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フォロー失礼します
この世界で、俺を認めてくれる人 なんて、最初からいなかったんだ。
じゃあ、俺が別の世界に 行けば良いんだ。
さよなら。
この世界では、二つの性に 分けられる。
男か女か。
男として生まれてくれば、男らしさを 求められ、女として生まれてくれば、 女らしさを求められる。
そこから少しでも外れれば、普通では ないと認識される。
中には嫌うやつもいる。
…俺は、嫌われる側の人間だった。
女として生まれた。
女として育てられた。
それが苦痛で仕方なかった。
でも、誰にもその苦痛を 言えなかった。
俺は六人兄弟の末っ子で、待望の 女の子だったらしい。
上の5人は全員男で、女である 俺を溺愛していた。
…もし、ここで俺が普通でないと 知ったら。
彼らはどれだけ失望するだろう。
それを考えただけで、怖かった。
…だけど、やっぱり無理だった。
女として扱われているのが 気持ち悪くて、長い髪も、ピンクや 水色で揃えられた俺の物も、スカート にも足を通したくなくて、とにかく 全部が嫌だった。
ある時、俺は勢いで言ってしまった。
「俺は女じゃない。男だ」と。
今考えれば、もっと考えてから 発言するべきだった。
急にそう伝えられたら、誰だって 驚くだろう。
兄たちの反応は様々だった。
「嘘だ...」
「......」
「赤ちゃんは男の子の体じゃないよ」
「違うよ、赤ちゃんは女の子だよ」
「どうして?」
誰も、素直に受け入れては くれなかった。
次の日から、兄たちの俺に対する目が 変わった。
長男の紫にいは俺の名前を呼ばなく なり、次男の桃にいと五男の黄にいは 俺を避けるようになり、三男の 青にいと四男の橙にいは「赤ちゃんは女の子だよ」とずっと教えてくる ようになった。
それでも、俺は女であることを どうしても認められなかった。
スカートにも足を通さず、髪は勝手に 短くした。
そんな俺を見て、兄たちはついに無視 するようになった。
「普通に生きてよ...赤...ちゃん...」
唯一、紫にいに言われた言葉。
今でも忘れない。
俺が女として生きていけないことが そんなに嫌…?
女として生まれてきたら、生涯女の まま生きていかないといけないの…?
女が男だと自覚することが、普通では ないの…?
誰が、普通なんて決めたの…?
何も、わからなくなった。
普通とは何かも、 俺が女であることも、 この世界のルールも、 …この世界で生きていく理由も。
学校でもいじめられる。
「女なくせに」
「きもいからこっち来んな」
そんな言葉は当たり前で、時には 暴力を受けた。
先生は見て見ぬ振りをし、助けよう ともしなかった。
家に帰っても、学校に行っても 居場所などない。
誰のことも、信用できない。
誰も俺という存在を認めてくれない 世界で、生きていく理由なんて なかった。
この体ごと消してしまえば、きっと 幸せになれる。
この世界で俺を認めてくれる人 なんて、最初からいなかったんだ。
じゃあ、俺が別の世界に行けば 良いんだ。
…来世では、男として 生きられますように。
さよなら。