同僚のMさん
「ねぇ、私の泣きボクロ、左右どっちにある?」
同僚のMが、仕事中に話しかけてきた。
桜
「向かって右。」
同僚のMさん
「向かって右ってことは…左。鏡の中のあたしは、右にホクロがある…でしょ?」
桜
「まぁ、そうなるわね。」
営業が出払ってしまうと、事務所はMと2人きりになる。
ふんふん頷きながら、私は書類をめくる。
同僚のMさん
「ねぇ、聞いてるの? 鏡に映る顔、本当に自分の顔だってわかる?」
Mの声が、しだいに上ずる。
なんか、危ない雰囲気
私は黙ったまま、Mを見つめた。
同僚のMさん
「ずっと自分の顔だと思ってたのは、5歳の時、事故で死んだ双子の妹の顔だったの。ホクロが反対!」
何を言っているのだろう。 Mは私を手招きしている。
同僚のMさん
「ほら、見て。」
立ち上がり、ロッカーを開けた。
ロッカーへ取り付けられた鏡に、彼女が正面から向き合う。
背後から覗く私に、知らない女が微笑んだ。