唯夏
話を聞かせて、瀧
瀧
わかった
瀧
…2人も知ってる通り、俺の母さんはもう死んでる
瀧
あれは、唯夏と付き合う直前のことだった
瀧
母さんは…難病で、今の唯夏と同じようにもう少しで記憶がなくなると言われた…
瀧
ねぇ母さん
瀧
母さんはさ…本当に俺のこと忘れちゃうの?
蘭華
そうかもしれない
蘭華
でもね、瀧
蘭華
頑張って病気と闘って、絶対瀧のこと思い出して見せるからね
蘭華
だからお願い
蘭華
瀧が私の記憶を呼び戻して?
瀧
…うん!
瀧
約束ね
蘭華
うん、約束よ
だけどその約束を
果たすことは出来なかった
約束をして何ヶ月か経ったある日のこと
母さんの様子がおかしかった
瀧
母さん!
瀧
またきたよ
蘭華
…誰?
瀧
え…?
蘭華
誰よ、あんた
蘭華
クソガキは外ででも遊んでなさい
蘭華
こんなところに来ないで
瀧
母さん…?
瀧
何を言ってるの…?
蘭華
バカ言わないでちょうだい
蘭華
私がこんなクソガキの母親やるわけないでしょう
瀧
か、母さん、冗談やめてよ
蘭華
それは私のセリフよ
瀧
…母さん
瀧
まさか、ほんとに俺のこと忘れちゃったの?
蘭華
はぁ?
蘭華
私がボケてるって言いたいわけ?
瀧
ち、違うよ母さん!
蘭華
いい加減その呼び方をやめなさい!
瀧
え…でも、母さんは
蘭華
母さん母さんうるさいわよ!
蘭華
あ、もしかしてあんたがボケてるんじゃないの?
蘭華
…まぁいいわ
蘭華
そこまでへんな冗談言ってんなら
蘭華
私の奴隷にしてあげるわ
瀧
ど、奴隷…?
目の前にいる母さんが
別人のようになっていた
蘭華
遊んであげるわ、あなたで
瀧
な、何その冗談…
瀧
怖いよ…
蘭華
…なんでこんなに私の綺麗な肌に針がぶっ刺さってるの
蘭華
こんなの抜いちゃうわ
瀧
か、母さん!
瀧
それをとったらだめだよ‼︎
蘭華
なんでよ
蘭華
私をいじめるのがそんなに楽しいのね
瀧
い、いじめてなんか…
蘭華
私もあなたをおもちゃにして楽しませてもらうわよ、これから
蘭華
ふふ…ふふふふふふ!
そらからというもの、母さんは変貌した
俺のことをおもちゃだといって蹴ったり殴ったり振り回したり投げたり…
中でも酷かったのはおもちゃにされてから3日ほど経った時のこと
蘭華
さぁ!今日もたくさん遊びましょうね〜
瀧
…うぅ
瀧
ねぇ、早く元に戻ってよ…
蘭華
もし私が優しかったなら、今が元に戻った状態よ
蘭華
…というわけで!
蘭華
今から48時間は、ここで過ごしてね〜
瀧
え…?こ、ここって…
蘭華
ふふ
蘭華
倉庫よ
母さんは
ある日俺のことを二日間倉庫に閉じ込めようとしたのだ
瀧
ま、待ってよ母さん
瀧
やめて!48時間って二日間ってことでしょ⁈死んじゃうよ!
蘭華
別にいいわよ死んだって
蘭華
あんたみたいなクソガキ、腐るほどいるし。
蘭華
別にあんた1人が死んだところで何か変わることなんてないしね。
蘭華
しいと言うなら、おもちゃを探し直さなきゃ行けないことね。
瀧
…そんな
瀧
どうして…
蘭華
…人間は
蘭華
基本愚かな生き物よ。
蘭華
私だってそう
蘭華
いつかは死んでいく。
蘭華
死ぬときは…私の方が早いんじゃないかしらね
蘭華
…私だってそこまでバカじゃないからね。
蘭華
あの数の針を見て先が長いとは思えないのよ
蘭華
わかってるわよ
蘭華
あんたが病室であのとき針をとったらだめだっていったんでしょ
蘭華
私が…何か病気を持ってるってことでしょ。
瀧
…!
蘭華
…あぁもう
蘭華
あんたといると余計なことを喋っちゃいそうよ
蘭華
早く入りなさい!
瀧
い、嫌だ!
蘭華
抵抗しないで。
蘭華
いい子にしてたら出してあげるから
瀧
まって!
瀧
出る前に死んじゃうよ…‼︎
蘭華
二日間なら何も食べずに生きられるわよ
蘭華
あ、飲み物だけなら用意してあるから
蘭華
…じゃ、さよなら
その目は何故かとても哀しそうだった
瀧
それから母さんの命は長くなかった。
瀧
俺を倉庫から出して一週間経った頃に、死んでしまった
唯夏
そんな…
唯夏
なんで倉庫に閉じ込めるなんてことされて、監禁罪で逮捕してもらわなかったの?
塁斗
そうだよ
塁斗
通報すればよかったのに!
瀧
…俺は、何か意味があったと思ってるんだ
瀧
母さんのやってたことは…俺のためでもあったのかもしれないって、なんとなく思うんだ
塁斗
…は?
塁斗
監禁されて、暴力振られて…それのどこがお前のためなんだよ⁈
瀧
…母さんの、哀しそうな顔が忘れられないんだ
瀧
それに…母さんは、医者の人によると失っている記憶は1年間分。
瀧
医学的に見たら、母さんは俺の記憶もたくさん残っていたんだ
瀧
なのに…母さんは覚えてなかった
瀧
俺はさ…覚えてないフリだったんじゃないかと思ってる
塁斗
は?
塁斗
なんで覚えてフリなんてする必要があるんだよ
瀧
わからないけど…。
瀧
ちょっと、このまま話を聞いて。