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死んだはずの男

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死んだはずの男

51 - はじめての人身売買

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2020年07月11日

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タクヤ

なぁ、シュウジ。これとかどうかな?

シュウジ

ん?なにか良いバイトでもあったのか?

タクヤ

夏休みでやる短期のバイトって考えると、良さそうなのあったよ

シュウジ

へぇ、どんな仕事なんだ?

タクヤ

えっと…倉庫番だってさ

シュウジ

倉庫番って…なにすんの?

タクヤ

倉庫を管理するって書いてあるけど…

シュウジ

管理って…俺たちにできるのか?

タクヤ

初心者歓迎って書いてあるし、大丈夫じゃない?

シュウジ

時給は?高いか?

タクヤ

めっちゃ高い

シュウジ

んー…他に良いのもねぇし、それでいっか

タクヤ

じゃあ決まりだね。一緒に応募しようよ

シュウジ

おっけー。いやぁ、ちゃんと見つかって良かったな

タクヤ

しかも時給が高いし、ラッキーだね

タクヤ

思った通り、仕事は楽だったね

シュウジ

あぁ、楽勝も楽勝よ

タクヤ

これで時給も高いんだから最高だなぁ

シュウジ

マジのマジで倉庫に居るだけでいいんだもんな

タクヤ

ちょっと不気味だけどね

シュウジ

マネキン会社の倉庫置き場ってんだから、しょーがねーよ

タクヤ

だけど実際にこうして時間を潰しているだけって飽きちゃうね

シュウジ

スマホゲーも一通り遊んだしなぁ

タクヤ

やろうと思えばまだやれるけど、ちょっと飽きちゃったしね

シュウジ

んじゃ、倉庫番は倉庫番らしく倉庫の中を見回らないとな!

タクヤ

え?ここに居るだけで良いって言われてるのに?

タクヤ

わざわざ中を見に行くの?

シュウジ

暇なんだからいいんじゃね?

シュウジ

お前だって気にはなるだろ?

タクヤ

んー…まぁ、そうだね。気にはなるよ

タクヤ

じゃあ、ちょっとだけ探検してみよっか

シュウジ

よっし、決まり!早速行こうぜ!

タクヤ

そういうことなら奥の方に行ってみよう

シュウジ

おっけー…あー…足の踏み場もねぇな

タクヤ

ちょっと積み上げ過ぎだね、これ

シュウジ

っと、傷付けたりしないようにしないとな

タクヤ

あはは、怒られるのは嫌だもんね

シュウジ

そーゆーこと。あー、しっかしどれだけ見てもマネキンしかねーな

タクヤ

マネキンの倉庫だし当たり前だよ

タクヤ

でもそれ以外のなにかがあってもいいのにね

シュウジ

これじゃあ結局退屈なままじゃねーか

タクヤ

でもこれで高い時給を貰えるんだからいいんじゃない?

シュウジ

そーだなぁ…忙しくて疲れるよりはマシかぁ

タクヤ

──ん?今なにか聞こえなかった?

シュウジ

ちょ、いきなりなにを言い出すんだよ

タクヤ

脅かしているとかじゃなくて、ほんとになにか聞こえたような…

シュウジ

ほ、ほぉ…ちょっと静かにしろよ

んぁっ…んぅ…んっ…はぁ…はぁ…

タクヤ

な、なにか聞こえる…うめき声…みたいな…吐息…みたいな

シュウジ

た、確かに聞こえるな…なんだ、これ

タクヤ

ね、ねぇ…ここって俺たちだけしか居ない筈だよね?

シュウジ

その筈だけど…こ、こえー!普通にこえーよこれ!

タクヤ

ほ、ほんとだね。これはマジで怖い…

シュウジ

とりあえず不気味だし戻ろうぜ

シュウジ

俺たちは座ってりゃいいんだからよ

タクヤ

それが仕事だもんね…うん…戻ろっか…

あっ、んぅ…あっ…ぐっ、うぅ…はぁ…はぁ…んんっ…

タクヤ

聞こえるって分かると耳に入ってきちゃう…

シュウジ

…だな…気になるっちゃ、気になるな…

タクヤ

ここまでちゃんと聞こえるってことは、現実なんじゃない?

シュウジ

なにが言いたいんだよ…

タクヤ

…本当に誰か居るんじゃないかな…?

シュウジ

居たとして…どうするんだよ?

タクヤ

か、確認するだけ…見に行ってみない?

シュウジ

うーん…気は進まないけど…行くかぁ

シュウジ

このままってのも歯切れが悪いし…

タクヤ

じゃあ…行くよ…怖いし、離れないようにね

シュウジ

分かってるよ。あぁ…情けねぇ…こんなにビビっちまうなんて…

タクヤ

怖いものは怖いんだから、仕方ないよ

タクヤ

…………

シュウジ

お、おい…これって…

女の子

んんんっ…!?んっ…んんぅ…!

タクヤ

女の子…だね…縛られてる…なんで…?

タクヤ

それに猿轡まで…

シュウジ

大分縄を噛んでるな…まぁ、当然か…

タクヤ

抜け出そうと暴れていたのかも…でもこれは…

シュウジ

動けるわけねぇよな…こんなふうに縛られていたら…

タクヤ

ねぇ、シュウジ。この子の腕になにか貼ってあるよ

シュウジ

ん…ほんとだ…なんだこれ…

タクヤ

あ、暴れないでね。危害は加えないから…えっと…

女の子

はぁ…はぁ…んっ…んんぅ…んんんんぅ…!

タクヤ

落ち着いて!落ち着いて…えっと、これはマネキンです、って書いてある

シュウジ

マネキン?これが?

タクヤ

どう見ても普通の女の子だよね

シュウジ

他にはなにか書いてないのか?

タクヤ

えっと、あとは…絶対に触るなって小さく書いてあるね

タクヤ

それと…腕の方に…ユズカ…って書いてある

シュウジ

この子の名前か?

シュウジ

いや、どっちにしろヤバそうな匂いしかしねぇな…

タクヤ

幸い大人しくしてくれてはいるけど…でもギリギリと猿轡を噛んじゃってるし…

シュウジ

涎もだらだらこぼれてるな…見るに堪えないぞ、これ…

タクヤ

でも現実だよ…なんでこんな子がここに…?

シュウジ

…マネキンだと書いてある以上、これはマネキンなんだろうな…

タクヤ

な、なにを言っているの…?

シュウジ

だってそうだろ?こんなの普通じゃないぜ。関わるべきじゃない

タクヤ

だけど…

シュウジ

俺が止めなきゃ、お前…この縄を解くだろ?

タクヤ

そりゃ…苦しそうだし…なんとかしたいじゃん…

シュウジ

止めた方が良い。絶対に、これは…良くないものだ

タクヤ

なんでそう思うのさ

シュウジ

直感だよ。やべー感じがプンプンしやがる

タクヤ

だけど…な、なら…電話で社長に聞いてみようよ!

シュウジ

ばっか!そんなことしたら俺たちがこれを見つけたのがバレるじゃねーか!

タクヤ

でも…このままっていうのは…後味悪いよ…

シュウジ

…ちっ…しょうがねーな…どうしても知りたいんだな?

タクヤ

う、うん…なんとかできるなら、なんとかしてあげたい

シュウジ

分かった。なら、社長に電話してみよう。…お前がしろよ…?

タクヤ

うん…それじゃあ…電話するよ

タクヤ

…………

社長

『もしもし』

タクヤ

あ、あの!先日お会いして、
今倉庫で倉庫番をしているアルバイトの者なのですが!

社長

『あぁ…倉庫番の。どうしたんだい、電話をしてくるだなんて』

タクヤ

実は聞きたいことがあって、お電話させて貰いました

社長

『聞きたいこと?なにかな?』

タクヤ

えっと、倉庫の奥で…その…縛られた女の子を見つけて…

社長

『…なるほど。事情は理解したよ』

タクヤ

理解したって…彼女は…いったいなんなんですか?

社長

『マネキンさ。そして私の大切な商品でもある』

社長

『だから君たちは絶対に触ってはいけないよ』

タクヤ

で、ですが…縛られて、猿轡まで…

社長

『そうだね…これだけじゃあ納得できるわけないか。ならこう言おうか』

社長

『それは八十村組が関わっているものだ、と言えば理解してくれるかな?』

タクヤ

八十村組!?そ、それって…

シュウジ

嘘だろ…とんでもねー名前が出てきたな…

タクヤ

わ、分かりました。そういうことなら…はい…

社長

『理解が早くて助かるよ。
君たちはあくまで、そこで大人しく倉庫番をしていてくれればいいんだ』

タクヤ

はい。そうします…すみませんでした

社長

『あぁ、それから…これはついでに頼みたいことなんだが』

社長

『そのマネキンは本当に大切なものなので、
逃げないよう見守っていてくれるかな?』

タクヤ

は、はい…

社長

『万が一、逃してしまったらどうなるか…賢い君たちなら分かるよね?』

タクヤ

わ、分かります!大丈夫です…!

社長

『それは良かった。それじゃあ、よろしく頼むよ』

タクヤ

…………

シュウジ

切れたか…しかしヤクザが出てくるとはな…

タクヤ

八十村組って…地元じゃ有名だもんね…

シュウジ

とんでもねーことに巻き込まれちまった上に、
誰にも相談できねーよ…こんなこと…

シュウジ

最悪家族に危害が…あぁ、クソ…なんでこんなことに…!

タクヤ

うまい話には裏があるってことなんだろうね…

シュウジ

裏があり過ぎんだろ!

ユズカ

ぎりぃっ…はぁ…はぁ…うっ、うぅ…んんんっ…!

タクヤ

ごめんよ…君を助けてあげることはできないみたいなんだ…

シュウジ

話し掛けるなよ。それはマネキンなんだぞ。マネキンだ、いいか?

タクヤ

う、うん…そうだね…マネキン…なんだよね…

ユズカ

ううっ、うぁ、あっ、ぎりっ、いっ、ぐぅぅ、うぁぁぁぁ!

タクヤ

ちょ、シュウジ!猿轡が!

シュウジ

噛み切ったってのか!?嘘だろ!?

ユズカ

はぁはぁ…やっ…と…はず…せた…はぁはぁ…んっ…

タクヤ

ちょ、これ、まずいんじゃないか…!

ユズカ

助けっ、てぇ…助けてぇ…!助けてよぉぉ!助けてぇぇぇぇ!

タクヤ

も、もう一度社長に相談した方が…

シュウジ

馬鹿野郎!そんなことしたらなにされるか分からないんだぞ!?

タクヤ

だけどこのままとか無理だよ!
どうしたらいいか分からないんだよ!?

ユズカ

ぐっ、あっ…あぁっ…こんなぁ…ものぉ…あっ、ああっ…!

タクヤ

シュウジ!あの子の腕が…

シュウジ

あ、脚が…不自然に曲がって…なに…を…しているんだ…?

タクヤ

逃げようとしているのかも!

タクヤ

マズいよ!逃がしちゃマズい!

シュウジ

くっそ!電話だ電話!社長に頼るしかねぇ!

ユズカ

あぁぁっ!あっ、ぐぅ…痛いッ、あぁっ…痛いぃ…んんぁ、あっ…はぁはぁ…

タクヤ

わ、分かった!電話する!電話するから!

シュウジ

早くしろ!マジでどうにかなっちまうぞ!?

タクヤ

…は、早く、早く出てよ…!

社長

『また君たちか。いったいどうしたというんだい?』

タクヤ

社長!あ、あの!あの女の…マネキンが急に暴れ出して

タクヤ

その…猿轡を噛み切って、その…その…!

社長

『ふむ。落ち着いて状況を説明してくれないかい?』

社長

『ゆっくりでいいから、話してごらん?』

タクヤ

は、はい…猿轡を噛み切ったと思ったら、
腕とか足が、変な方向に曲がって…

タクヤ

それで、痛がりながら強引に縛られた縄から抜け出そうとして…

タクヤ

か、関節とか外れちゃってそうな感じで…い、痛がりながら…

女の子

助けてえええぇぇ!ぐぅ、あっ、離してッ!出してよぉ!あっ、ああぁっ!

シュウジ

お、おい!これ、マジでヤバイかもしれねーよ!

社長

『どういう状況かは分かったよ』

社長

『私が今から向かうから、それまで待っていなさい』

タクヤ

は、はい!お願いします!

シュウジ

お、おい!結局どうなったんだよ!?

タクヤ

社長が来るって!それまで待ってろって!

シュウジ

待ってろって、そんな余裕あるのかよ、これ!

タクヤ

あっ…これ、本当に関節が外れて…あっ、あぁっ!

シュウジ

くそ、ロープが…腕や足が変な方向に曲がったせいで緩んで…

ユズカ

逃げて、やるぅ…逃げッ…るんだぁ…あっ、んぅ…ひぁ、あっ…

タクヤ

拘束が、ど、ど、ど、どうしたら…

シュウジ

どうしたもクソもないだろ!こうすんだよ!
逃がしたら俺たちが終わるんだぞ!?

タクヤ

ちょ、鉄パイプなんて持ってなにを…!?

ユズカ

いやっ…止めてっ、なにを…あっ、あっ、あっ、いやああああぁぁぁぁ!!!

タクヤ

シュウジ…お前…そんな…

シュウジ

はぁ…はぁ…やっと、やっと静かになった…

タクヤ

血が…シュウジ…それに…あっ、あぁっ…

シュウジ

しょうがねーだろ!?
こうしなきゃこいつは逃げて俺たちが終わるんだよ!

シュウジ

それに大丈夫だ。俺は大丈夫…

シュウジ

それにこれは、人形なんだ…そう、だよな…?

タクヤ

そ、それは…

シュウジ

人形なんだよ!これは人形だから、いいんだよ!
壊れた人形を、なんとかしただけなんだよ!

社長

──まさかと思ったが、これは…

タクヤ

社長!?

シュウジ

…社長

社長

タクヤくんと言ったか。よく頑張ったね

タクヤ

…あ、は、はい…

シュウジ

社長…すんません、俺──ぐっ!?

社長

君は少し黙っていてくれないかな?

タクヤ

シュウジ!?社長…どうして殴ったりなんか…

社長

一発で気絶とは、鍛え方が足りないね

タクヤ

あ、あの…社長、どうして…シュウジを縛って…それに…猿轡まで…

社長

大切な商品が壊れてしまったからね。
代わりにこれを持っていこうと思うんだ

タクヤ

え、か、代わりって…

社長

タクヤくん…これは人形だね?

タクヤ

え、それはシュウ──

社長

──これは人形だな?

タクヤ

…は、はい…人形、です…

社長

そうとも。人形さ

社長

さて、頑張ってくれたタクヤくんには、
バイト代を余分に出してあげなくてはな

社長

それと、このバイトは今日で終わりだ

社長

バイト代は後日振り込んでおくから、安心してくれ

タクヤ

は、はい…分かり…ました…

社長

それでは、私はこれで…

タクヤ

は、はい…ありがとう…ござい…ました…

タクヤ

(シュウジ…ごめん。こうするしかなかったんだ…)

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