この作品はいかがでしたか?
660
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(誕生日の朝・自室──)
テレビ
咲
またいつもの朝である。しかも。
咲
2回連続の爆死だ。 人生で2回も爆死を経験する人は わたしだけだろう。
いや、仮面の男はもっと死んでるのか…。
咲
咲
咲
咲
わたしは頭を抱えた。
咲
咲
テレビ
テレビ
咲
咲
咲
しかも今度のヴィランは最初の仮面男に輪をかけてキャラが濃い。
なんといっても『爆弾魔』なのだ。
咲
わたしはため息をついてから、心を決めた。
咲
咲
散々殺してくれたけど、背に腹は代えられない。
それに、人間というのは集まれば派閥を形成する生き物だ。
派閥なんか作りたかないけど、 作られてしまうなら多数派に所属しておきたい。
これはリスク回避でもある。
例えば、わたしが仮面の男の誘いを断ることで、
逆に仮面の男が爆弾魔と手を組むとか、 そういう展開だけは絶対に避けたい。
敵になるくらいなら、ぶっ殺したい相手でも味方にしておきたい。
咲
生存戦略。 『判断と決断は早いほうがいい』。
むしろ判断と決断の早さは わたしの大きな武器といえる。
だからこそ仮面の男も圧倒することができるようになった。
わたしは動きやすい格好に着替えて、 ありったけの刃物を身体に帯びて、靴を履いて。
それから──
咲
咲
録画しておいたバラエティを観始めた。
(午後・自室──)
玄関のチャイムが鳴ったのは午後になってからだった。
概ね予想していた通りの時間帯だ。
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
咲
咲
こいつはわたしの家を知っているけど、 わたしはこいつの素顔すら知らないのだ。
だから今回は待つことにした。
咲
いつでも逃げられるように靴を履いてるし武器も帯びている。
咲
わたしは仮面の男を室内に招きいれた。
咲
ちょっと泣きたくなった。 こいつはこいつでお邪魔しますの一言も無いし。
わたしたちはローテーブルを挟んで床に座った。
咲
咲
咲
単刀直入に話を切り出す。 わたしたちに雑談は不要だ。
仮面の男
咲
咲
咲
仮面の男
咲
仮面の男
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
仮面の男
仮面の男
仮面の男
咲
マッドなだけの戦闘狂をイメージしてたのに、 そんな狡猾さまで持ち合わせているとは。
咲
仮面の男
仮面の男
咲
なるほど。正体を隠してわたしたちの戦いを特等席で観戦していた可能性もあるのか。
狡猾だけど、けっして臆病者ではない。 むしろ大胆で積極的ですらある。
咲
咲
咲
咲
咲
仮面の男
仮面の男がローテーブルに手をついた。
仮面の男
仮面の男
わたしは仮面の男の発言を一笑に付した。
咲
仮面の男
仮面の男
咲
咲
思わず吹き出してしまう。
咲
仮面の男
わたしは仮面の男のパーカーの胸倉を掴んで、引き寄せた。
咲
咲
咲
仮面の男
たしかに私とこいつの間には奇妙な信頼関係がある。わたしもそれは感じた。
だが、あらためて協力という形で申し出られると、無性に腹が立った。
わたしはこいつのせいで散々、ひどい目にあってきたのだ。
本当に、今すぐ殺してやりたい。 今のわたしにはそれができる。 今ならこんなやつ敵にもならない。
仮面の男は動じていないようだった。
仮面の男
仮面の男
咲
気持ち悪いことを言われて、 なんだか怒りが抜けていくのを感じた。
咲
仮面の男
仮面の男
咲
仮面の男
咲
仮面の男
仮面の男
仮面の男
仮面の男
思い返せばそんなこともあった。
仮面の男
仮面の男
仮面の男
咲
本当に、どの口で言いやがる。けど──
咲
咲
その理由はとてもシンプルで、とても良い。
わたしが自分の人生で初めて、能動的に、 努力をして積み重ねてきたものを評価されている。
純粋に、嬉しかった。
流されるままに人生を生きてきたわたしは、 初体験の、心の充足を感じていた。
それに、人間性うんぬん言われるよりは、 客観的な事実を根拠にしていて、よほど信じられる。
咲
咲
仮面の男
咲
わたしは胸倉を掴んだまま、 仮面の男を仮面越しに思いっきりぶん殴った。
仮面の男がひっくり返った。
仮面の男
咲
咲
ハンコやサインの代わりに鉄拳をお見舞いして、 我々のパートナーシップは締結された。
いつかまた殺し合うその日までは休戦だ。
──協力して、爆弾魔を、殺す。
コメント
7件
仮面の男のアイコン猫に見える
イケメンなんだろうなー(。 ͡° ͜ ʖ ͡° ) キラン☆