白雪姫みたいに
キスで姫を目覚めさせるように
俺も彼女をキスで起こせるかもしれない
なんて
ありもしないことを妄想する
でもそんなありもしない物語を
考えてしまうぐらい
君のことしか考えれてない
快晴の空の下1つの病院で静かに眠る彼女
薄いカーテンがヒラヒラと靡く
そよ風が俺と彼女に当たって
春だなって感じる
そんな周りのことを気にしても
彼女が目に映ると
そんなの全部無くなったかのように
機械の音がただ病室に響き渡るだけ
__ピッピッピッ...
本当に彼女がこのまま眠るだけで
彼女の笑顔も声もなにも見れなくなる
そう思うと辛くて仕方ない
もう一度だけでいいから
話したい
声が聞きたい
またあの笑顔がみたい
そんなこと考えるだけで泣きそうになる
気づけば
俺は彼女の命綱である
酸素マスクをとって
意識があるうちにやっておきたかった
キスをする
それは俺にとって切なく
そして儚く甘くて苦かった
それが俺をダメにした
これが最初で最後のキス
俺にとってはそれが毒になるほど
彼女のことに依存してしまう
もっと深く深く、深く...
ただ無我夢中になってた
我に返ったときには
機械の音が激しくなっていた
それに気づき、慌ててマスクを付け直す
廊下が慌ただしい
病室のドアが開いた瞬間
自分のやってしまったことに気づく
あ、あぁ...
看護師さんが急いであれこれやっても
だんだんと機械の音が
ゆっくりと鳴っていくだけ
もう後は死ぬのを待つだけの彼女だったけど
それを早めてしまったのは俺だ
叫びもせずただ涙を流すだけ
頭はもう真っ白
医者もきたけど、結果は予想通りだった
彼女の両親も慌ててきて
看護師さんもそっと病室を出た
次第に病室はなんの音もせず
ただ両親の泣き声が聞こえるだけ
俺の欲求を満たすだけのためにした
生きてる間での最初で最後のキスは
彼女の死を導いてしまったんだ
コメント
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やばい… まじで猛毒のキスじゃん… こんなの思いつかなかったよ… いけないことだけどダメって言えないよね…切ない…