べる」人生へと歩み出す。