短編集

このとき、私も花もこの噂を信じていなかった……

放課後

数分前

振り返っても、誰もいない

ただ、そこには暗い外の景色が窓越しに見えるだけ

でも、私は確かに声を聞いた

琴音のお兄さんに、殺される！

私には兄がいた

兄はいつも私を可愛がってくれた

だけど、それは異常とも言える歪んだ愛だった

そう、シスコンと言ってもいいほどに

でも、兄は死んだ

事故で亡くなる直前、 兄はこう言い残したそうだ

これは、私しか知らない事

なのに、花が何で……

そうだ！ 私が兄にお願いすれば……！

そんなこと思ってたの？

死んでって言ったの 私じゃない‼︎

琴音のお兄さんだよ‼︎

私が、もっと花のこと信じていたら……

せめて、花の家に行こう

花に直接謝らないと

私は橋を自転車で一気に登る

花じゃない。 この声は兄だ

ああ、花もこんな恐怖を味わっていたんだ

スマホしか意識していなかった私は

坂道で勢いがついたままの状態で 橋から落ちてしまった

バキリ、ｸﾞｼｬﾘと体が潰れる音がする

ﾒﾘﾒﾘﾒﾘって頭蓋骨が割れる

ああ、いつもここで聞いているキシキシという音が、今はシキシキと逆さまに聞こえる

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fin