生きていれば必ず
〝選択〟を迫られる
夜にお菓子を我慢すれば太らなかったとか
あと10分遅く起きてたら就職出来なかったとか
あの一言のせいでまともな別れが出来なかったとか
傘を持っていったから濡れなかったとか
あの時に声を掛けていればあの子は死ななかったとか
小さなものから大きなものまで
後悔から幸運まで
よりどりみどり
でも人って
幸運しか求めない
良いものが良いんだ
だからこんな物が出来てしまった
小春
鈴香
小春
小春
小春
鈴香
小春
小春
〝ノールート〟
小春の言う通り〝常に最善の選択を示してくれる〟スマホのような形の機械
最初は一刻一刻と容態の変わる患者さんの、手術での医療ミスを無くすために開発された
技術の発達と改良を重ねて一般化されて
半年に1度、国からアップデートが来るまでに普及した
鈴香
鈴香
小春
鈴香
鈴香
鈴香
小春
鈴香
鈴香
鈴香
小春
小春
小春
鈴香
[就寝を選択:明日遅刻する確率88%減少]
鈴香
小春
鈴香
〇月✕日
鈴香
小春
鈴香
鈴香
小春
小春
小春
鈴香
鈴香
とは言ったけれど
壊れたら壊れたままでいいと思ってしまった
機械に振り回されている人生は送りたくなかったし
なによりも
最善じゃなくてもそれなりの結果になるように自分で選択したかった
〇月△日
«遠出からの帰り道»
[右のみ…ちをせntぁく:安全なき宅ロ]
鈴香
鈴香
ノールートをバンバンと手のひらで強く叩いてみる
[右の道を選択:安全な帰宅路]
鈴香
鈴香
目の前には左右に分かれた道が
鈴香
鈴香
鈴香
[引き返しを選択:安全な帰宅路]
ノールートから選択がどんどん提示されていく
私はなるべくそれに逆らって歩いていくことにした
鈴香
鈴香
夕日の光が気持ちよくて
思わず歩く速度が遅くなる
この通りの人通りはそこそこで
旅行帰りだろうか
キャリーバッグを転がした家族が旅行の名残を楽しむ様に楽しそうに会話をしている
鈴香
鈴香
[5秒の立ち止まりを選択:生存]
鈴香
鈴香
試しに5秒立ち止まってみる
ガゴンガゴンガゴンガゴンッッ!!!!
2メートルほど先の上から
鉄パイプが十数本降ってきた
鈴香
ノールートが無きゃ確実に死んでた
鈴香
[左の路地を選択:安全な帰宅路]
鈴香
[直進を選択:安全な帰宅路]
鈴香
鈴香
道を真っ直ぐに目で追っていくと
先に大きな暗い山が見えた
鈴香
[直進を選択:安全な帰宅路]
鈴香
鈴香
日も落ち始めてきていて
だんだんと周囲が暗くなってくる
鈴香
駆け足でノールートの提案通りに進んでいく
やっぱり目的地はあの山の方向の様だった
[山の直進を選択:安全な帰宅路]
鈴香
鈴香
鈴香
来た道を戻ろうと振り向いたけれど
もう既に暗闇に包まれていた
今から戻るには遅すぎる
鈴香
鈴香
いちごミルク味の飴を口にポイッといれて
坂の急な山を登っていく
[13分直進を選択:安全な帰宅路]
鈴香
誰もいない山を一人黙々と登る
周りは虫や木のざわざわとした音で溢れていた
鈴香
[左の獣道を選択:帰宅時間の短縮]
鈴香
鈴香
鈴香
鈴香
いちごミルク味の飴も
もう全部溶けてなくなってしまった
[ポーン]
鈴香
[自宅に到着]
鈴香
鈴香
目の前には荒廃した墓地が広がっていた
墓石には苔やツタが絡まっていて
だいぶ手入れがされていない様だった
鈴香
ノールートをバンバンと叩いてみる
でも変わらず自宅に到着としか書かれていなかった
鈴香
鈴香
鈴香
[直進を選択:帰宅路への復帰]
鈴香
鈴香
信じられるものがノールートしかない
行くしかない…
ボロボロの気味の悪い墓地を抜けて直進していく
[ヵけaしをせんたぁku:fg」cvj]
鈴香
鈴香
鈴香
鈴香
鈴香
[駆け足を選択]
[死亡]
鈴香
足元が崩れる
ノールートに夢中で目の前の崖に気付かなかった
鈴香
機械に振り回されている人生は嫌だ?
私は結局機械に殺された
私は
信じるものの選択を
間違えた
コメント
2件
読みやすくて自然な展開と 徐々に侵食されていく恐怖、 ゾッッとする最後の言葉が 最高に良くて怖かったです…