恋愛短編集

今日は、高校の体育祭

砂ぼこりを舞上げながら

思いきり力を込めて

グラウンドの土を蹴る

みんなの声が遠く聞こえた

少し前を走る

蒼の背中が見えた

追いつけそうなのに

その背中は、遠くて…

あと半歩速ければ

勝てただろうか？

あと一歩速ければ

この手は君に

届くだろうか？

一番にゴールしたのは、蒼だった…

クラスメイト達の 応援が響く

その少しあとに

俺はゴール地点に たどり着いた

いつも、そう…

欲しいものは、すぐ近くにあるのに

手が届かない

苦い思いで、蒼の背中を見つめる

すると…

髪の長い女子生徒が、蒼にタオルを手渡した

蒼は笑顔で受けとる

二人のやり取りは、映画のワンシーンのように

美しく見えた

幼なじみの莉子が

俺にタオルを手渡す

こんなとき…

どんな顔で会えばいい？

莉子が

蒼と女子生徒を見た

そして…

莉子はニヤリと笑う

今、目の前に

その相手が居るのに…

追い付きたかった

一番になって

少しだけでも

気になるなんて、言えない

こぼれ落ちてしまいそうなこの気持ち

言葉になんか出来ない

だから…

莉子の顔が、 ほんのりと紅くなる

莉子が恥ずかしそうに うつ向く

急に照れくさくなって

莉子に背を向ける

次こそは一番になって

改めて告白するからな？