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（午後・駅ビル──）
仮面の男
我が親愛なる宿敵は、 登場するや否や そんな台詞を投げてよこした。
咲
わたしはしばし硬直した。
しかしそうする間も エスカレーターは止まらない。 わたしと仮面の男の距離は、 1秒ごとに全自動で縮まり続ける。
だから──。
咲
咲
そうだ。とりあえず、 殺してから考えよう。 これまでもほとんどそんな感じだったのだ。
目の前に現れた頃には 向こうから殺そうとしてきている。 だから殺し返す。
考えることをいったん放棄して、 わたしは仮面の男に斬りかかった。
仮面の男
咲
咲
真下から相手の懐に飛び込み、 零距離から首を狙う。
仮面の男
ぎりぎり首をねじって避けられた。 ポジションはこちらが不利だった。
仕留め損なった以上、反撃が来る。 今度はわたしがそれを防ぐ番だ。
しかし──。
仮面の男
この絶好のチャンスで、 仮面の男は仕掛けてこなかった。 というか、未だに武器すら 取り出しておらず無手の状態だ。
咲
思わず激昂した。
そして考え直す。
咲
仮面の男
きっぱりと断言する我が宿敵。
仮面の男
咲
仮面の男
咲
ああ、うん。そういや言ったな。
これまで情報が 何も無いなかで喘いできた。 確かに情報は欲しい。 喉から手が出るほど。
咲
咲
（夜・自販機コーナー──）
『昨日』のファミレスでの出来事が 軽くトラウマになっていて、 どうしてもお店に入る気にはならなかった。
人通りの少ない自販機コーナーを見つけて わたしたちはそこに落ち着く。
飲み物は買わない。 仲良くベンチに腰掛けたりもしない。
お互いに相手の挙動に 目を光らせながら、 わたしたちの対話は始まった。
咲
咲
咲
咲
咲
咲
咲
よみがえる『昨日』の…前回のループの記憶。
あのときは直後に爆死したために 気にしてる余裕がなかったが、 よく考えたら仮面の男の行動には 一貫性がない。
仮面の男
口角泡を飛ばすわたしに対して、 仮面の男はむかつくほど 落ち着いた口調で応じる。
仮面の男
咲
仮面の男
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
仮面で隠された2つの目に力が籠り、 わたしに向けられている。
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
だから、と仮面の男は続けた。
仮面の男
仮面の男
わたしは鼻をふかした。
咲
咲
わたしは仮面の男の顔の前を手で払った。
拒絶だ。突きつけるノーの意思表示。
仮面の男
咲
咲
咲
仮面の男
咲
咲
言いながら、ポケットの中で キッチンナイフを握りしめた。
ああ、今すぐ殺してやりたい。
仮面の男はわたしがナイフを 手にしたことを知ってか知らずか、 まったく動じない。
仮面の男
仮面の男
わたしは話している間も、 一瞬も気を抜かずに こいつの挙動に目を光らせている。 ──だからわかる。
咲
わたしが攻撃すれば、 それは全力で防ぐだろう。 だけどそれは防御であって、 反撃に出ることはないと、気配でわかる。
くそ…。毒気が抜かれる。
咲
咲
とりあえず聞くだけ 話を聞いてみることにする。 情報はなによりも有用だ。
仮面の男
咲
仮面の男
仮面の男
咲
死ぬたびに減っていく あの数字のことだ。 仮面の男の数字は見たことがないが、 わたしは左腕に刻まれている。
残機という表現を 自分以外が口にするのを聞いて、 なんだか妙な気分になった。
仮面の男
仮面の男
仮面の男
咲
仮面の男
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
ループを歓迎している…。
それは、なるほど、異質だ。 少しもわかり合える気がしない。
咲
仮面の男
咲
寒気を押し殺して、わたしは続きを促した。
仮面の男
仮面の男
仮面の男
咲
咲
待てよ。 話に気を取られて すっかり頭から抜けていたが、 わたしは少し3人目のことを 知っているじゃないか。
仮面の男
仮面の男が、生唾を飲み込んだ、 ように見えた。
空気を通して伝わるこの緊張が、 3人目の『ヤバさ』を物語っている。
仮面の男
仮面の男
咲
仮面の男
体が引きちぎられていく感覚が、 呼び起こされてきた。
この日本では、 爆弾に興味があるというだけで 異常者のレッテルが貼られる ていうかあいつは実際に使ってる。 確実に異常者だ。
咲
咲
？？？
言いかけたわたしの言葉を遮るように、 奇妙な笑い声が耳孔に飛び込んできた。
すぐ近く。
咲
仮面の男
わたしと仮面の男が振り向く。
そこに小柄な女が立っていた。 メガネと三つ編みと白衣みたいな服。
爆弾魔
爆弾魔
目に映ったのは、歪みきった、 あるいは壊れきった笑顔と
その笑顔の主が投げる手りゅう弾。
私たちの足元に、 いくつもの手りゅう弾が転がった。
咲
逃げる間もなく、 視界が閃光で埋め尽くされる。
わたしは2度目の爆死を体験した。
コメント
10件
面白い🤣
お、面白すぎるｺﾛﾅﾆﾊﾟﾝﾁ( ∩'-' )=͟͟͞͞⊃
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