ヨミ
ええ、首吊りシャンデリアです
ナツキ
あれ…大丈夫なんですか!?
ナツキ
(いや絶対大丈夫じゃないだろうけど!)
ヨミ
大丈夫、と言いますと?
ナツキ
降ろしてあげたりしなくて良いんですか?
ヨミ
そういうことでしたら、
ヨミ
大丈夫でございます
ヨミ
彼らは望んでああしていますので
ナツキ
そうなん…ですか?
ナツキ
(ダメだ、まともに考えたらおかしくなりそう)
ヨミ
では参りましょう
ヨミ
あ、シャンデリアの下を通る際はお気をつけください
ヨミ
たまに落ちてきますので
ナツキ
え!?
ナツキ
(エントランスはまさに高級ホテルといった感じだった)
ナツキ
(広々としていて光り輝いている)
ナツキ
(でも…)
ナツキ
(従業員や他のお客さんが全くいない)
ヨミ
どうしましたか?
ナツキ
いえ!
ナツキ
そうだ!入り口ってどこですか?
ヨミ
あちらの大きな扉でございます
ヨミ
どうです?立派な装飾でしょう
ヨミ
慎ましくも荘厳で、趣がある
ナツキ
…あの、
ナツキ
あそこに立っている人、なんですか?
私は扉の前に立っている人物を指した。
ヨミ
彼はドアマンです
ナツキ
ドアマンって…
ナツキ
ドアを開ける人のことですよね
ヨミ
まさしくその通りでございます
ナツキ
なんで、頭がドアノブなんですか…?
オボロ
だからドアマンだからだよ
背後から聞こえた声に
私は思わず振り返る。
ナツキ
(オボロさん!?)
オボロ
ヒヒヒヒ!
オボロ
よぉよぉご無沙汰
ヨミ
お疲れ様でございます
オボロ
おつかれぃ
ナツキ
な、何か用ですか!?
オボロ
お前に用はねえよ
オボロ
俺の客がどうしてもここに来たいっていうからよ
オボロ
コンシェルジュはNOと言えないからな
アキ
あ、どうもー!
アキ
アキですー
気づけばオボロさんの隣には
茶髪の若い女性が立っていた。
ヨミ
当ホテルへようこそいらっしゃいました
アキ
この人もコンシェルジュ?
オボロ
その通り
アキ
へぇ!イケメンじゃん!
オボロ
しかも主任だからなぁ?
ナツキ
あ、そうなんですか?
ヨミ
未熟ながら主任を務めさせていただいております
アキ
っていうかさ!
アキ
ここ、超良いね!
アキ
シャンデリアとか豪華だし!
ヨミ
ありがとうございます
ナツキ
あの!このホテルに来たってことは
ナツキ
自殺したんですか?
アキ
そうそう!
アキ
なんかさ、人生つまんねーと思って死んだのよ
アキ
で、気づいたらこのホテルの部屋にいてさぁ
アキ
いやぁあれはビビったわ!
ナツキ
順応、早くないですか!?
アキ
どうせ死のうと思っていた命だからさ
私はヨミさんにそっと耳打ちする。
ナツキ
他のお客さんって皆、こんな感じなんですか?
ヨミ
大抵はそうでございますね
ナツキ
そうなんだ
ナツキ
ここでは私の方が少数派らしい…
アキ
じゃあ!ウチらはちょっと外いってくるから
ナツキ
え、外に?
アキ
オボロくん、案内してくれるんでしょ?
オボロ
コンシェルジュだからな
オボロ
ヒヒヒヒ
2人はエントランスの扉へと向かって行く。
アキ
ってかさ!
アキ
外ってどんな感じなの?
オボロ
そりゃもう……絶景さ
オボロさんがニヤリと笑う。
アキ
おー!良いね良いね!
そんなアキさんとオボロさんの前に
ドアマンが立ちふさがった。
ドアマン
なんだお前ら
アキ
ウチら外に行きたいんだけど
アキ
ちょっと開けてくれない?
ドアマン
…………
ギィ…
アキ
ありがとー!
オボロ
お先にどうぞ
アキ
お、レディーファースト!サンキュー!
アキ
私が想像するにさ!
アキ
高級ホテルの外ってやっぱ庭園
グチャ
何かが潰れる嫌な音が、周囲に轟いた。
ナツキ
!?
ナツキ
…え?
オボロ
ヒヒヒヒヒヒ!!
凄まじい勢いで閉じられた扉によって、
気づけばアキさんの体は
真っ二つになっていた。
オボロ
ヒャハハハハハハハハ