ほのか
健斗さん、はいど〜ぞ
健斗
ありがとう、ほのかちゃん
ほのか
お肉いっぱい入れときました
ほのか
飲み物はいいですか?
健斗
じゃ、ウーロンハイを
ほのか
お水も貰いましょうね
ほのか
ちょっと飲み過ぎかもだし
健斗
うん、悪いね
健斗
(期待しないでコンパ来たけど)
健斗
(ほのかちゃん、凄く可愛いなぁ)
健斗
(同じ大学だし仲良くなりたい)
健斗
(今もみんなに料理を取り分けてる)
健斗
ほのかちゃんも食べなよ
ほのか
私はいいんですぅ
ほのか
どこ行ってもお母さんみたいな役回りになっちゃうんで
ほのか
健斗さん、兄弟は?
健斗
妹がいるよ
健斗
生意気だけど可愛い妹が
ほのか
いいお兄ちゃんなんですね?
華子
ううっ、気持ち悪い
ほのか
華子、大丈夫!?
華子
…ダメかも
ほのか
ちょっとトイレ行く?
女子が席を立った
次郎
お前、どっち?
健斗
えっ、どっちって…
次郎
俺はほのかちゃん!
次郎
あんな可愛い子そうは居ない
健斗
友達思いで性格も良さそうだしな
次郎
なんだよ!気に入ったのか?
健斗
…うん、可愛いかも
次郎
しゃーねーな!
次郎
お前は全然、女っ気ないし
次郎
ここは譲ってやるよ!
健斗
ちょっと頑張ろうかな
しかし、この時の俺は気づかなかった
この選択が──
地獄の始まりだと
健斗
(なんとか遊園地に誘ったけど)
健斗
(緊張するな…)
ほのか
あっ、お弁当作ってきたんで
健斗
えっ、ホント!?
ほのか
口に合うか分からないけど
健斗
家庭的なんだね?
ほのか
素敵な奥さんになるのが夢なんで
ほのか
あと、綺麗なお母さん
健斗
ほのかちゃんならなれるよ
ほのか
肝心の相手がいないけど
健斗
か、彼氏とかもいないの?
ほのか
居たら来てませんっ!
頬をプクっと膨らませて怒っている
健斗
(やっぱい可愛いなぁ)
ほのか
あっ、子どもが泣いてる
女の子
ううっ…
ほのか
どうしたの?迷子?
ほのか
お母さんとはぐれた?
女の子
ゔゔっ…うん!
ほのか
じゃ、お姉ちゃんが探してあげる!
ほのか
健斗さん、いい?
健斗
も、もちろん!
健斗
(分け隔てなく優しいんだ)
俺たちは女の子の母親を探した
ほのか
ごめんね、デートなのに
健斗
でも見つかって良かった
ほのか
うん、笑ってくれたから
ほのか
じゃ、今から乗り物いっぱい──
健斗
ほのかちゃん!
ほのか
ど、どうしたの?
健斗
俺と付き合って下さい!
ほのか
えっ!?
ほのか
健斗さん、本気?
健斗
初めて見た時から気になってて
健斗
ほのかちゃんと過ごすうち、なんて気配りができて優しいのかなって
健斗
大事にするから…
ほのか
──うん
健斗
えっ?
ほのか
こちらこそお願いします
健斗
やったぁああああー!
ほのか
ちょっと健斗さん!
健斗
俺にも彼女ができた!
健斗
こんなに可愛い彼女が!
こうして俺たちは付き合い始めた
ほのか
健斗、一緒に帰ろ!
ほのかが腕を組んでくる
健斗
うん、カフェでも行く?
ほのか
どこでもいいよ?
ほのか
ほのか、健斗と一緒ならどこでも幸せ
健斗
俺も幸せだよ
ほのか
ほんと?
ほのか
それなら──
ずっと一緒にいてね?
ほのか
ずーーーっと
健斗
もちろんだよ!
俺は本当に幸せだった
けれどその幸せは──
少しずつ狂い出した
ほのか
健斗、はいお弁当
健斗
えっ、作ってきてくれたの?
ほのか
うん、彼女だもん!
ほのか
はい、アーン!
健斗
いや、ここじゃ…
ほのか
どうして?
ほのかが微笑みながら首を傾げる
ほのか
ねぇ、どうして?
健斗
みんな見てるし
ほのか
ほのか、健斗の彼女だよね?
ほのか
彼女の手料理、食べれないの?
健斗
ううん、た、食べるよ
ほのか
はい、アーン!
健斗
ア、アーン
ほのか
どう?美味しい?
健斗
…うん、美味しいよ
健斗
お疲れ様でしたー!
健斗
バイト早く終わったから、ほのかとご飯でも行こうかな
俺はスマホでほのかにメールを──
健斗
な、なんだこれ!?
健斗
メール70件?
ほのか
『健斗、何してるの?』
ほのか
『健斗、会いたいなぁ』
ほのか
『健斗、返事ないよ?』
ほのか
『健斗、どうかしたの?』
ほのか
『健斗、どうして返事くれないの?』
ほのか
『健斗、私のことなんか好きじゃないんだ!』
俺は慌ててほのかに電話した
ほのか
健斗!なんで連絡くれないの!?
健斗
ちょっと急にバイト入って
ほのか
それなら先に言ってよ!
ほのか
もう、ほのかに興味ないのかと…
ほのか
ううっ、うう…
健斗
ご、ごめん!
健斗
俺が悪かった!
ほのか
ほのかのこと、好き?
健斗
…あっ、うん!大好きだよ
次郎
なんだよ、話って?
健斗
ほのかのことなんだけど…
次郎
ああ、悪ぃ
次郎
俺も知らなかったんだよ
健斗
えっ、なにを?
次郎
ほのかの友達の華子に聞いたんだ
次郎
ほのかは典型的な──
地雷女だって
健斗
地雷女?
次郎
お前もなんかヤバイから相談してきたんだろ?
健斗
うん…今もほら
俺は次郎にスマホを見せた
ほのか
『健斗、なにしてるの?』
ほのか
『健斗、どうして無視するの?』
ほのか
『健斗、私のこと嫌いになったんだ』
次郎
やばい、たった1分の間に?
健斗
電話も凄くて、バイトも辞めた
次郎
マジかよ
健斗
連絡しないとヒステリー起こすし
次郎
もう別れろよ
次郎
ここは男らしくきっぱりと
ほのか
大事な話ってなぁーに?
健斗
うん、けっこう混んでるな
健斗
(次郎からアドバイスされた)
健斗
(別れ話は2人っきりでするなと)
健斗
(2人だと何をするか分からないって…)
ほのか
健斗、なんか変だよ?
健斗
ほのか、俺と別れてくれ!
ほのか
えっ、ほのかのこと嫌いになったの?
健斗
度を越したメールとかヤキモチとか
健斗
もう限界なんだ!
ほのか
そんなっ…
ほのか
健斗が居なくなったら…ううっ
ほのかが涙を流す
健斗
(ここは流されちゃダメだ)
健斗
もう付き合えない!
ほのか
じゃ、私──
死ぬから
健斗
えっ、なんでカミソリを?
ほのか
手首切って死ぬから!
健斗
ちょっと落ち着けって!
健斗
みんな見てるだろ?
ほのか
そんなの関係ないよ
ほのか
別れるなら、今ここで死ぬ
健斗
(どうせハッタリだ)
健斗
(俺の気持ちを引き止めようとしてるだけで、死ぬ勇気なんかない)
健斗
か、勝手にしろよ
ほのか
──わかった
ほのかが手首を切った