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6人兄弟

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6人兄弟

6 - 次男の罪

♥

2,364

2021年08月25日

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罪って言葉は
曖昧だと思うんだ

 

だってそうでしょ?

 

時間が歪めば
そんなもの、簡単に
ひっくり返ってしまう

 

つまりは
結局自分で自分の
罪の重さを決めること
なんてできやしない

 

それに、自分で
決めるなんてこと、
ぼくが許さない

 

...脱線したね

 

だからもしも、
罪だと思うことがあっても

 

その後に起きた不幸を
『報い』なんて
思っちゃいけない

𝑅.

...っ...はっ...!

逃げるように部屋に飛び込み

乱暴にドアを閉める

𝑅.

...はぁっ...はぁっ...!

扉に寄りかかったまま

ずるずる、と床にへたり込む

脳裏に再生される弟の言葉

𝑅.

...つ、み...?

弟がなんのことを『罪』と 呼んでいるのかは予想がついた

でも

𝑅.

でもでもでもっ...!

ころちゃんに罪があるとしたら

俺の罪はどれだけあるの?

頭を掻きむしる

ああ、ダメだ

もう逃げないって決めたはずなのに

また、逃げてるじゃん

𝑅.

俺、なにやってんだよ...

すぅっ、と息を吸って

壁に手をつけながら

ゆっくり立ち上がる

やっとの思いで椅子に座ると

ノックが部屋に響いた

𝑅.

はーい...?

誰だろう

𝑁.

莉犬くーん?

𝑁.

入って大丈夫...?

咄嗟に机の上の写真立てを裏返す

𝑅.

うん、いいよ〜?

𝑁.

失礼しまーす...

𝑅.

どしたの?

𝑁.

いや、なんかおっきい
音したから大丈夫かなって

𝑅.

ああ、ごめんね

𝑅.

もしかして
起こしちゃった?

𝑁.

ううん、大丈夫だよ

𝑁.

...莉犬くん、ちょっと手
見せてくれない?

𝑅.

え、あ、うん...?

言われた通りに右手を出す

俺の右手を大切そうに両手で弄りだす

𝑅.

ど、どしたの...?

𝑁.

...ん〜...?

生返事で

俺の手を裏返したり、 引っ張ったりしている

𝑅.

...?

𝑁.

うんうん、...

𝑁.

大きくなったねぇっ...

プレスするように

両手で俺の右手を挟む

𝑁.

痛いの痛いのとんでけ〜っ

𝑅.

...???

傷ひとつない手に

怪我をした時のおまじないを唱える兄

𝑁.

はいっ!

𝑁.

もう痛くないよ

そう言いつつも

まだ俺の手を握っている

𝑅.

𝑅.

俺、痛くないよ?

𝑁.

うん、でも

𝑁.

目に見えない
傷があったから

𝑁.

早く治りますように〜っ!

𝑁.

ってね

𝑅.

...?

余計に分からなくなって

𝑅.

え、ちょ、兄ちゃん
どうしたの?

逆に心配になってきた

𝑁.

ん〜...?

ほわほわした笑顔浮かべて

俺の手をマッサージし始めた

𝑁.

莉犬くん

𝑁.

お散歩行こっか!

𝑅.

...へ?

そう言われて

半強制的に連れていかれたのは

𝑅.

わぁっ...!

𝑁.

懐かしいでしょ?

昔、兄ちゃんに 連れられてきていた海辺

𝑅.

でも大丈夫なの?

昔もしていたように

落下防止の柵に腰掛けながら問う

𝑁.

ん?

𝑅.

4人とも
置いてきちゃったけど...

兄ちゃんは微笑ましいものを見る目で

くすり、と笑った

𝑁.

大丈夫だよ

𝑁.

俺たちが思ってるよりも
あの子たちは子供じゃない

𝑁.

それに...

𝑁.

もちろん、あの子たちも
俺にとって大切だけど

𝑁.

それと同じくらい

𝑁.

俺は莉犬くんの
ことも大切だから

はにかんで

視線を海に逸らす兄ちゃんは

なぜか

とても寂しそうに見えた

いや

儚いって言葉の方が あっているかもしれない

𝑅.

...そっか

目を合わせずに

海の音に耳を傾けた

𝑅.

変わらないんだねぇ...

ぼそりと呟く

𝑁.

...うん

𝑁.

変わってないのかも

そう

変わっていない

この波の音も

時々しか通らない車も

心地よく吹く風も

兄ちゃんの寂しそうで綺麗な横顔も

俺は

どうなんだろうな

変わらないことは

いいことなのか

よくないことなのか

いつか分かる日がくるような

こないような

でも

分からないのが正解ってことも

あるんじゃないかな

突然強い風が吹いた

バランスを保ちながら

そっと目を瞑る

風が止んで

片目をゆっくりと開ける

最初に目に映ったのは

両目を閉じたままの兄ちゃんだった

𝑅.

...おいていかないでね

深い意味はない

思ったことを口に出しただけだ

𝑁.

...うん

𝑁.

大丈夫だよ

𝑁.

みんなをおいていくことは
しないよ

彼はやっぱり

笑わずに

悲しいほど綺麗な顔で答えた

ああ、

余計に不安になっちゃうじゃん

彼の

あの頃に彼自身が

常時、血が出るほどにつねって

変色してしまった腕の跡に

そっと触れる

もうこの跡は

一生消えることがないんだろうな

その跡に触れることを

昔は酷く嫌がったのに

今は

触れた俺の手に

彼自身の手を重ねてくるだけだった

ああ、この跡は

彼の一生消えない心の傷であり

俺の一生消えない罪なんだろう

彼は変わることなんかなくて

そして、もう変わってしまったんだ

その傷の要因になった俺から

ひとつ、答えてほしいことがある

𝑅.

...俺の罪って、

𝑅.

なんだと思う?

視線を逸らさずに

真正面で見つめる

𝑁.

...罪、か、...

少し考えてから

𝑁.

...自分を責める理由を
すぐに探して

𝑁.

それを、周りに
吐き出さないこと

こちらを向いて

笑いながら答えてくれた

𝑅.

...そっか

思わず目を逸らしてしまった

彼の答えに

兄ちゃんだな、と安心する

それと同時に

辛かった

よっぽど、

あの頃に兄ちゃんを 助けなかったことを

責められた方が楽だった

お前のせいだ、と 叫んでくれた方がよかった

人のせいにすることがない兄は

今にも壊れてしまいそうで

いつのまにか消えてしまいそうで

俺の罪は分かるのに

彼自身の罪を なにひとつ理解してなくて

たったひとつだけ上の兄が

こんなにも

大人で

ああ、これも俺の罪だ

俺が兄ちゃんをこんなに 大人にしてしまったんだ

どこで間違えたなんて分からない

でも、だからこそ

涙が溢れそうになった

頭を撫でられたら

もっと泣きそうになって

𝑅.

...兄ちゃんは

𝑅.

なんで、...

𝑅.

なんで、俺たちのことは
大切にするのに

𝑅.

俺たちが大切な兄ちゃんを
大切にしないの?

必死に涙を堪えながら

言葉を絞り出す

𝑁.

...

𝑁.

...大事にしてるよ

𝑁.

...でも

𝑁.

俺よりも
みんなが大切なんだ

俺の頭を優しく撫でながら

愛おしそうに

笑いながら言うから

もう

涙が止まらなくて

兄ちゃんが

そっと、優しく

俺を抱きしめたりなんかするから

堪えていたしゃっくりも

隠すことすらできなくなっちゃって

ああ、俺は取り返しが つかないことをしたんだ

子供の兄ちゃんを

殺してしまったんだ

辛さが分かる兄ちゃんだから

余計に負担を増やしてしまうのも 分かってるけど

もう、それが悲しくて

今じゃどうにもできないのが 悔しくて堪らなかった

もう変わってしまったんだ

変わらない景色に囲まれていても

もう、大人になってしまったんだ

泣かなくなってしまったんだ

あの頃の

子供だった兄ちゃんは

もういない

𝑡𝑜 𝑏𝑒 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑖𝑛𝑢𝑒𝑑...

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コメント

223

ユーザー

全ての言葉選びが良くて、泣いちゃいました、本当に大好きです、

ユーザー

ぶくしつ!

ユーザー

ブクマ&マイリスト失礼します!!🙇🏻‍♀️

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