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雪月湖~Setsugetsuko~

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雪月湖~Setsugetsuko~

4 - 雪月湖~Setsugetsuko~【ep.04】

♥

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2020年05月13日

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名護 迅

どうぞ、ちょっと狭いけど

真冬

(これの、どこが狭いの!?)

あたしが入ってもまだ広い。 驚いて、感心しながら、あたしはキョロキョロと辺りを見回していた。

すると名護くんは、 「ちょっと待っててください」 と一言言って、 どこかの部屋に行ってしまった。

真冬

(……名護くんって一体、
何人家族なんだろう)

そんな疑問が生まれた。 だが、ふと足下の靴箱を見て 不思議に思う。

数足しかない靴の中に 婦人靴が一つもないこと。

出てないだけかもしれないけれど……紳士靴も見当たらない。

なんとなく少し、不自然に思えた。

名護 迅

──どうかしましたか?

真冬

え!い、いえ…!

戻ってきた彼の手にはタオルがある。

真冬

(そっか、あっちは洗面所だったんだ)

真冬

ありが…

言いかけて、バサッ!と一瞬 視界が暗くなった。

あたしは、すぐにそれが タオルだと気づく。

でも名護くんの手は離れるどころか、あたしの髪を拭いていて……。

髪を覗き込まれて、 緊張で体が硬直する。

真冬

(こういうの自然にやっちゃうとこ、変わってないかも)

視線に耐えきれなくなったあたしは、バッ!とタオルを押さえた。

真冬

(…ぅ、息止めてた)

真冬

! も、もう大丈夫、
自分でやります…!

真冬

それより、あなたも拭いて

タオルを押さえる手に力がこもる。

名護 迅

そうですか?わかりました

真冬

(よかった、わかってくれた。
びっくりした…)

だが、ほぉっ、と安心したのも束の間。「あの」と呼びかけられる。

ジッと真っ直ぐに見つめられ、 心臓が跳ねた。

早く返事をしようとしたあまり、あたしの声は「ひゃいっ!?」と裏返った。

名護 迅

手、いいですか?

真冬

ぇ……ててて手っ!?

真冬

(手!?)

真冬

(“手"、“いいですか"って
一体どういう意味!?)

ドクドクと鼓動が速くなってく。

真冬

(ダメだよ名護くん…)

そんな切なそうな視線を向けられても。

名護 迅

手、

名護 迅

名護 迅

……離してもらっても

真冬

へ?

ハッと我に返る。

そこで、漸く意味を理解する。 押さえつけたのはタオル、 ではなく名護くんの手だった。

真冬

あg…!?ごめんなさい……

慌てて手を離すと、 プッと笑われてしまう。

恥ずかしすぎて、 穴があったら入りたい。 5年前に名護くんと 初めて会った時も、思ったっけ。

でも今回は、穴(湖)に入った(落ちた)結果が今なんだった……。

名護 迅

で、お姉さん家どこですか?

真冬

……え、家?

名護 迅

緊急だったので連れて来ましたけど、ちゃんと帰った方がいいですよ。

名護 迅

お姉さんさえ良ければ
明日ってことで

「今日は遅いですから、」 と言ってくれたけれど、素直に喜べない。

真冬

(これからどうしよう……)

この時代に3年前のあたしがいるとして、それだと帰れないし、

もしくは入れ替わってたりするのだろうか?

真冬

(うーん…確かめないと)

真冬

(……あ!)

そうだ。家に電話してみるのはどうだろうか。

真冬

ごめんなさい、
ちょっと待って!

慌ててポケットからスマートフォンを出す。

──が。

真冬

(電源点かない!?)

お金が入ってた鞄も落としちゃった。これじゃホテルにも泊まれない。

真冬

(もし、このまま帰れなかったら……)

真冬

(……違う、一番大事なのは、)

目の前に現れた彼だ。 ほんとは、ただ彼に 会いたかっただけなんだ。

この機会、無駄にしたくない。

真冬

あ、あの…!

何が正しい判断なのかなんて、 この際わからない。

だけど、──…。

名護 迅

? はい

あたしは思い切って、 床に正座した。 立ってる名護くんを見上げて。

真冬

(ええい、どうにでもなれ…っっ!!)

真冬

お…お願いしますっ!

名護くんは目を見開いて、 あたしを見た。

真冬

──何も聞かずに少しの間、
泊めてくださいっ…!

正気じゃないと思われるだろうか。

真冬

命まで助けてもらって、
ここまでしてもらって…

図々しいのは承知してます!

真冬

ええと…

その時のあたしは、 ただ必死だった。

真冬

代わりになんでもします…!
だから……!!

いつの間にか土下座の形に なってしまっていた。 こんなのされたら誰だって 普通驚くし、困ると思う。

真冬

(けど、こうするしか…)

名護 迅

なんでもする…か、

名護 迅

立っていた彼は少し考えるようにして、首の後ろに手を置いた。

と、思うと。

正座するあたしの目線に 合うように、しゃがむ彼。

バッチリと目が合い、ジッと至近距離で見つめられて。

今度はあたしが目を見開いた。 多分あたしは。

真冬

オ…ネガイシマス

息が止まるくらい、真っ赤な顔をしていたと思う。

名護 迅

名護 迅

…わかった

真冬

! 本当に!?

あっさりと承諾してくれたことに、驚き…。

名護 迅

一ヶ月はこっちに居るんで、それまでなら

あたしはパァっと顔を輝かせた。

それを見て彼は 「で、」と言葉を続ける。 次に出た言葉はあまりにも意外だった。

名護 迅

──“なんでもする"ん、だよね?

顔が強ばる。 「え…?」と小さく漏らすあたしには、お構いなしの様子。

それから、追い討ちを掛けるように。彼はあたしの横に手をつく。

──刹那、 視界から消えた彼は。

真冬

……!!!?!?

彼はあたしの耳元に、 ぴとり…と唇をつけていた。

ゾクゾクと全身が粟立つ感覚と熱が走る。

それよりも突然の出来事に、 あたしは口をパクパクさせた。

完全にパニック状態に陥っていた。

それを余所に当の本人は、ゆっくりとあたしから離れる。 恐ろしいほど冷静な表情だった。

─パチンッ。

真冬

イタッ!

名護 迅

“なんでもする"、なんて

名護 迅

二度と言わない方が身のためだよ。オネーサン。

真冬

っ!

デコピンをくらった額を押さえながら唖然と、あたしは考えた。

真冬

(こんな名護くん、
あたし知らないよ──!)

彼が変わったのだろうか。 もしくは、素からこうだったの…?

名護 迅

そういうワケで。
じゃ、宜しくお願いします

名護 迅

俺は名護 迅です。
17歳、高2

真冬

(じゅうな!?)

真冬

(そうだよ、未成年だよ…)

いろんな意味で大丈夫だろうか…不安しかない。

それに、どうして3年前にタイムスリップしてしまったのか。

真冬

(わからないと帰れない気がする…)

真冬

あたしは……

何にせよ、これから。

真冬

(雪月湖…雪月湖…)

真冬

つ、つき…!ツキコ!

名護くんに会えた理由を探す、ってことだけ。

名護 迅

そっか。よろしく、ツキコさん

真冬

う、うん

それだけは確かだったのだけど、 あたしはまだ、彼のことを 何もわかっていなかった。

episode.05…3年前の彼について

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